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マイクロソフト、復興支援「東北UPプロジェクト」の成果報告
ICTセミナー実施による就業支援で7500万相当の効果
(2013/3/18 11:37)
マイクロソフトは同社の復興・再生支援プロジェクト「東北UPプロジェクト」の成果報告会を開催した。
「東北UPプロジェクト」は岩手、宮城、福島の3県の被災者を対象にしたICTスキル講習のカリキュラムやテキストの開発、講師の育成などを行うプロジェクト。2012年1月1日にスタートし、2013年3月末に地元NPOに運営を委ねる形でプロジェクトを終了する。
プロジェクトでは、講師養成講座を3回実施し、17名の講師を養成。就労支援講座は300回開催して、述べ851名が修了、求職者の就労率は45%だった。当初目標としていたのは修了者500名、求職者の就労率30%でいずれも目標を上回った形だ。
日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 社長室長 シチズンシップリード 牧野益巳氏は、「東北UPプロジェクトは地元にノウハウを残すことが“キモ”」とコメント、テキストやカリキュラム作成、人材育成を通して地元でICTスキルを身につけることができる環境を根付かせることがプロジェクトの主眼だと述べた。
連携したNPOなどは岩手県で3団体、宮城県で1団体、福島県で2団体。加えて、東京に避難している被災者の会が1団体の計7団体。成果報告会には、釜石市のNPO「@リアスNPOサポートセンター」代表理事の鹿野順一氏も出席、被災地復興に向けた地元NPOの取り組みを語った。
鹿野氏が代表を務める「@リアスNPOサポートセンター」は2004年に設立され、311以後は人口流出を食い止めるために自治体とともに雇用創出事業に取り組み、被災者の就業を支援する活動を行っている。
被災者就業支援事業としては、地元釜石市、大槌町の企業や仕事をWebで紹介し、ハローワークの求人情報を地域に特化して発信する。また、マイクロソフトの東北UPプロジェクトのほか、ヤフーの「Yahoo! 復興デパートメント」とも連携し、地元の5事業者7団体の商品を復興デパートメント内で販売する支援を行っている。また、就業支援についてはリクルートとも一緒に取り組んできたという。
東北UPプロジェクトについては、「本当の初心者には別の初心者向け講座を案内することで、まったくの初心者が参加することによるマウスの操作方法といった初歩的なことに時間をとられず済むようにした。ExcelやWordの操作を突っ込んだところまで受講できるということで、本気でスキルを上げたいという参加者が増えてくる。午前中拘束で4日間の講座だが、現在は予約で満杯の状況」とセミナーの状況を語った。
「アンケート結果を見ると、ここまでのことをきちんと教えてもらえるとは思わなかったという声が多い。スキルアップ、キャリアアップに役に立っていますという声がものすごく多い。受講者も当初予想より大変多くなっており、希望者すべてをさばくことができないといううれしい悲鳴をあげている。」(鹿野氏)
ただし、被災地域にパソコンのスキルを必要とする仕事がどれだけあるかという問題もあり、講座を受けることがすぐに就労に結びつく状況ではないという。「しかし、スキルがないよりある方がプラスになる、ということは確実に言える」と述べた。
また、東北UPプロジェクトでは今回、投資効果や成果を貨幣価値に換算する第三者による評価(SROI)を実施。東北UPプログラムの運営事務局を務めるNPO「『育て上げ』ネット」理事長の工藤 啓氏は、「今回のプロジェクトでは、NPO自身が事業化しないと継続していけないので、マイクロソフトはあまり表に出ないで、できるだけ現地の方に運営を委ねる形で行った」と現地に根付く活動としていくことを強調。
「育て上げ」ネットは、震災前からニートの就業支援で活動してきたNPOで、東北UPプロジェクトの事務局を務めた。工藤氏は「NPOは東京に集中しており、過疎地にはそもそもNPOがない」問題もあると指摘した。
工藤氏はまた数値化について、「前政権時に、評価がしづらいものがたくさん切られたときに、論理的に必要性を担保するような評価の仕方をNPOだからこそ持っていかなくてはいけないと考えた。寄付者にたいして、感情的に訴えることはできるが、数字的なものを言うことができないので、企業などからの資金提供につながりにくい問題もある」としてNPO活動を数値化する必要を語った。
調査結果については、評価を請け負ったビズデザイン社のサイトで公開されている。貨幣価値に換算すると、7555万5000円相当との評価となった。