日本IBMがITインフラビジョンをアップデート、セキュリティを新たな軸として追加

新プロセッサ「POWER7+」搭載のUNIXサーバーなども発表


 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は4日、同社のITインフラに関するビジョン「スマーター・コンピューティング」をアップデートすると発表した。従来は「Cloud」「Optimized System」「Big Data」の3つを柱としてきたが、今回より「セキュリティ」を追加して新たに展開する。

 この背景について、日本IBM 常務執行役員 システム製品事業担当の三瓶雅夫氏は、「1日に平均6万回のセキュリティ攻撃があり、一度データが侵害されると、平均では5億円の損害があると言われており、ITの側面からもセキュリティ対策へのニーズが高まっている」と説明。セキュリティを加えた「スマーター・コンピューティング:トゥモローレディ(Tomorrow Ready.)」として、「IT効率(従来のCloudとOptimized Systemを合算)」「Big Data」との3軸でソリューションメッセージを発信していくとした。

 実際に米国のホノルル市では、市民の個人情報を保護するインフラ基盤としてメインフレーム「System z」を採用し、数百台の他社製システムを統合・集約してプライベートクラウド環境を構築したが、米国国防総省セキュリティ基準であるEAL5+を実現しているという。三瓶氏はこの事例について、「最高レベルのセキュリティ基準であるEAL5+に準拠し、個人情報の保護を実現しているだけでなく、データベースライセンス費用を68%削減するなどの成果を得た」と述べ、スマーター・コンピューティングによってもたらされるメリットを強調した。


スマーターコンピューティングのビジョンにセキュリティの軸を追加したものが、スマーター・コンピューティング:トゥモローレディだというホノルル市の事例

 日本IBMではこうしたスマーター・コンピューティングの価値を訴求するため、支援プログラムを提供する予定。まず、無償コンサルティングサービス「Smarter Computingワークショップ」を開催し、ユーザー企業のITインフラ基盤のあるべき姿を提言するとともに、そこに至るまでのロードマップ提示やROI算出などを行う。また、移行専門チームによる他社サーバーからの移行支援を行うほか、メインフレーム「IBM zEnterprise」を月額108万円から利用できるプランなど、リースプログラムも整備するとのこと。


日本IBM 常務執行役員 システム製品事業担当の三瓶雅夫氏無償コンサルや移行支援、リースプログラムなどで顧客を支援する

 なお三瓶氏は、新たな「スマーター・コンピューティング」を具現化する製品として、先日発表されたメインフレーム「IBM zEnterprise EC12」を挙げたが、さらにこのビジョンを保管するために、新製品としてUNIXサーバー「IBM Power 770」「同 780」「同 795」、統合ストレージ「IBM System Storage DS8870」「IBM Storwize V7000 Unified」、テープライブラリ「IBM TS7700 Virtualization Engine 3.0」、テープ装置「IBM System Storage TS3500」、メインフレーム向け高速分析ソフト「IBM DB2 Analytics Accelerator V3」などを発表している。

 新製品のうちUNIXサーバーの3製品では、32nmで製造される新プロセッサ「POWER7+」を新たに搭載。POWER7+は最大4.4GHzのクロック周波数を実現していることに加え、80MBの大容量L3キャッシュを搭載しているため、大幅に性能が向上した。理事 システム製品事業 マーケティング&ソリューションの星野裕氏は、「POWER7+では、コアあたり10分割までサポートしていたLPARを20分割までに向上させたため、小さなワークロードをより多く統合することでコスト削減が期待できる」と、Power7+のメリットを説明する。

 またPower Systems全体の強みとしては、AIXファイルシステムをハードウェアで暗号化できること、オープンシステム向けでは最高レベルとなるEAL4+のセキュリティ規格に準拠していること、脆弱性が1つもレポートされていない仮想化技術のPowerVMを利用できることなどを挙げた。


Power SystemPOWER7+のダイ
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(石井 一志)
2012/10/5 06:00