東芝、トータル・ストレージイノベーションによりクラウド展開を強化

中期経営方針説明で佐々木社長が打ち出す


東芝の佐々木則夫社長
トータル・ストレージイノベーションの概要

 株式会社東芝は17日、2012年度の経営方針説明会を実施。同社・佐々木則夫社長は、2014年度の売上高が7兆8000億円、営業利益では4500億円を目指す方針を示した。

 2011年度売上高からの年平均成長率は9%増となり、全世界のGDP成長率とされる5%増を上回るものになるという。

 そのなかで佐々木社長は、重電メーカーとしての立場を示す「トータル・エネルギーイノベーション」としての取り組みを推進するとともに、クラウド事業への取り組みなどを含めた「トータル・ストレージイノベーション」という言葉を使い、この2つの組み合わせによって、同社の「事業構造転換の実行」において、重点課題であるスマートコミュニティ事業を加速していく姿勢を示した。

 佐々木社長は、「情報のビッグデータ化やセキュリティの確保といったことへの関心が高まっているのに加え、ITの市場伸長に伴い、クラウドが注目を集めている。トータル・ストレージイノベーションにおいては、デジタルプロダクツ・ソリューションおよびリテール・ソリューション、ヘルスケア・ソリューションといった観点からの取り組みを行うことになる。これに基幹電源、再生可能エネルギー、パワーエレクトロニクスやEV、工場・ビルソリューション、ホームソリューションなどによる『トータル・エネルギーイノベーション』と、ICTを組み合わせることで、社会の課題を解決し、東芝が進めるスマートコミュニティ事業を展開していくことになる」などとした。

 トータル・ストレージイノベーションは、HDD、SSD、NAND型メモリといった東芝が持つ各種ストレージデバイスを活用し、ストレージアレイシステムを提供するほか、モジュール型データセンターとして構築。「クラウド基盤の構築に関しては、IBMやヒューレット・パッカードと、しっかりとアライアンスを組み、ビッグデータ時代に対応していくことになる」(佐々木社長)などと語った。

 クラウドを活用したアプリケーション分野としては、医療分野向けの「ヘルスケア・ソリューション」、POSシステムなどと連携した「リテール・ソリューション」、コンテンツを提供するB2C型の「デジタルプロダクツ・ソリューション」をあげている。

 ヘルスケア・ソリューションでは、病院内システムや院内POSを活用することで、地域医療ネットや在宅介護へと発展させるほか、クラウドを活用して、データセンターのストレージに画像の外部保管を行うHealthCare@Cloudによる提案を加速する。HealthCare@Cloudでは、2015年度に国内シェア50%の獲得を目指す。

 「診断、治療領域は、ITによって確実に進歩させていく。ヘルスケアITの分野では、フランスのCEBEA社と、老人医療、福祉費を半減させる実証実験を行っている。こうした取り組みは国内でも行わなくてはならない」などと述べた。

 2015年度には、画像診断やがん治療領域なども含めて、ヘルスケア・ソリューション全体で1兆円の売上高を目指す。

 

リテール向けクラウドを強化

リテール・ソリューション分野での取り組み

 一方、リテール・ソリューションでは、IBMから買収したPOSなどのリテールストアソリューションを中核に、リテール向けクラウドソリューションの展開を進める姿勢をみせる。

 ストア、飲食、ホテル向けアプリケーションのSaaS展開を推進しており、すでにストア向けクラウドサービスは国内400社に導入。また、東芝グループとIBMとの連携によって、クラウドを活用した顧客管理、売り上げ管理、商流、エネルギーデータの処理管理などの領域において、ソリューション強化やグローバル展開を行っていくとした。

 「IBMからのPOS事業の買収により、Wal-MartやBest Buy、Starbucksといった企業が当社の顧客になった。こうしたリテール大手に対して、マルチチェックアウトシステムやSEMS(ストア・エネルギー・マネジメント・システム)、照明および空調、デジタルサイネージなどを組み合わせたワンストップソリューションを展開できる。POSグローバルシェアナンバーワンという強みも生かせる」などと語った。

 リテール・ソリューション全体で、2015年度の売上高目標を4000億円としている。

 一方、デジタルプロダクツ・ソリューションについては、「クラウド領域への構造転換を加速する」とし、「これまでのPCやテレビといったハードウェア依存から脱却し、サービスおよびソリューションを収益の柱にする」と宣言した。

 ここでは、ビジネスタブレットやグローバルカスタマ向けPCを活用したB2Bソリューション、フルセグタブレットや、4K2Kテレビなどを活用したBtoCサービス、さらにはHEMSや家電連携によるホームソリューションで構成する。

 B2Bソリューションではオフィス向けには故障予知や遠隔管理、MDS(マネージド・ドキュメント・サービス)など、リテール向けにはタブレットを活用した店舗管理システム、販促支援システムなどで展開する。

 2015年度には、デジタルプロダクツソリューションで2000億円の売上高を目指す考えだ。

 

ホーム分野でもクラウド展開へ

ホームソリューション分野での取り組み

 一方、ホームソリューションにおいても、クラウドの活用を視野に入れている。

 同社では、HEMSクラウドとし、スイスLANDIS&GYRの買収によって展開を強化しているスマートメーターや、家庭用燃料電池、蓄電池、給湯器、太陽光発電などの新エネ機器、2013年度から発売するスマート家電との組み合わせによるHEMSの提案などを促進。水、熱、エネルギー、医療、交通の各ソリューション、教育、防犯、買い物、エンターテイメントなどをHEMSクラウド上で連携させる。

 具体的な成果として、スマートメーターやHEMSなどを通じた見える化では10%の省エネ、またデマンドレスポンスによって、5~10%の電力のピークシフトが可能になり、昨今の電力不足にも対応できるとしている。

 東芝では、ホームソリューションでは、2015年度に2500億円の売上高を目指す方針を示し、「見える化、効率化によって、省エネ推進、コミュニケーションの強化を進める」とした。

 また、東芝では、スマートコミュニティ事業の体制強化に向けて、2013年10月の稼働を目標に、神奈川県川崎市内にスマートコミュニティセンターを建設中で、同センター内に省エネ型データセンターを設置。従来型のデータセンターに比べて、年間消費電力で35%の削減ができるという。

 「スマートコミュニティセンターは、グローバル展開に向けた中核拠点となり、ICTや制御技術、センシング技術などによるインテリジェントなBEMSを導入しているほか、免震構造、自家発電などの最先端機能を備える。スマートコミュニティのショールーム機能も持つことになる」などとしている。

関連情報
(大河原 克行)
2012/5/18 00:00