パラソフト、さまざまなシステムをエミュレートできる仮想化ツール「Parasoft Virtualize 9.2」

メインフレームの仮想化にも対応


代表取締役社長の野田勝彦氏

 パラソフト・ジャパン株式会社(パラソフト)は24日、仮想環境構築・管理ツール「Parasoft Virtualize 9.2」(以下、Parasoft Virtualize)を発表した。対象システムのふるまいをエミュレートすることで仮想化を行っているため、これまで対応しにくかったメインフレーム環境などについても仮想化できるという。販売は同日より開始される。

 「Parasoft Virtualize」は、仮想環境の自動生成と管理を行えるツール。ハイパーバイザーを用いた一般的なサーバー仮想化のアプローチと異なり、「アプリケーションのふるまいをエミュレートすることで仮想化を実現している」(代表取締役社長の野田勝彦氏)点が、最大の特徴という。具体的には、メインフレーム上で稼働するアプリケーションや、TB(テラバイト)クラスのレコードを持つ巨大データベース、社外のシステムなどなど、さまざまなシステムの仮想化を実現する。

 システムのエミュレーション自体は、特に新しい手法ではないが、「これまでのエミュレータは、ほとんどが手製で、手間がかかっていたのに対し、Parasoft Virtualizeでは環境を自動生成できる」(野田社長)点が違い。また各エミュレータ間の協調動作やデータ交換が可能になっているため、柔軟な環境に対応できる。

 パラソフトが仮想アセットと呼ぶエミュレータの生成は、稼働中のシステムをリアルタイムでモニタリングしたり、パケットログやトランザクションログを参照したり、自社のテストツール「Parasoft SOAtest」のデータをもとにしたりして行えるほか、存在しないシステムでも、プロトコル定義ファイルから自動生成を行える。また、パラソフトが持つ50種類以上の機能を用いることで、テストデータとの統合、ロジックの追加、データ検証など、柔軟な拡張にも対応可能だ。

 さらに「Parasoft Virtualize」では、仮想環境をカタログ化した「仮想環境カタログ」を作成できるようになっている。このカタログでは、仮想アセットのみの組み合わせはもちろん、「企業内には、必ずしも仮想化する必要がない参照系のシステムや、OSSを使った、クラウドサービスを利用した方がコスト面で有利な場合が想定されるシステムなどもある」(野田社長)ため、仮想アセットと物理コンポーネントを組み合わせたものも扱えるとのこと。このカタログからユーザーが必要な環境を選択してデプロイすれば、すぐにシステムを利用開始できるという。

 ただし、仮想環境カタログを作る側では、システム全体のアーキテクチャを理解して、何を仮想化し何を物理環境のまま残すか、といった定義をきちんと行う必要があるので、高いスキルが要求される。このためパラソフトでは、単なるライセンス販売ではなく、導入サービスまでを含めたソリューションとして訴求する考え。また、システムを理解しているSIerとの協業も推進するとしており、まずは北海道NSソリューションズ、ビルドシステムの2社をソリューションパートナーとして、展開を進める。

 なお利用例としては、テスト環境の仮想化が第一に挙げられるとのこと。これは「Parasoft Virtualize」が、他システムとの連携部分を含めて仮想化できるため。野田社長は、「クラウド内に開発環境を設置することが増えてきているものの、システムテスト時にはクラウド外と連携させる必要があり、セキュリティ面などからそこが課題だった。しかし、『Parasoft Virtualize』は必要な外部システムを軽量なエミュレータで作れるので、クラウド内で完結できる」と、このメリットを説明する。

 また、オフショア開発に適用すれば、他システムとの連携が必要となるので、従来は国内へ持ってきて実行していた結合テスト以降の作業が、海外で可能になるし、サブシステムごとに分割して開発するような大規模な開発プロジェクトでも、開発が遅延しているチームの開発部分を、すでに存在しているかのように見せられるので、進んだチームが遅れたチームを待つ必要がなくなる。先行する海外の事例では、待ち時間を60%カットできたという。

 加えて、「社外システムを利用したテストでは、負荷テストや異常系のテストを実施しにくいし、利用料も発生してしまう。『Parasoft Virtualize』は社外システムを仮想化できるので、利用料が必要なくなるばかりか、負荷テストなども気兼ねなく行え、品質の向上に寄与できる」(野田社長)点にも価値があるとした。この利用法の事例では、社外システム利用料の70%を削減できたとのことだ。もちろん、メインフレームなど、通常は仮想化しにくかったシステムにも対応するので、効率的なシステム運用も可能になる。

 対応プラットフォームは、Windows/Linux/Mac OS。ただし他プラットフォームへの移植も容易なため、要望があればUNIXベースでの提供もすぐに行えるとしている。

 「現時点でもさまざまなシステムの仮想化に対応できるが、残念ながら国内はローカルのプロトコルや独自のプロトコルが多く、使えないものもある。パートナーがカスタムアダプタを開発してくれれば対応できるので、そういった技術力のあるパートナー企業などを積極的に探し、より多くのシステムに対応していきたい」(野田社長)。

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