日立、震災の影響除くと過去最高規模の営業利益に~2011年度はデータセンターの二重化需要などに期待
株式会社日立製作所(以下、日立)は11日、2010年度連結決算を発表した。
連結売上高は前年比4%増の9兆3158億円、営業利益は同120%増の4445億円、税引前利益は前年の580%増の4322億円、当期純損益は前年の843億円の赤字から2388億円の黒字に転換した。
国内売上高は前年比1%減の5兆2692億円、海外売上高は同11%増の4兆465億円。海外売上高比率は43%となった。
決算概要 | 国内・海外の売上高 |
震災の影響について |
日立の三好崇司執行役副社長 |
日立の三好崇司執行役副社長は、「東日本大震災によって、売上高で1300億円、営業利益で750億円、営業外費用で250億円、純利益で750億円の影響があった。全セグメントに対して影響があり、震災の影響を除けば、全セグメントで増益になっている。被災地には当社の工場が多くあり、操業度低下による出荷減のほか、顧客の検収遅延などがある。国内売上高は厳しいが、中国を含めアジア市場での伸張が高く、すべてのセグメントにおいて、アジアは増収となった。またアフリカでは電力、建設機械、中南米では建設機械と空調関連が伸びている」とした。
営業利益に対する震災の影響を750億円としたなかで、生産拠点の停止では500億円、棚卸し資産の減失で100億円、固定資産となる設備の修復で50億円などとした。
同社の過去最高の営業利益は1990年の5064億円。震災の影響を除くと2010年度業績では、営業利益が5100億円を超えることになり、過去最高利益に到達した可能性もあった。
また、「2010年度はリーマンショック以降の経済回復に支えられた。特に自動車やエレクトロニクス分野での回復が感じられている。さらに構造改革の効果が段階的に出ており、カンパニー制による各事業ともにきちっと収益を出せるようになってきた。足元では震災の影響もあるが、復旧のスピードは高まっている」と総括した。
震災の復旧状況については、東北地方や茨城県を中心に多くの拠点が被災したが、グループの総力をあげた復旧対策を進めており、3月末から操業を再開し、4月中旬以降はおおむねフル生産体制になったとした。
情報・通信システムの概況 |
事業部門別では、情報・通信システムの売上高は前年比3%減の1兆6520億円、営業利益は前年から40億円増の986億円となった。
情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年比3%減の1兆1197億円。そのうちソフトウェアの売上高が同4%増の1594億円、サービスが同3%減の9602億円。ハードウェアの売上高は同6%減の5323億円。そのうち、ストレージの売上高は同5%減の1849億円、サーバーは同13%減の496億円、PCは同2%増の295億円、通信ネットワークは4%減の1356億円。その他の売上高は同8%減の1325億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が同6%増の3220億円。
「海外ではストレージソリューション事業が好調に推移したが、国内ではIT投資の抑制が影響して減収となった。短期での受注貢献を期待したが、これが思い通りにできなかったという反省がある。営業利益に関しては、震災の影響があったが、プロジェクト管理の強化や、コスト削減効果により増益になった」とした。
なお、情報・通信システム事業部門に対する震災の影響額は、売上高で125億円、営業利益で63億円になったという。
電力システムの売上高は前年比8%減の8132億円、営業利益は横ばいの220億円。社会・産業システムの売上高は同7%減の1兆1569億円、営業利益は21億円減の399億円。電子装置・システムの売上高は同8%増の1兆793億円、営業利益は425億円増の372億円。建設機械は売上高が同29%増の7513億円、営業利益は315億円増の491億円。
高機能材料の売上高は前年比13%増の1兆4081億円、営業利益は400億円増の845億円。オートモーティブシステムの売上高は同16%増の7379億円、営業利益は292億円増の237億円。コンポーネント・デバイスの売上高は同7%増の8098億円、営業利益は425億円増の436億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同2%増の9515億円、営業利益は221億円改善し、149億円の黒字。金融サービスの売上高は同11%減の3729億円、営業利益は57億円増の142億円。
その他部門の売上高は横ばいの7674億円、営業利益は95億円増の289億円となった。
事業部門別の売上高 | 事業部門別の営業損益 |
コンポーネント・デバイスのうち、HDD事業は、日立グローバルストレージソリューションズの1月~12月の売上高が17%増の5268億円、営業利益は521%増の572億円となった。
HDDの出荷台数は前年比24%増の1億1380万台。そのうち、民生・情報機器向けの2.5型が29%増の6530万台、 3.5型が7%増の3400万台。サーバー向けは35%増の740万台、エマージング向けが70%増の353万台、外付けHDDが124%増の346万台となった。
HDDでは一部半導体の影響が出ていることにも言及。「設計変更などによって対応していく。サーバーに対する需要が旺盛であり、HDDをそちらに振り向けるように指示をしている」とした。
コンポーネント・デバイスの概況 | HDD事業の状況 |
なお、2011年度連結業績見通しについては、震災の影響などもあり、今回の公表は見送った。
三好副社長は、「日本国内では、年度前半にはサプライチェーンの制約や、電力供給不足などがあるが、後半は復興需要により回復する。また海外でも需要の回復が期待できる。事業環境の変化への対応力を高め、国内では、社会インフラの復旧、復興に向けた積極的な貢献、サプライチェーンの制約や電力の安定供給への懸念に対応した生産体制の構築、海外では社会イノベーション事業を地域別戦略に基づき強力に推進する」とした。
2011年度の業績に対する震災の影響については、「地震保険もあり、ほとんど影響がない」とみている。
また、2011年度の情報・通信システム部門では、「上期は震災の影響によってSCMの回復の遅れなどがあり、厳しい受注環境が予想されるが、海外向けストレージソリューション事業を中心に展開を加速する。国内では、全体としては、投資の先送りなどがみられているが、データセンターの二重化やクラウド化への対応など、BCP(事業継続計画)に対する需要があり、徐々に回復に向かうとみている」とした。