日立の2010年度第1四半期の連結決算、全部門で黒字計上も情報・通信システムは大幅減益
執行役副社長の三好崇司氏 |
株式会社日立製作所(以下、日立)は7月30日、2010年度(2011年3月期)第1四半期の連結決算を発表した。
売上高は前年同期比14%増の2兆1525億円、営業利益は前年同期から1390億円改善して884億円の黒字、税引前純利益は同2251億円改善して1442億円の黒字、純利益も同1687億円改善して860億円の黒字となった。
執行役副社長の三好崇司氏は「前年同期がかなり厳しい決算内容だったため、当期はいずれの数値も改善した。特に、売上高の増加により、高機能材料部やコンポーネント・デバイス部門などが大幅に伸び、全部門で黒字を計上した」と、増収増益に回復した背景を説明した。
情報・通信システムは、売上高が前年同期比3%減の3489億円、営業利益は同97%減の1億円。
内訳は、ソフトウェア/サービスの売上高が、前年同期比1%減の2336億円。そのうち、ソフトウェアがほぼ前年同期並みの356億円、サービスが前年同期比2%減の1980億円。ハードウェアの売上高は同6%減の1152億円で、その内訳を見ると、ストレージ(ディスクアレイサブシステムなど)は同14%増の460億円、サーバー(汎用機とUNIXサーバーなど)が同18%減の100億円、PC(ビジネスPCとPCサーバーなど)が同20%減の56億円、通信ネットワークが同7%減の299億円となっている。
「残念ながら情報・通信システムのセグメントは減収減益となった。ストレージソリューションは海外向けを中心に好調に伸びたが、国内の事業はIT投資抑制傾向が続いた影響で、ソフトウェア/サービス、ハードウェアともに前年同期を下回り、特に営業利益が大きく落ち込んだ」(三好氏)という。
HDDが含まれるコンポーネント・デバイスは、売上高が前年同期比21%増の2019億円、営業利益は前年同期から270億円改善して167億円の黒字。中でもHDDは、PCやサーバー向け製品の需要が好調で、売上高が前年同期比35%増の1323億円、営業利益は前年同期から251億円改善して197億円の黒字となった。なお、日立のHDD事業は、12月決算会社である日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)が行っており、当期の決算には日立GSTの2010年1~3月の数値が計上されている。
あわせて発表された2010年4~6月の速報値でも、HDD事業は好調をキープしており、「HDDは製品力がついてきた。特に、民生・情報機器向けの2.5型製品、サーバー製品が大きく伸びており、ユーザーのニーズに適応できている。7月からは薄型製品も出荷されるので、第2四半期も期待できるだろう」との見通しを述べた。
デジタルメディア・民生機器は、売上高が前年同期比21%増の2566億円、営業利益は前年同期から206億円改善して71億円の黒字。光ディスクドライブ関連製品がPC需要の増加によって好調に推移するとともに、薄型テレビなども増加。さらに、白物家電や空調機器が中国など海外向けを中心に好調だったことから増収となった。営業利益は、薄型テレビなどの事業構造改革の効果に加え、光ディスクドライブ関連製品、空調機器などの増益によって黒字に転じた。
電子装置・システムは、前年比23%増の2502億円、営業利益は172億円改善して53億円の黒字。エレクトロニクス分野の設備投資の回復にともない、半導体関連製造装置などが増加したほか、医療機器が好調に推移した。
これら以外の各部門の業績では、電力システムの売上高は前年同期比5%増の1778億円、営業利益は同213%増の4639億円。社会・産業システムは、売上高が同6%減の2316億円、営業利益は64億円改善して25億円の黒字。建設機械は、売上高が前年同期比27%増の1620億円、営業利益は85億円改善して69億円の黒字。
高機能材料は、売上高が前年同期比26%増の3455億円、営業利益は294億円改善して262億円の黒字。オートモーティブシステムは、売上高が前年同期比38%増の1757億円、営業利益は173億円改善して42億円の黒字。金融サービスは、売上高が前年同期比5%増の942億円、営業利益は146%増の51億円となった。
■2010年度上半期の業績予想を修正、売上高・営業利益ともに増額
なお日立では、2010年度上半期の業績予想を修正している。
上半期では、売上高は当初予想より1000億円の増額となる4兆4000億円に、営業利益は450億円増の1700億円に上方修正した。また、税引前純利益も550億円増の2000億円、純利益も450億円増の1000億円に上方修正している。
売上高は、自動車やエレクトロニクス関連分野を中心とした需要回復により全般的に好調に推移する見込み。営業利益は、電子装置・システムや高機能材料、デジタルメディア・民生機器を中心とした売上高の増加や、固定費を含むコスト削減の推進により、前回予想より改善する見通しという。
ただ、情報・通信システムについては、売上高・営業利益ともに前回予想から数値を変更していない。「決算全体の数値としては、予想以上に好調な回復を見せたが、最終消費がよくなっている実感はない。特に情報・通信システムは、第2四半期も厳しい環境が続くとみている、下半期からは徐々に回復するだろうが、長期的な展開の中で、着実に事業拡大と収益改善を図っていきたい」(三好氏)と、情報・通信システムの収益回復には時間がかかる考えを示した。