富士通の2010年度連結決算は減益、震災の影響大きく~特損116億円を計上


 富士通株式会社は28日、2010年度の連結決算を発表した。

 2010年度連結業績の売上高は前年比3.2%減の4兆5284億円、営業利益は40.5%増の1325億円、経常利益は51.6%増の1078億円、当期純利益は40.8%減の550億円。

震災の影響を大きく受け、目標に未達

代表取締役社長の山本正已氏
取締役執行役員専務の加藤和彦氏

 今回の決算では、代表取締役社長の山本正已氏が「本年1月に国内外のさまざまリスク要因を織り込んで、営業利益と純利益を下方修正し、大震災の前までは、その計画通りにほぼ進行できていた。しかし震災の影響を大きく受け、特に生産供給面でご迷惑をおかけしたし、商談の延伸もあって、売り上げには415億円、営業利益にも124億円の影響が出た。特に工場へのダメージが大きく、生産能力の復旧は先週までに果たしているが、災害による損失として116億円を特別損失を計上した」と話すように、震災の影響を大きく受けたという。

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年比3.7%減の3兆143億円、営業利益は6%増の1628億円。そのうちサービス事業は売上高が4.8%減の2兆4195億円、営業利益が8%減の1173億円。システムプラットフォーム事業の売上高は1.2%増の5948億円、営業利益は75.1%増の455億円。

 やはり大きいのは震災の影響で、テクノロジーソリューション全体では356億円の影響を受けている。

 サービス事業のうちソリューション/SIは、為替の影響を除くと若干の減収で、商談ベースでは民需を中心に3月も前年同期を上回る推移をしていたというが、「震災の影響で商談の延伸が起きており、計画に対しては未達となった」(取締役執行役員専務の加藤和彦氏)とのこと。インフラサービスも、国内では震災の影響で公共系商談が延伸したことに加え、海外では、北米・欧州で期末の追い込みが不発だったという。

 一方のシステムプラットフォーム事業では、海外ビジネスが堅調で、1月の計画時にリスクを上積みしており、震災の影響をその中で吸収。特にその中のネットワークでは、計画を上回って伸長を遂げている。また利益面でも、採算性が向上したことに、増収効果が加わって大幅な増益を達成した。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年比0.5%増の1兆1256億円、営業利益は44.3%減の226億円。この中のPCおよび携帯電話の売上高が前年比3.1%増の8425億円、モバイルウェアの売上高が同6.4%減の2831億円。

 PCおよび携帯電話は「東芝からの買収効果が寄与した」(加藤氏)とするが、ここでも震災の影響が大きく、計画に対しては124億円未達。営業利益については、特に欧州で為替の影響が悪化し、上期を中心に採算性が悪化したほか、携帯電話の開発費増加や震災の影響で利益率が低下したことが響いたという。

 モバイルウェアは、エコカー減税の廃止に伴っての新車売り上げ減少が響いたとしているが、PCおよび携帯電話、モバイルウェアの両事業ともに黒字は確保したとのこと。
 デバイスソリューションは、売上高が前年比7.0%増の6306億円、営業損益は、前年の90億円の赤字から300億円改善し、209億円の黒字となった。LSI、電子部品とも市況が回復したため、売上高はそれぞれ前年比7.4%増の3437億円、同6.3%増の2885億円と堅調に推移している。

節電対策はすでに検討中、データセンターはきっちりと守る

 なお、通例では同時に発表される翌年度の見通しは、今回は発表されなかった。山本社長はこの理由を「富士通の生産能力は立ち直ったが、部材調達や電力不足といった不確定状況があり、またお客さまのIT需要が現時点では不明で、合理的に算出しづらい」と説明。5月末から6月初めには見えてくるのではないかとして、少し時間をおいてから示したいとした。

 その上で、2011年度の経営について「製品の安定供給体制の再立ち上げ」「海外ビジネスの収益力の早期回復」「先行投資の継続」を挙げ、特に海外ビジネスと先行投資を成長のドライバとして位置付けていく考えを述べた。

 企業が迫られている節電についても、富士通として全力を挙げて取り組むとのことで、「今回の震災を受けて夏場の電力不足を予想し、活動を行っている。一時は25%の総量規制という話もあったので、かなりの項目で節電の内容については検討しているし、今話が出ている15%ということになれば、ある程度できるのではないかと思っている」とコメント。

 そのための投資・準備の具体的な項目として、「各工場、特に半導体では一日中コンスタントに電力を使うので、発電機も回さないといけない。また関東近辺にある社内の開発用サーバー1万台のうち、3000台を明石や富山のデータセンターへ移すといった施策も検討しており、3~5%の節電効果があるのではないかと見込んでいる」と話した。

 また、データセンターについては、「当社における今後の成長の柱でもあるし、お預かりしたものは守らないといけないので、100%の電力供給をしないといけない。全社の割り振りの中で対応するか、発電機の準備をしないといけないだろう」として、きっちりと運営できる体制を確保することを、あらためて明言している。

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