富士通の2010年度第3四半期連結決算、営業利益は前年同期比36.7%減

通期見通しを下方修正、中期経営計画も再考へ


富士通の山本正己社長
富士通の加藤和彦取締役執行役員専務

 富士通は、2010年度第3四半期連結決算を発表した。

 売上高は前年同期比4.4%減の1兆964億円、営業利益は同36.7%減の212億円、経常利益は同37.6%減の192億円、当期純利益は同302.2%増の165億円となった。

 セグメント別の業績は、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比4.9%減の7181億円、営業利益が同66億円減の249億円。そのうち、サービス事業の売上高は同4.5%減の5807億円、営業利益は同19億円減の190億円。サービス事業のうち、ソリューション/SIの売上高が同0.3%増の1兆7099億円、インフラサービスの売上高が同6.1%減1兆1408億円。システムプラットフォーム事業は売上高が同6.4%減の1373億円、営業利益は同46億円減の59億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は同2.7%増の2130億円、ネットワークプロダクトの売上高は同1.9%減の1959億円となった。

 富士通の加藤和彦取締役執行役員専務は、「民需は回復基調にあるものの、それでも導入時期を先送りにするなどの影響が一部に出ている。また、英国における不採算プロジェクトの影響で採算性が悪化していることも要因。また、システムプラットフォームにおいては、北米向けのUNIXサーバーの減少などが影響した」という。

 ユビキタスソリューションの売上高は前年同期比2.4%減の2895億円、営業利益は同125億円減の36億円。そのうち、パソコンおよび携帯電話の売上高は同3.4%増の6146億円、モバイルウェアの売上高は同1.2%増の2161億円となった。

 パソコンは、前年並みの水準を維持。さらに、携帯電話では国内におけるフィーチャーフォン(スマートフォンではない一般的な携帯電話)が減収となった。

 デバイスソリューションの売上高は前年同期比2.3%増の1553億円、営業利益は同51億円増の84億円。そのうち、LSIの売上高は同9.0%増の2567億円、電子部品の売上高は同12.0%増の2195億円となった。

 

通期見通しは下方修正

 今回の業績発表を受けて、同社では、通期見通しの下方修正を発表。売上高は2010年10月公表時に比べて、1000億円減の4兆5700億円、営業利益は400億円減の1450億円、経常利益は400億円減の1200億円、当期純利益は200億円減の750億円とした。売上高は前年比2.3%のマイナス成長となる。また、営業利益のうち、国内事業においては200億円の減額、海外での不採算事業の影響で200億円の減額とした。

 富士通・山本正己社長は、「営業利益は、前年比53.6%増となる1450億円とする。第3四半期までは当初の計画通りに推移してきたが、市況の回復が遅れており、私自身が、国内外の顧客を訪問して、それを感じ取った。また、海外においては、プロジェクトの複雑化なども影響し、遅延傾向が出ている。結果として、第4四半期はわれわれの予想よりも伸びが期待できない。12月に入ってから、リスクを洗い出すように全社に指示を出し、今回の修正値のなかにすべてを盛り込んだ。不採算事業に関しては、3月までに止血する。これがボトムラインと考えており、いかに数字を上乗せできるかが、期末までの2カ月間の課題であると、社内に通達を出している」とした。

 一方、クラウドに関しては、「期待感が先行しているが、クラウド・コンピューティングへの移行に関して、投資効果の見極めの段階にあり、事業の立ち上げにはもう少し時間がかかるとみている。ただし、これは、我々が基幹システムを含めた大規模なIT投資を期待していたためであり、フロントシステムの商談の数は多い。また、館林に設置した当社データセンターの活用も盛況である。基幹システムにおけるクラウドへの取り組みは、効果が検証されれば加速するだろう。そうした状況は、2011年後半になると訪れるだろう」などとしたほか、「プロダクトに関しては、ロシア、トルコ、中東の新興国ではサーバーなどが成長しており、さらに、UNIXサーバーについても、オラクルとの協調によって成長の余地があると考えている。ネットワークに関しては、海外からの引き合いが増えており、キャリア連携も増加するだろう」などとした。

 

市況の変化で中期経営計画を“リセット”

 また、山本社長は、「昨年7月に発表した中期経営計画をリセットし、考え直したい。当時とは市況環境が大きく変化しているのが原因。2011年度は、成長に向けたターニングポイントの1年になると認識している。市場の構造変化をとらえた対応策を経営計画に織り込み、これにより、筋肉質な体制とすることによるさらなる飛躍と、新たな挑戦をはじめたい」とした。

 新たな中期経営計画については、「今後3カ月間で社内で徹底的に議論し、2010年度の通期業績が発表される2011年4月以降に、速やかに発表したい」としている。

 下方修正後のセグメント別見通しは、テクノロジーソリューションの売上高が10月公表値に比べて700億円減の3兆500億円、営業利益が430億円減の1650億円。そのうち、サービスの売上高が400億円減の2兆4600億円、営業利益は330億円減の1250億円。サービスのうち、ソリューション/SIの売上高は、国内事業の見直しなどにより、200億円減の8400億円、インフラサービスは欧州におけるプロジェクトの遅延などにより、200億円減の1兆6200億円。システムプラットフォームは、売上高が300億円減の5900億円、営業利益が100億円減の400億円。そのうち、システムプロダクトの売上高は北米向けのUNIXサーバーの減少で300億円減の3250億円。ネットワークプロダクトの売上高は、堅調に推移しているとして、計画通りの2650億円とした。

 ユビキタスソリューションの売上高は100億円減の1兆1450億円、営業利益は計画通りの300億円。そのうち、パソコンおよび携帯電話の売上高は、東芝の携帯電話事業の統合効果やスマートフォンの需要が旺盛であることから、150億円増の8550億円。年間出荷計画も40万台増の660万台へと上方修正した。モバイルウェアの売上高は250億円減の2900億円。

 デバイスソリューションは、売上高が200億円減の6400億円、営業利益は20億円減の230億円。そのうち、LSIの売上高は公表通りの3500億円、電子部品の売上高は200億円減の2900億円とした。

 

PCは新たな価値を持った製品へと進化・成長させたい

 一方、山本社長は、NECとレノボの提携について触れ、「驚きをもってとらえているが、富士通にとっての脅威とチャンスはなにかということをとらえて、PCビジネスを進化させたい。富士通も、かつてはNECと同じような戦略のもとで候補を考えていたこともあったが、富士通が目指すヒューマンセントリックなインテリジェントソサエティの実現のためには、携帯電話やPCはインターフェースとして重要であり、富士通の進化には大切。NECは国内生産拠点をそのまま生かすということであり、富士通とのコストの違いはそれほどないだろう。日本と欧州、北米で展開しているわれわれは、ボリュームを生かすことができる。また、PC事業はスピードが勝負である。私の個人的な意見だが、PCはコモディティ化されたといわれるものの、iPadに代表されるように新たな価値を持った製品へと進化している。富士通のビジネスとして成長させていきたい」とした。

 なお、富士通のパソコン事業における利益については、「単価ダウンがあったが、それを値上げなどにより埋めており、上期の分のマイナスを第3四半期で取り戻した。黒字にはなっているが、利益率は厳しい。利益率といえる状況ではない」(加藤取締役執行役員専務)とした。

関連情報