KVH、高信頼・高効率を実現した「KVH東京データセンター2」の見学会を実施

アジアのクラウド/BCP拠点に向けて本格運用開始


「KVH東京データセンター2」の外観

 KVH株式会社は、アジア市場に向けたクラウド/BCP拠点となる最新データセンターとして、「KVH東京データセンター2(以下、KVH TDC2)」を千葉県印西市に開設し、2月1日より第1棟の運用を開始した。本格的なサービス開始を前に、このほど「KVH TDC2」の最先端設備などを紹介する見学会が実施された。

 KVHは、日本にフォーカスした通信/ITサービスプロバイダとして、1999年に米国フィデリティ・グループにより設立され、マネージド・サービス、データセンター・サービス、プロフェッショナル・サービス、データ通信、インターネット接続、音声通信など包括的な通信/ITマネジメント・ソリューションを法人向けに提供している。データセンター事業においては、国内外の金融サービス向けITサービスプロバイダとして、ミッションクリティカルシステムを対象とするサービスで豊富な実績をもつ。今回新たに開設したデータセンターは、東京近郊では2ヵ所目となるもので、敷地総面積約3万平方メートルに約1万6000平方メートルのサーバールームの供給が可能となっている。

印西デベロップメントプロジェクト担当 KVH DC2所長のイムティアズ・イサディーン氏

 主な利用ターゲットとしては、クラウドサービス向けインフラや高負荷システム用メインデータセンター、また金融業・通信業向けBCP(事業継続計画)/DR(災害対策)拠点などを見込んでいる。印西デベロップメントプロジェクト担当 KVH DC2所長のイムティアズ・イサディーン氏は、「新データセンターの位置する千葉県印西市は、立地条件が非常によい。都心からわずか40分というアクセスの良さに加え、成田空港からも25分と海外の顧客においても利便性が高くなっている。また、地殻構造プレートの境界が都心部とは異なり、強固な地盤とともに活断層がないため、都心との同時地震被災を回避できるのも大きなメリットだ」と、BCPおよびDRの拠点として最適なロケーションであることを強調した。

 2月1日より運用を開始した第1棟は、6階建てで4フロア計4000平方メートルのサーバールームを有し、最先端グリーンITを採用したエネルギー効率に優れた設計により、増加する電力供給と冷却能力ニーズに最高水準のサービスを提供するという。具体的な特徴を見ていこう。

積層ゴムによるアイソレーター免震部材のU型ダンパー免震部材の鉛ダンパー

 まず、設備面での大きな特徴が完全免震構造だ。免震層に、積層ゴムによるアイソレーター、鉛ダンパー、U型ダンパーの3種類の免震部材を設置。アイソレーターは建物の重さを支えるとともに水平にやわらかく動き、最大600mmのズレを許容する。また、ダンパーでは地震のエネルギーを吸収し、揺れを抑えることで、建物への損傷を防止する。「これらの免震システムと災害リスクの少ないロケーションによって、新データセンターではPML(予想最大損失額)を2.6%にまで低減している。一般的なデータセンターのPMLは約10%であり、日本のデータセンターでは最高のPMLを実現した」(イサディーン氏)としている。

 次に、電力設備については、66kV特別高圧電源をループ方式で東京電力から2系統受電。平均電源容量は、ラックスペース全体を通して標準平均1.8kW/平方メートルまで供給可能となっている。発電機は、N+1構成で、最大負荷状態で72時間以上の連続運用を実現する。さらに、電力設備で特徴的なのは、UPSシステムをIT用と設備用に完全に切り離して設置している点だ。IT用のUPSシステムは、ブロックリダンダント構成(共通予備方式)により、全負荷状態で10分間の持続が可能。オプションで2N構成にもアップグレードできる。一方、設備用のUPSシステムは、空調機や冷水供給ポンプを停電時の稼働をサポートする。

特高変圧器大型空調ユニット「CRAH」(右側)ターボ冷凍機

 空調設備としては、サーバールームに大型空調ユニット「CRAH」をN+20%で設置。最適な冷却効率を考慮し、二重化された冷却コイルを各ユニットに装着している。「CRAH」に対する冷却は、N+1構成のターボ冷凍機(インバーター制御)で作成され、冬季は水冷式によるフリークーリングが可能。ラックあたり標準で6kW、追加冷却で最大20kWの消費電力をサポートする。「この高効率の空調システムによって、PUE(電力使用効率)は国内最高クラスとなる年平均1.5以下を実現。冬季には、フリークーリングにより1.3まで低減できる。また、すべての空調機や冷水ポンプを、サーバールーム外の空調機械室に設置しているのも新データセンターの特徴の一つ。万が一、漏水してもサーバーシステムへの影響は全くなく、メンテナンスの際もサーバールームに立ち入ることなく対応できる」(イサディーン氏)という。

 セキュリティシステムについては、データセンターの入館からサーバールーム入室まで、合計8ヵ所のセキュリティ・チェックポイントを設けている。まず、施設の立ち入りをインターフォンで確認、施設入り口(夜間施錠)を経て、有人の入館受付で身分証明を行う。データセンター棟に入る際には、セキュリティゲートで共連れ防止をするとともに、静脈認証でのセキュリティチェックを行う。棟内のエレベータは、カードリーダーによってフロアごとの立ち入り権限を制御。最後に、カードリーダーおよび静脈認証によるセキュリティチェックでサーバールームへの入室が可能となる。このほか、セキュリティオペレーションセンターでは、常駐の警備員が24時間365日セキュリティシステムの監視を行っている。

サーバールームステージングルーム

 サーバールームは、全4フロアで、各フロアのラックスペースは1000平方メートル。最大約400ラックを収納可能だ。階高は5400mmで、うち床下のフリーアクセスフロアが900mm、床上から天井までが4500mmとなっている。「空調効率を重視し、フリーアクセスフロアではケーブルなどの配線は行わず、ラック上部ですべての配線を行う。例えば、46Uの19インチ標準ラックを入れても、上部にはケーブル配線できる余裕が十分にある」(イサディーン氏)としている。また、サーバールームとは別に、データセンター利用者向けに多目的のステージングルームを用意している。ステージングルームは、機器の開梱やセットアップなどの作業に利用することができ、テーブルやイスのほか、インターネット回線や電話も常備されている。

 同社では、「KVH TDC2」のサービスメニューとして、顧客のニーズに合わせて「Wholesale」と「Co-location」の2種類を提供する。「Wholesale」は、サーバールームをフロア/エリア単位(150~1000平方メートル)で販売するメニューで、複数フロアにまたぐ場合でも対応可能。一方、「Co-location」は、フロア内のラック単位で販売するメニュー。46Uサイズ(700×2200×1100)の耐震ラックを使用し、要望に応じて持ち込みラックにも対応するという。

 このほか、オペレーションサービスとして「KVHスマートハンズ」、「KVHマネージド・サービス」、「KVHネットワーク・サービス」も用意している。「KVHスマートハンズ」は、24時間365日体制で技術スタッフが待機し、キッティング&インストレーション、機器のパワーサイクル、LED目視、障害対応、テープ交換などを行う。「KVHマネージド・サービス」は、24時間体制で遠隔によるインフラ監視および管理を行う。「KVHネットワーク・サービス」は、高信頼、高安全性の高速回線(専用回線、エンドツーエンドEthernetサービス)を提供する。なお、同社以外の通信会社のサービスを利用することも可能となっている。

 現在、第2棟以降の建設計画は未定となっているが、イサディーン氏は「顧客のニーズやITの進化に合わせて、順次施設を拡張していく。新しい施設には、その時点で最先端の技術を取り入れ、さらに高効率で環境に優しい先進のデータセンターを目指す」との考えを示した。

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(唐沢 正和)
2011/3/7 06:00