LPI-Japan、クラウド技術を学ぶ「高信頼システム構築標準教科書」を無償公開


LPI-Japan理事長 成井 弦氏(左)と「高信頼システム構築標準教科書」を執筆した株式会社デージーネット代表取締役 恒川裕康氏

 特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(以下LPI-Japan)は2月16日、Linux/OSS技術者教育に利用することを目的とした教材「高信頼システム構築標準教科書 - 仮想化と高可用性 -」を無償公開した。LPI-Japanサイトから無料でダウンロードできる。

 LPI-Japanは、Linux技術者認定機関として「LPIC」を実施しており、オープンソース技術者養成のために2008年から標準教科書を2冊無償公開している。2008年6月に第1弾として「Linux標準教科書」を公開、2009年9月には第2弾となる「Linuxサーバー構築標準教科書」を無償公開した。2010年には、第1弾・第2弾のiPad版アプリ版も、順次App Storeで無償公開し、iPad版のダウンロード数は、第1弾が5万、第2弾が1万に上った。

 今回は、標準教科書シリーズの第3弾として、「高信頼システム構築標準教科書 - 仮想化と高可用性 -」を公開した。クラウドシステムの構築など、ミッションクリティカルなシステムの実現にLinux/OSSの技術者の必要性が高まっており、Linux/OSSの技術者養成を目的として制作した。なお、Linux技術者認定試験「LPIC」では、クラウドエンジニアのスキルを認定する「LPIC レベル3 304試験」に対応する。

 なお、今回の「高信頼システム構築標準教科書 - 仮想化と高可用性 -」も、なるべく早くiPad版をリリースしたい考えだ。また、第1弾からの標準教科書シリーズについて、Android版もなるべく早くリリースしたいとしている。

 今回の執筆は、株式会社デージーネット代表取締役の恒川裕康氏が担当した。恒川氏は1990年代はじめから商用Unixの移植業務に携わり、Unix/Linuxを使ったISPなどのシステム構築を手掛けた。1999年にデージーネットを設立し代表取締役に就任。著書に「オープンソースでメシが食えるか!?―成功するシステム構築のためのOSS活用術(秀和システム2008)」などがある。

「高信頼システム構築標準教科書 - 仮想化と高可用性 -」の表紙(左)と本文サンプルページ

 恒川氏は、「高信頼性システムをオープンソースで作るのは簡単ではない。ネットワーク、情報共有、ストレージ、監視・運用といったさまざまな技術を組み合わせていかないと、きちんとしたシステムを構築することができない。このため、技術者ひとりひとりが高信頼性のシステムを構築する上で想像力を働かせてシステム構築を行うための、基礎的な知識を身につけていただくことに主眼を置いて執筆した」と執筆の狙いを語った。

 また、「製品でシステムを構築する場合は、できることは製品の仕様に規定されることになる。それに対して、オープンソースで構築することで、自由度の高いシステムを構築することが可能になる。また、オープンソースで構築すれば低価格で実現できる。製品だとどうしても価格が高いものが多いので、オープンソースを利用することで、適用できる用途の幅が広がる。そうしたことを可能にするための技術をお伝えできればと思って制作した」と、オープンソースを使うメリットを挙げた。

 LPI-Japan理事長の成井 滋氏は、「日本の技術者は優秀だが、オープンソースの世界における日本の技術者の活躍は、アメリカに比べるとまだまだで、グローバルで通用するシステムとなると特に弱いのではないかと思う。クローズドソースに依存していることは、日本の技術が世界に出て行けないというマイナスのインパクトを与えていると考えている。オープンソースの技術を広く伝えるための教科書を整備することで、日本の技術者が構築した日本企業のクラウドが海外に進出してくれる助けになれば、という思いがある」とコメント、オープンソースの活用をさらに広めていきたいと述べた。

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