「日本1位、グローバル4位の力を生かす」~NECとレノボがPC事業で合弁会社を設立

共同記者会見レポート


記者発表会で握手するレノボグループCEOのユアンチン・ヤン氏(左)と、NECの代表取締役執行役員社長 遠藤信博氏(右)

 日本電気株式会社(以下、NEC)と中国Lenovo Group(以下、Lenovo)は27日、戦略的提携に基づいた合弁会社「Lenovo NEC Holding B.V.」の設立を発表。同日19時から、東京・帝国ホテルで記者会見を開催した。

 記者会見で最初に登壇した、NECの代表取締役執行役員社長 遠藤信博氏は、「グローバル4位のPCメーカーであるLenovoの力と、長い間国内シェア1位のNECの力が、シナジーを持って新しい提携をする。市場でのポテンシャルを築き上げるための大きな力となる、重要な提携だ」とあいさつ。「Lenovoとホールディングカンパニー(持株会社:NECレノボ・ジャパングループ)を作って当社のPC事業を移管し、100%子会社として、NECパーソナルコンピュータとレノボ・ジャパンを傘下に持つ」と、今回のスキームを説明した。

NEC側のメリットは「製品力」「価格競争力」「海外展開」の強化


NECの遠藤信博社長

 具体的な提携のメリットとしては、大きく3つを挙げた。1つ目は「両社の開発連携による製品力強化」で、遠藤社長は「当社は企業、コンシューマの双方から、品質を含めて信頼を得ている。Lenovoでは、長年ThinkPadを支えてきた堅牢性、信頼性がある。当社の力がLenovoの力と合わさって、開発力を向上できるだろう」とコメントする。

 2つ目のメリットは「スケールメリットを生かした価格競争力の強化」で、世界シェア4位のレノボとの連携により、調達などでスケールメリットの享受を図る。最後の3つ目は、「NECのビジネスPCの海外展開拡大」。これについては、「これまでは日本に特化して活動してきたが、海外に出ている日本企業への一括したPC提供などが可能になる」として、ビジネス領域拡大のチャンスととらえ、積極的に取り組む姿勢とした。

 さらに遠藤社長は、「タブレット、サーバーの共通的な販売も可能性があるのではないか、と思っているし、それ以外の領域も模索していく」として、将来的な連携領域の拡大についても期待を示している。


Lenovoのユアンチン・ヤンCEO

 一方Lenovo側では、CEOのユアンチン・ヤン氏が、「グローバルでも日本でも、5四半期連続で業界最速の成長を遂げているが、日本でのシェアは6位に甘んじていた。日本は世界3位の規模で、当社も、大和研究所を最新のビルに移転させるなどの大きな投資をしている、重要な市場。今回の提携によって、その日本でのシェアが1位になり、収益性を拡大する上で可能性が広がるし、NECは企業や公共などにも強い」と話し、日本市場での展開を拡大する上で、今回の提携は大きな意義があると説明した。

 また、Lenovoにとってもよりスケールメリットを得られるようになるほか、NECの技術力にも期待しているとコメント。加えて、「レノボは物流体制、サプライチェーンが優れており、NECの誇る生産体制と合わされば、業務効率化でも得るものがある」とも述べている。

 なお、NECではこの提携を受け、1億7500万ドル相当のLenovo株を引き受けることも発表されているが、これはLenovoの資本の2%にあたるとのこと。Lenovo 上級副社長兼CFOのワイ・ミン・ウォン氏は、「戦略的な提携を長期的に持っていこうということ。単なる一過性の取引とは違う」として、これを本気の提携の証とした。

 

両社のブランドは継続、当面は販売や生産も現状の体制を維持

 NECとLenovoでは、NECレノボ・ジャパングループを6月をめどに発足させるが、その後もNEC、Lenovo双方のブランドについてはそのまま維持され、現状のシリーズ名も、両社ともに継続される。また販売、生産体制については、長期的には最適化を行うとしながらも、短期的にはそのまま維持されるという。

 出資比率はLenovoが51%、NECが49%で、社長にはNECパーソナルプロダクツの社長である高須英世氏が、会長にはレノボ・ジャパンの社長であるロードリック・ラピン氏がそれぞれ就任する予定。


PC事業の提携スキームブランドは継続する

 会見では、「グローバルのPC企業であるLenovoにはとても強い調達力・開発力があるし、それ以外にも当社が持っていない優れた力がある。それを最大限に生かし、今まで以上に、お客さまのニーズに合致したPCを作れることを、大変楽しみにしている」(高須氏)、「Lenovoは日本での歴史も長く、世界で評価されているThinkPadは大和事業所で開発が続けられている製品。日本のお客さまやパートナーに、日本市場に合った製品を提供すべく、ステップアップしていく。また企業文化も非常に重視しているので、NECとレノボの長所を生かしていきたい」(ラピン氏)と、それぞれ抱負を述べた。


合弁会社の社長に就任する予定の高須英世氏合弁会社の会長に就任する予定のロードリック・ラピン氏

 なお、合弁会社の過半をLenovoが出資することから、質疑応答では、NECが将来的にはPCから撤退するのでは、という質問も出されたが、NECの遠藤社長は、「このホールディングカンパニーはイコールパートナーシップ(対等で友好的な関係)で動かす」とし、100%Lenovo傘下に入ったり、PC事業から撤退したりすることは一切ないときっぱり否定した。

 その理由は、今後NECの事業においてキーになるクラウド事業では、PCが大きな役割を果たすと遠藤社長が考えているからで、これまでも、同様の発言を再三してきたこと。今回も、「クラウドビジネスは、クラウドの中から提供するサービスと、IT、ネットワーク、デバイスでできあがっていると考えている。クラウドを主軸ビジネスとしている中では、PCを含めたデバイスは大切なもの。その意味では、当社のビジョン、中期経営計画の中の非常に重要なパートと考えている」と、これまでの主張を繰り返している。

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