東大・国立天文台グループ、世界一の電力効率をもつスパコン開発


東京大学大学院 情報理工学系研究科 平木敬 教授

 東京大学大学院 情報理工学系研究科の平木敬 教授と、国立天文台 理論研究部の牧野淳一郎 教授は7月6日、東大・国立天文台が共同開発したスーパーコンピュータシステム「GRAPE-DR」が、電力あたりの性能のランク付けを行うGreen500プロジェクトが発表した2010年6月の「Little Green 500 List」でTop1にリストされ、世界一の電力あたり性能を実現していることが認定されたと発表した。

 GRAPE-DRは、HPL ベンチマークで1ワットあたり815Mflopsの処理性能を実現。現在世界最高速のオークリッジ国立研究所Cray XT6システムと比べ、電力あたり約3倍の性能を達成したことになるという。

 スーパーコンピュータの分野では激しい国際競争があり、1~1.5年で2倍というハイペースな性能向上が進んでいるが、一方で処理性能向上にともなう消費電力の増加が環境負荷の点と、運転費用の面から問題となっているという。このため、計算機の電力あたりの性能を向上させることはスーパーコンピュータ開発の最重要課題となっているという。

 Green 500 プロジェクトは、現在のような状況を予測したバージニア工科大学のFeng教授が2006年にIEEEで提案したことから始まった、HPLベンチマークでの電力あたり性能を順位付けすることで、電力あたり性能が高い計算機の開発・普及を促進することを狙いとしたプロジェクトで、「Little Green 500List」として2007年から順位を公開している。

 平木教授と牧野教授は、「東大・天文台が共同開発したGRAPE-DRシステムがLittle Green 500Listで首位を獲得したことは、次々世代のスーパーコンピュータ開発の最大の課題の解決方向を、世界に示すことができた、という大きな意義があると考えている」とのコメントを発表。

 両教授は、世界一の電力あたり性能は実現したが、GRAPE-DRの性能にはまだ向上の余地があるとして、今年度中にさらに50%程度の電力あたり性能向上の実現を目指すとともに、より大規模なシステムの性能測定を行う予定だ。

CRAPE-DRプロジェクトで開発した、超低消費電力を実現する1チップ超並列プロセッサ「GRAPE-DR プロセッサチップ」。チップ単体で200Gflopsの性能を50Wの消費電力で実現する
GRAPE-DRプロジェクトで開発した、GRAPE-DR 4プロセッサボード。DRAPE-DRプロセッサ4チップを搭載し、ホスト計算機と高速・低レイテンシでの通信を実現するGRAPE-DR システム
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(工藤 ひろえ)
2010/7/9 06:00