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日本オラクルの2027年度戦略、AI Changes Everythingを掲げインダストリーアプリの国内展開を強化へ

 日本オラクル株式会社は7日、2027年度(2026年6月~2027年5月)の事業戦略について説明。新たに、インダストリーアプリケーションの日本における展開を強化する方針を示した。具体的には、「通信」、「エンジニアリング・建設」、「金融」、「公益」の4つの分野に注力するという。さらに、AIによる業務変革を支援する専任組織「Applied Engineering」の設立、SaaS事業会社との共創プログラム「Oracle ISV AI Transformation Program」の提供、SaaSのAIネイティブ化の推進などにも取り組む。

 日本オラクルの三澤智光社長は、「日本オラクルは、AI Readyなデータプラットフォームを、お客さまが求める要件にあわせて提供する。オンプレミスやパブリッククラウドだけでなく、ソブリン要件やマルチクラウド要件にも対応していく。さらに、ホリゾンタルなOracle Fusion ApplicationsおよびOracle NetSuite、バーチカルなインダストリーアプリケーションの提供を行い、それぞれに適したAIを選んでもらえる環境も整える。これが、2027年度の日本オラクルの姿になる」と述べた。

日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏

 また、2027年度のコーポレートメッセージとして、「AI Changes Everything(AIの光を力に、信頼で加速する)」を掲げた。三澤社長は、「これは、数年前に創業者のラリー・エリソンが発した言葉である。1990年代には、Internet Changes Everythingと発言し、インターネットが世の中の仕組みを大きく変えることを示唆した。それに続くものになる。ただ、AIが持つ側面には、光だけでなく、影もある。影を信頼に変え、AIの光の部分を加速していくことに取り組みたい」と語った。

 同社では過去3年間にわたり、重点施策として「日本のためのクラウドを提供」と「お客さまのためのAIを推進」の2点を掲げてきた経緯がある。「この点については、さまざまな成果を出すことができた。オンプレミスのミッションクリティカルシステムのクラウド化であればOracle Cloud Infrastructure(OCI)というブランドを構築でき、SaaSのERPといえば、Oracle Fusion Applications/Oracle NetSuiteというブランドも確立できた」と自己評価する。

 一方、「大切なのは、お客さまに貢献できているかどうかである。2026年度は、多くの企業の成長を支援でき、それに関するプレスリリースも発表している」と、日本の企業への貢献度でも成果を強調した。

 ここでは、代表事例として、KDDIにおける情報システム部門の変革について言及。「日本のITプロジェクトの約9割を人件費が占めているのが実態であり、運用・保守においても人件費に多くのコストが費やされている。KDDIでは、ミッションクリティカルシステムをクラウドリフトし、インフラコストだけでなく、人件費を含めた大幅なコスト削減を実行した。それにより、データ整備やAIへの投資を強化。さらに、情報システム部門が内製化によって、調整役から全体をコントロールする役割へと変化し、社内における力を取り戻すことができた」と述べた。

KDDIの事例

 また、ソブリンのニーズに対応したクラウドおよびAIを提供するためのパートナー連携を強化。野村総合研究所、富士通、NTTデータ、ソフトバンク、日鉄ソリューションズがOracle Alloyを導入している。

 「日本企業を通じて、ソブリン性を持たせた優れたクラウドとAIサービスを提供できる基盤が整った。オラクルは、日本の法律下で運用ができるフルクラウドサービスを提供できる唯一の会社である」とし、さらに、日本オラクルが設置したJapan Operation Center(JOC)を通じて、これらのパートナーに対して、日本在住の専任者が、24時間365日のサポート体制を敷いていることも強調した。

ソブリンのニーズに対応したクラウド/AIを、日本のパートナーと提供中

 また、日本国内において、パブリッククラウド、分散クラウドを含めて16リージョンを稼働させ、構築中の4つのリージョンを加えると合計20リージョンを展開。これが国内で最大規模となっていることを示しながら、「特に、日鉄ソリューションズの西日本データセンターは、九州で稼働する初のハイパースケールのクラウドデータセンターになる」とも述べた。

日本国内20リージョン(16 展開中+4 構築中)で提供

 Oracle CloudによるAI活用の事例では、野村総合研究所や大日本印刷、イトーキ、RKKCS、オカムラ、NECなどの事例を示したほか、新たな事例として、厚生労働省が、Oracle Autonomous AI Database、OCI Enterprise AI、Oracle APEXなどを活用し、所管する各種の申請業務向けに、意味検索と対話型AI RAGシステムを段階的に構築することを発表。第1段階として、前例・関連文書の意味検索システムを稼働。情報公開などの事務業務の効率化および最適化を推進することになるという。

 「RAGシステムの構築のためには、安全でセキュアな、スケーラビリティを持ったベクターサーチエンジンが重要になる。ここにオラクルの技術を生かすことができる」とした。

オラクルのAIサービスを活用し情報公開等事務の業務効率化、最適化を推進

 2027年度の注力領域に挙げたインダストリーアプリケーションの強化では、「通信」、「エンジニアリング・建設」、「金融」、「公益」の4分野を対象にしたソリューションを、Oracle Fusion ApplicationsやOracle NetSuiteと組み合わせて提供していくという。

 「オラクルは、インフラやデータプラットフォーム、あるいはERPやSCM、HCMなどのホリゾンタルアプリケーションに強い企業というイメージがあるだろうが、グローバルでは、インダストリーに特化したバーチカルアプリケーションが強い」とした。

 さらに、AIによる業務変革を支援する専任組織として、「Applied Engineering」を設立する考えも明らかにした。AI実装で最も重要となるデータ活用を起点に、データエンジニアリングに精通した専任組織が、構想策定の段階から伴走。事業ビジョンの策定や、業務適用性の検証などのワークショップの開催、Fusion Applicationsの標準AI機能およびAI活用フレームワークの活用、過去100件を超えるプロジェクト支援実績を生かしながら、「顧客オンデマンド」なAI構想の具体化と、業務へのAI適用を加速するという。

 「AI活用を促進するには、データを整備し、データプラットフォーム化する必要がある。これをお客さまの現場に行き、実装することができるトップエンジニアの集団がApplied Engineeringとなる。構想策定から業務適用までをあわせて行わないとPoCで終わってしまう。使えるAIの実装を推進したい」と語った。

 また、日本におけるSaaSのAIネイティブ化を推進するために、SaaS事業会社との共創プログラム「Oracle ISV AI Transformation Program」の提供を開始する。第1弾として、OCI AI Use Case Assessmentを提供。NSWやソフトマックス、ソリューション・アンド・テクノロジー、BLUEISHが参加し、差別化すべきAI機能やユースケースの共同検証、SaaSにすぐに実装可能なAIとして実機検証、約100種類を超えるAIユースケースの提供を通じて、AIエージェントや業務特化型AI、生成AIを、各社のSaaSサービスに実装することになる。

米本社・日本オラクルともに好調に推移した2026年度

 一方、2026年度(2025年6月~2026年5月)の業績についても総括した。

 米本社では、前年比16%増の約10兆8000億円と高い成長を維持。2026年度第4四半期時点の契約済み受注残は、前年比363%増の102兆円となり、そのうち、今後1年以内に12%(約12兆円)が売上として計上される見込みだという。さらに、3年後には34%(約35兆円)が売上認識される見込みであることも示した。メタ・プラットフォームズなどとのAIクラウドデータセンターに関する契約などが背景にある。

 「Oracleの業容や、会社のありようが変化してくるだろう。ソフトウェアやクラウドビジネスに加えて、成長が著しいAIクラウドデータセンター事業に参入していくことになる。新たなキャッシュフローのエンジンを手に入れただけでなく、既存事業に対しても強い影響を与えることになる。旧来のライバル企業との関係も大きく変化する」と位置づけた。

米本社 2026年度事業概要

 また、日本オラクルも好調であり、過去最高業績を更新。2026年度の売上高は前年比8.2%増の2850億円、営業利益は同3.4%増の897億円、経常利益は同4.5%増の913億円、当期純利益は同4.6%増の635億円となった。「2022年度以降、業績を拡大している。オンプレミスの事業が引き続き好調であり、クラウド事業、SaaS事業が成長している。2027年度もしっかりと成長させたい」と述べた。

日本オラクル株式会社 2026年度 事業概要

 2026年度の成果のひとつに挙げたのが、2026年4月に米Oracleのマイク・シシリアCEOが初来日した際に、高市早苗首相を表敬訪問し、2024年8月に発表した80億ドルの対日投資を継続することに加えて、それ以上の投資を行うと表明したことであった。ここでは、国内のパートナー企業と連携して、日本のデータ主権を確保し、安全で強靭なデジタルインフラの強化に貢献。日本の経済安全保障と国際競争力の強化にも引き続き貢献することも示した。

クラウドリフトから「基幹系AI」へ、AIネイティブなSaaSで実現する自律型企業

 さらに三澤社長は、「オンプレミスは不都合な状況になってきている」と指摘。「日本オラクルがクラウドリフトにフォーカスしている背景にあるのは、日本の企業に対して、バラバラなインフラや高額な運用保守コスト、進化のないアプリケーションの環境を変えることから進めてほしいというメッセージである。アプリケーションやビジネスモデルのすべてを変えるレガシーモダナイゼーションは理想だが、ここにはいきなり到達はできない。まずはインフラをモダナイズし、クラウドのメリットを享受してもらうことを提案している」と述べた。

 また、「レガシーシステムを一気にDX化するための提案としては、SaaSを推進してきた。オンプレミスをクラウドリフトすることで、クラウドのすべての環境を使えるようになる。これにより、AIやデータプラットフォームの仕組みも活用できる。企業にとっては、クラウド/AIジャーニーが重要であり、日本オラクルはそれを支援する」とも語った。

 今後のAIについては、「AIが基幹業務をエンドトゥエンドで自律的に実行する『基幹系AI』の時代が訪れる。そのためには、コンテキストをデザインするデータプラットフォームが重要になる。この部分を埋めていくことが、オラクルが今後数年にわたって取り組む施策になる」とし、「オラクルは、『基幹系AI』で必須となる要素を、ひとつのAI Readyなデータプラットフォームで提供することができる。これにより、AIの光を実装し、日本を強くしていきたい」と話している。

 アプリケーションの取り組みについては、「オラクルのSaaSの特徴はシングルデータモデルであり、リッチコンテキストやセキュリティ、ガバナンスを備え、データベース機能もフルに活用することである。これが、競合他社との最大の差別化になっている」とし、「この環境でAIを動かすことができるため、基幹系AIや実行系AIを作り上げる点では優位である。AIエージェントが適切な判断のもと、安全に横断した業務を実行できる環境を実現する」と語った。

自律型企業を真に実現可能な、AIネイティブなSaaS

 オラクルでは、2026年4月に「Fusion Agentic Applications」を発表しており、Oracle Fusion Cloud Applicationsに組み込んだ形で提供。統合された企業データ、ワークフロー、ポリシー、承認階層、権限、トランザクションのコンテキストに、安全にアクセスし、業務プロセス内で意思決定を行い、その決定を実行できるようにしている。

Oracle Fusion Cloud Applications:Agentic Applications

 すでに、ERP/SCM、HCM、CXの領域において、22のFusion Agentic Applicationsを発表しているという。「こうした取り組みをしている会社はオラクルしかない。オラクルのアプリケーション事業が再び脚光を浴びることにつながっている」と述べた。

22 new Fusion Agentic Applications

 また、Oracle AI Agent Studio for Fusion Applicationを通じて、数百を超える組み込み済みAI機能を提供するとともに、Agent Studioを経由して、1000を超えるAIエージェントを提供。マーケットプレイスから、パートナーが作成したAIエージェントを利用できるほか、グローバルで8万人を超える認定エキスパートがおり、Agent Studioの活用が急速な勢いで広がっていることを示した。

Oracle AI Agent Studio for Fusion Application

 アプリケーションのAI活用では、デンソーの事例を紹介。同社では、Oracle Fusion Cloud SCMを活用し、AI活用を前提とした基幹システム刷新に取り組んでおり、グローバルのサプライチェーン業務を変革しているという。「レガシーシステムから、AIを活用した新たなアプリケーションや業務プロセスのデザインに取り組んでいる。日本の製造業が次に目指す姿を示したプロジェクトだといえる」と位置づけた。

デンソーの事例

フロンティアAI時代のセキュリティ脅威に対抗

 フロンティアAI時代におけるセキュリティ対策についても言及した。

 「フロンティアAIへの対策は、可及的速やかに行わなくてはならない。だが、日本の企業の基幹システムの多くは複雑なオンプレミス環境にあり、脅威への対応は不可能と言わざるを得ない状況だ。クラウドリフトして、インフラだけでも最新の状況を担保できる環境を整える必要がある。そして、SaaSを活用することも対策になる。インフラからアプリケーションまで、ベンダーがセキュリティ対策を取れる環境へと変えていかなくてはならない。日本のITは危険すぎる状況にある」と、警鐘を鳴らした。

 その上で、オラクルでは、これまでは四半期ごとに提供していたセキュリティパッチを、月次で提供することに変更すると発表した。

フロンティアAIにより高まるセキュリティ上の脅威

 また、Oracle AI Resilience Solutions(OARS)により、顧客ごとの環境にあわせたセキュリティ対策ソリューションを提供。2026年7月から、オンデマンド方式でトレーニングを受けられるOracle AI Resilience Training(OART)も提供する。さらに、これらのサービスは、パートナーを通じて提供する仕組みも用意する。

顧客のセキュリティ対策向上を支援するプログラムを提供開始

 「月次でセキュリティパッチをあてることが可能な環境が整っている日本の企業はほぼない。しかし、フロンティアAI時代の脅威を考えると、これを実装できる体制をいち早く構築することが大切である。日本オラクルにとっては、これを支援していく1年になる。フロンティアAI時代の日本の企業のレジリエンス向上を手伝うことになる」と発言。

 「フロンティアAIによって、脆弱性の発見や、攻撃手法の開発スピードが劇的に高速化することになる。だが、狙われるのは、業務データおよびバックアップデータであり、従来と変わらない。つまり、対策に関しては、リアルタイムでの監視および監査、最新の状況を維持することが重要であり、ックアップをしっかりと取ることや、DRサイトを構築することなど、基本的な対策は変わらない」とした。

攻撃のスピードは劇的に高速化する一方、侵入後に狙われるのは業務データとバックアップで変わらない

 さらに、「オラクルは、究極のランサムウェア対策が取れるバックアップソリューションを持っている。Zero Data Loss Recovery ApplianceおよびZero Data Loss Autonomous Recovery Serviceがそれであり、Oracle Databaseだけに適用できる。Oracle Databaseは、ランサムウェアから絶対に見えないエリアでバックアップを取り続けることができる唯一のデータベースである。本番データが感染したとしても、バックアップは感染する直前のトランザクションレベルまでの正確なデータを保持している。ここからすぐにリカバリーできる点も特徴である」と説明した。

 だが、「この機能は10年以上前から提供してきたが、まったく見向きされなかった。Oracle Database専用のバックアップになるため、すべてを変更しなくてはならないため面倒であること、データだけでなく、ファイルシステムやアプリケーションを含めた全体復旧を考える必要があり、そこに課題があると指摘する声があったためだ。しかし、それらの考え方が100%間違っていることが証明された。正しいデータが残っているかどうかで、復旧のスピードは圧倒的に変わる。正しいデータがあるかどうかで、監査法人がGOを出すスピードも大きく変わる。データを守るソリューションを提供できるのはオラクルの強みであり、それがここにきて見直されている」と強調した。

オラクルが提供する究極のバックアップソリューション

 建設機械レンタルのアクティオでは、基幹システムをOCIにクラウドリフトするとともに、Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service(ZRCV)を導入して、レジリエンスを強化。障害や災害、サイバー被害の発生時も、被害直前のデータ状態まで迅速に復旧することができるようにしているという。

アクティオの事例

 なお、会見にビデオメッセージを寄せたソフトバンク 常務執行役員の丹波廣寅氏は、「日本オラクルとの協業によって、日本企業のAI活用を本格化させることができる。AI活用において、機密性の高いデータをどう守るのか、どう運用するのか、既存システムとどうつなぐのかといった課題があるが、ソフトバンクが提供するCloud PF Type Aは、ソフトバンクが持つ日本国内のデータセンターで管理、運用するソブリン性を備えた高性能クラウド基盤であり、ここにOracle Alloyを採用し、データ主権や運用主権に配慮したクラウド・AIサービスを活用できる」と話す。

 加えて、「独自の国産LLMであるSarashinaを組み合わせることで、唯一無二のソブリン性を備えたAI基盤を提供することが可能だ。企業が保有するデータと安全に連携させ、文書生成、要約、社内ナレッジ活用、AIエージェントなど、日本企業の実務に根ざしたAI活用を支援する。また、ソフトバンクはフィジカルAIにも取り組んでおり、クラウド、ネットワーク、AIを一体で提供する通信事業者の強みを発揮し、低遅延で高信頼な制御を実現する。日本オラクルとの協業を通じて、安心して使えるAI基盤を日本に根づかせ、企業や自治体の新たな価値創出を支える」と述べた。

ソフトバンク 常務執行役員の丹波廣寅氏

 また、UCCジャパン 執行役員 ICT・デジタル担当兼情報セキュリティ担当/ユーコット・インフォテクノ 代表取締役社長の黒澤俊夫氏は、「2022年末から、グローバルサプライチェーンおよび会計領域での標準プロセスの統合を、Oracle Fusion Cloudによって進めている。想定していたよりも早くさまざまなテクノロジーが実装され、オペレーションにプラスに働いている。特に、AIおよびAIエージェントの実装により、時間がかかっていた業務分析を飛躍的に改善している。日々生成されるトランザクションデータを、リアルタイムに分析できる環境が整備され、レイテンシーの問題も解決できている。Oracle Fusion Cloudを選択した判断は正しかったと考えている。この経験を広く伝えたい」などと語った。

UCCジャパン 執行役員 ICT・デジタル担当兼情報セキュリティ担当/ユーコット・インフォテクノ 代表取締役社長の黒澤俊夫氏