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NTT東日本、三菱電機、CLPAの3者、IOWN APN活用で産業用ネットワーク「CC-Link IE TSN」の長距離リアルタイム通信に成功
2025年10月9日 13:08
NTT東日本株式会社、三菱電機株式会社、一般社団法人CC-Link協会(以下、CLPA)の3者は8日、産業用ネットワーク「CC-Link IE TSN」を実装した産業用機器同士を擬似的に構築された遠距離地点に配置し、IOWNの中核技術であるオールフォトニクスネットワーク(以下、APN)を通じて、最大1600km離れた場所でリアルタイムに監視・制御する実証に成功したと発表した。
CC-Link IE TSNは、産業界でいち早くTime-Sensitive Networking(TSN)技術を採用し、CLPAが仕様を公開しているオープンネットワーク。TSN技術は、Ethernet通信のリアルタイム性に関する複数の国際標準で構成された技術規格で、主な規格にIEEE 802.1AS、IEEE 802.1Qbvがある。これらの規格を組み合わせることで、一定時間内での伝送を保証する定時性や、異なる通信プロトコルとの混在が可能となる。
産業界では、少子高齢化による労働力不足や、グローバルでの競争激化により、生産の効率化が重視され、製造現場のデジタル化や遠隔監視・制御のニーズが高まっている。しかし、遠隔地の工場の生産状況を把握したり、機器をきめ細かく制御したりする場合、CC-Link IE TSNを従来の拠点間ネットワークに接続しただけでは、高精度な監視・制御に求められる通信の遅延性能や安定性(ゆらぎの少なさ)を十分に満たせないため、遠隔でリアルタイムに産業用機器を監視・制御することは困難だった。
また、従来の拠点間ネットワークは、工場などにおいて産業用機器を適切に制御することで実現する機能安全の確保に必要な要求事項の一つである、安全通信機能も備えていなかった。
これらの課題に対し、NTT東日本と三菱電機、CLPAは、APNの「低遅延」「ゆらぎゼロ」の特長と、CC-Link IE TSNの「高速リアルタイム」「高精度同期」「安全通信機能」の特長を活用して、遠隔にある産業用機器同士を、APNを介してCC-Link IE TSNでリアルタイムに通信させる実証を行った。
実証では、NTTe-City Labo内の「IOWN Lab」(東京都調布市)にCC-Link IE TSNのマネージャー局を搭載した産業用機器(三菱電機製シーケンサー)を設置するとともに、約20km離れたeXeFIELD AKIBA(東京都千代田区)にローカル局を搭載した産業用機器(三菱電機製シーケンサー)や、リモート局に当たる産業用機器(三菱電機製リモートI/O)を設置し、これらの拠点間をAPNの実回線を用いて接続した。その結果、実測した遅延性能とゆらぎの性能がCC-Link IE TSNの仕様を十分に満たしており、正常に通信できることを確認した。
さらに、OTN Anywhereの遅延調整機能を用いて、疑似的に最大1600kmの回線遅延を付加し、遠隔地間をAPNで接続した場合でも、CC-Link IE TSNによってリアルタイム通信が可能であることを確認した。また、CC-Link IE TSNは安全通信機能を有するため、遠隔地間でも機能安全を確保できる可能性があることも確認した。
CC-Link IE TSNには、性能に応じてClass AとClass Bという2つの仕様があるが、今回はより高性能なClass Bを実証に使い、通信ノード間の同期精度が1μs以下であることを確認しているという。
実証の結果から、APNを通じて遠隔地にあるCC-Link IE TSNを実装した産業用機器を「高速リアルタイム」「高精度同期」「安全通信機能」の特長を生かしながら、監視・制御が可能になると説明。さらに、デジタルツインのリアルタイム化による生産のさらなる最適化や、遠隔監視・制御のリアルタイム化によるトラブル発生時のダウンタイム短縮が期待されるとしている。
また、幅広い業界で採用される三菱電機製シーケンサーの納入実績をもとに、自動車、リチウムイオン電池、ガラス、タイヤ、半導体、飲料・食料品、医薬品、日用品の製造など、さまざまなシーンでの活用事例の創出に向けて、実証を重ねていく。
NTT東日本と三菱電機、CLPAは、産業界における製造現場のデジタル化とリモート化の要望に応えるソリューションを広く提供することで、デジタルツインを活用した生産の効率化やカーボンニュートラルの推進をサポートし、日本のモノづくりの課題解決と競争力強化に貢献していくとしている。