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ドキュサイン・ジャパン、「契約業務におけるAI活用の実態調査」の結果発表

契約プロセスに特化したAIエンジン「Docusign Iris」を本格展開へ

 ドキュサイン・ジャパン株式会社は、全国の契約業務に携わったことのある会社員を対象に「契約業務におけるAI活用の実態調査2025」を実施し、その結果を発表した。9月11日に行われたメディアラウンドテーブルでは、調査結果および契約AIの現状について解説するとともに、契約業務に特化した新たなAIエンジン「Docusign Iris」を日本で本格展開することを明らかにした。第1弾として契約書の保管から分析・活用までを一元化する機能「Docusign Navigator」を9月30日にリリースする。

 今回の調査では、まず「契約業務や契約ツールにAIを活用しているか」を聞いたところ、42%の企業が契約業務にAIを活用していることがわかった。AIを使用するシーンとしては、「リスクのある条項の指摘や不利な条項の特定などを含む契約書レビュー」が最多で約6割(59.5%)。次に多かったのが「契約書のドラフト作成・たたき台の生成」(52.4%)、「既存の契約書からの情報抽出・要約」(51.6%)で、業務効率化のためにAIを活用している企業が多いなか、契約業務でもAIの活用が広がっていることが明らかになった。

「契約業務におけるAI活用の実態調査」のグラフ

 AIの活用有無にかかわらず、契約業務において感じている全体の課題について聞くと、「過去の類似契約を探し出すのに時間がかかる」(33.3%)、次いで「契約更新の期限管理が属人化しており、見落としリスクがある」(29.0%)、「契約情報が各所に散在し、一元的に把握・管理できていない」(28.0%)という結果になった。契約業務の課題は、「類似契約の検索」「更新管理」「情報の一元化」が中心であることがわかった。

 さらに、契約業務におけるAI活用について負担に感じていることを聞いたところ、「AIの出力結果を人間が詳細に確認・修正する必要があり、二度手間になっている」と「AIが契約の背景や取引の特殊性を理解できず、的外れな修正や提案が多い」が同率(47.6%)でトップになった。

「契約業務におけるAI活用の実態調査」のグラフ

 この調査結果を受けて、ドキュサイン・ジャパン シニア・プロダクトマーケティングマネージャーの寺村翔氏は、「契約業務の効率化に向けて、AI活用のニーズが急速に高まっている。今回の調査では、すでに4割以上の企業が、契約業務に何らかのAIを活用していることがわかった。一方で、AIを活用している約半数の企業が『二度手間』や『的外れ』という問題を抱えており、『AI疲れ』が顕著になっている実態が浮き彫りになった。契約業務におけるAI活用の課題を解決するためには、単なる作業の代替ではなく、企業の法務基準などを学習し、契約ライフサイクル全体を改善する基盤型AIが必要になる」と指摘する。

ドキュサイン・ジャパン シニア・プロダクトマーケティングマネージャーの寺村翔氏

 こうした状況を踏まえて、同社では、契約ライフサイクル全体を支える基盤となる新たなAIエンジン「Docusign Iris」を日本で本格展開するという。寺村氏は、「現在、ツールベンダーの多くは、オープンソースの生成AIを利用して契約AIツールを開発している。そのため、複雑な契約の相関性を理解できず、的外れな提案になってしまう。これに対して、当社の『Docusign Iris』は、契約領域を熟知した世界トップクラスのAI専門家が、契約プロセスのためだけにゼロから構築した独自のAIエンジンとなっている。契約・合意文書に関する世界最大級の学習データをベースに、主要なLLMを契約業務に特化してファインチューニングした。また、顧客の『信頼』をすべての基盤とする開発思想のもと、大規模利用にも耐えうるエンタープライズ品質を実現している」と説明した。

「Docusign Iris」の概要

 「Docusign Iris」の第1弾として、契約書の保管から分析・活用までを一元化するAI機能「Docusign Navigator」日本語対応版を9月30日にリリースする予定。同機能では、契約書データを一元保管することで、情報検索や他システムとの連携をスムーズにするとともに、AIが契約書の中身を深く理解し、項目を自動で抽出・構造化する。これによって、社内に“塩漬け”にされている契約書の山を、企業の意思決定を支える戦略的資産へと変革することが可能となる。また、詳細な権限管理とユーザーの操作履歴の可視化で、契約に関わるリスクを最小化する。

「Docusign Navigator」のユースケース例

 「グローバルでの事例では、『Docusign Navigator』の導入によって、複雑な契約の中で見逃していたリスクを発見し、約30万ドル相当のリスク削減効果を挙げているケースがある。また、主要契約データを管理(更新日の可視化・監視など)することで、契約漏れを回避し、約51万ドルの経済効果を生み出したケースもある」と、「Docusign Navigator」の導入による契約業務の改善効果をアピールした。

 「Docusign Iris」の今後の展開としては、メールを自動でタスク化し契約業務を一元管理する機能「Agreement Desk」を2026年4月に提供する予定。同機能では、契約書の差分・修正・コラボを一箇所で行うことができ、契約の受付から署名完了まですべてのプロセスを効率化する。

 また、契約レビューを自動化する機能「AI-assisted review in CLM」の日本語版を2026年中にリリースする予定。同機能では、事前に承認されたプレイブックに基づいて契約書のレビューを実行することで、交渉を加速し、チームメンバーがレビューに参加する機会を拡大する。

 このほか、契約書の自動管理機能「Obligation Management」を2026年にリリースする計画。同機能では、更新・支払い・契約解除など、契約書の重要な条項を自動で抽出・管理することで、レビュー作業を効率化する。また、期日が近づいた義務に対して通知を設定し、検索やレポート作成にも対応。手動で義務を登録でき、関連タスクの追加や履行状況の追跡もスムーズに行うことができるという。