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日立と新潟大学、リンクワーカーの面談業務を効率化する業務支援システムを開発
9月より新潟県十日町市での試行導入を開始
2025年8月28日 09:00
株式会社日立製作所(以下、日立)および新潟大学は27日、地域資源を活用して住民の健康を支える社会的処方の多地域展開を目指し、音声認識と生成AIを活用したリンクワーカー業務支援システムを開発したと発表した。9月1日より、新潟県十日町市の特定保健指導業務に試行導入し、有効性を検証するとしている。
近年では、教育や就業、生活環境などの社会的要因が健康や生活の質に大きく影響することが明らかになってきたことから、医療機関だけでなく、地域の栄養・運動教室、通いの場など、多様な地域資源を活用した「社会的処方」の取り組みが注目されているという。
こうした背景から、日立と新潟大学では、十日町市の協力を得て、糖尿病患者に地域の栄養指導やスポーツクラブを紹介する小規模実証「とおかまち健康の処方箋」の取り組みを進め、血糖コントロールの有意な改善と持続的な生活習慣の変化を確認しているとのこと。その一方で、患者に地域資源を紹介するリンクワーカー(保健師など)の業務において、面談記録の作成に多くの時間と労力を要することや、地域資源の数や種類が拡大した場合の紹介先選定方法が課題であることが明らかになった。
そこで日立と新潟大学では、医療・介護の専門人材や地域資源が限られる中でも、リンクワーカーが効率的かつ的確に住民支援を行えるよう、音声認識と生成AIを活用した業務支援システムを共同で開発した。
このシステムでは、リンクワーカーが住民と行う面談内容を、音声認識技術によってリアルタイムでテキスト化したうえで、生成AIがテキストの内容を項目別に整理・要約して、地域資源の紹介に必要な情報を自動的に抽出・分類することができる。
また面談中には、会話の内容を項目別に即座に要約して表示するとともに、未確認の項目をリマインドする機能を備えており、確認すべき項目の漏れを防止可能。これによって、経験年数やスキルに依存せず、限られた時間内で誰でも一定水準の記録作成を行えるとした。
さらに、生成AIを活用し、住民の課題や要望に応じた適切な地域資源の候補を、対話形式で検索・提示する機能を搭載した。地域資源の情報は、施設の名称や所在地、活動内容などの基本的な情報に加え、リンクワーカーや住民からの提供情報も含めた蓄積に対応。加えて、生成AIがこれらの蓄積された情報を活用し、住民に適切な地域資源の候補を提示することも可能で、リンクワーカーが地域資源を把握・紹介する際の情報収集負担を軽減し、住民に対して迅速かつ的確な支援を提供できるとしている。
なお、「とおかまち健康の処方箋」のリンクワーカー担当者に開発機能を評価してもらったところ、「面談記録作成や確認の業務を1/3以下に軽減できる可能性がある」とのコメントを得たとのこと。そこで、9月からの特定保健指導に関わる面談業務において、レポート作成支援機能を試行導入し、特定保健指導の対象者と保健師との面談において、生活習慣のアセスメントと行動目標の設定を記録し、リンクワーカー業務支援システムの利用による業務負荷低減、確認漏れの防止、記録の均一化に関わる評価を実施する。
今後は、十日町市での試行導入を通じて、さらなる機能改善や他地域への展開を進めるとともに、健康・医療・介護・福祉分野への社会的処方の実践・普及を推進し、持続可能な未来型健康社会の実現に貢献するとしている。