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アドビ、AIエージェント連携基盤と複数のエージェントを一般提供開始

 アドビ株式会社は23日、AIエージェントの連携基盤「Adobe Experience Platform Agent Orchestrator」と、その上で稼働する「Product Support Agent」および「Data Insights Agent」という2種のAIエージェントの一般提供を開始した。

 これに伴い、同社は説明会を開催。アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションコンサルタントの山下宗稔氏は、AIが予測型からエージェント型へと進化しているとし、「従来の予測型AIは、過去のデータを活用して未来を予測するもので、統計学や機械学習の技術に基づいている。近年進歩を遂げた生成AIは、既存データから学習した結果に基づき、質問への応答や画像生成など目的に応じて新しいコンテンツを提供している。そこからさらに発展したエージェント型AIは、対話を通じて質問者の意図を理解し、目的達成のためにアクションを実行できることが特徴だ」と、AIの進化を解説した。

アドビ デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションコンサルタント 山下宗稔氏
予測型AIからエージェント型AIへ

 そしてその上で、「エージェント型AIを活用して顧客体験を向上させる流れは今後も変わらない。だからこそ当社もエージェント型AIであるAdobe Experience Platform Agent Orchestratorを提供する」と、リリースの背景を語った。

 アドビでは、複数のエージェントが主体的にオーケストレーションできるプラットフォームをエージェント型AI(Agentic AI)と定義し、特定の機能を持つAIの単体モジュールのことをAIエージェント(AI Agent)と定義している。つまり、Adobe Experience Platform Agent Orchestratorがエージェント型AIで、Product Support AgentとData Insights AgentがAIエージェントということになる。

 AIエージェントは単独で動作するのではなく、Adobe Experience Platform Agent Orchestratorを通じて、異なるワークフローやアプリケーション、システムをまたいで連携し、顧客体験のライフサイクル全体にわたって価値を提供する。

今回リリースしたAdobe Experience Platform Agent Orchestratorと、Product Support AgentおよびData Insights Agentの位置づけ

 AIエージェントのProduct Support Agentでは、ソリューション上で製品について質問できるほか、製品バグ調査のチケットなどサポートケースを作成したり、そのケースの進捗状況を確認したりできる。

 具体的な機能のひとつに、クイックトラブルシューティングヘルプがある。これは、エキスパートが作成したドキュメントを使用し、一般的なサポートの質問に迅速に回答する機能だ。また、サポートケースを作成する機能も備わっており、ソリューション上で直接サポートケースを開始できる。サポートケースはAIが追跡し、ソリューション上でステータスが確認できるため、問い合わせの必要もない。

Product Support Agent

 山下氏は、Product Support Agentの利点について、「自然言語での対話によって診断やサポートが得られ、解決までの時間が短縮できる。また、ケースのステータスがすぐに確認できるため、ユーザーエクスペリエンスが向上する」としている。

 今後Product Support Agentには、画像や動画などマルチモーダルコンテンツへの対応や、問題をリアルタイムで診断し修復する機能、主要なビジネスイベントのワークフローを自動的に設定しパフォーマンスを監視する機能、違反や異常をプロアクティブに監視する機能などが追加される予定だ。

 Product Support Agentは、11月30日まで誰でも使用できる。それ以降については現在検討中だという。

Product Support Agentのロードマップ

 もうひとつのAIエージェント、Data Insights Agentは、自然言語ベースで自動的にレポートを生成できるエージェントだ。ユーザーとの対話的なプロンプトを通じ、AIエージェントが顧客データとジャーニーデータを自動分析し、インサイトを提示する。アドビが独自開発した推論エンジンにより、マーケティング分析の専門知識を活用し、ユーザーの意図を理解するという。

Data Insights Agent

 現在リリースされているのはデータ分析と可視化の機能のみだが、今後はデータ要約スキルや根本原因分析スキル、次のアクションを推薦するスキル(レコメンデーションスキル)などの機能も登場する予定だ。

Data Insights Agentの今後のビジョン

 これらAIエージェントの基盤となるのが、Adobe Experience Platform Agent Orchestratorだ。推論エンジンやカスタマーエクスペリエンスモデルなどをベースに、さまざまなエージェントをこの基盤上で実行できる。今回リリースされた2つのエージェントのほかにも、Site Optimization AgentやData Engineering Agent、Content Production Agentなど、9つのエージェントがリリース予定だ。

 将来的には、同基盤上で外部のAIエージェントも管理できるようになるという。現時点でマルチベンダー対応はリリースされていないが、すでにマイクロソフトのAIエージェントに対応する予定であることは発表済みだ。

 山下氏は、「アドビでは、エージェント型AIによって、人間の役割を広げ、仕事を再定義し、顧客エンゲージメントを進化させることを目指している」と語る。「エージェント型AIにより、人間が戦略的なオーケストレーションや創造的な活動、倫理的な監視といった領域に集中できるようにしたい。また、ワークフローを効率化し、より効果的で革新的な仕事の方法を創り出す『リシェイプワーク』を実現する。そして、顧客が受け取るメッセージや情報の質を向上させ、顧客エンゲージメントを進化させていく」と、山下氏は変革への意欲を見せた。