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TOPPAN、生成AIを活用して人物の姿かたち・声をリアルに再現する「デジタル分身サービス」を提供

 TOPPAN株式会社は20日、現存する人物の姿かたち・声をリアルに再現し、本人さながらの対話を可能にした分身をデジタル空間上に作成する「デジタル分身サービス」を提供開始した。

 デジタル分身サービスは、TOPPANが保有する見た目の再現技術や独自の音声再現AIモデルなどを用いて、人物の姿かたち・声をリアルに再現するだけでなく、TOPPANのデータ管理に関するノウハウを活用して、本人に関する膨大なデータをAIに学習させることで、本人さながらの対話が可能な分身アバターを作成できるサービス。

 TOPPANグループが5月に提供開始した、社内外のAI活用をグループ横断で推進し、企業におけるマーケティング業務のAI Powered化を実現するサービスの一環として提供する。

マーケティング分野における「デジタル分身サービス」の概念図

 TOPPANでは、情報発信の手段が多様化する一方で、少子高齢化やデジタル化の進展により、世代間の知識や経験の継承、マーケティング領域における効果的なコミュニケーションが課題となっていると説明。コロナ禍を契機に、オンライン上で人の想いや語りの力を伝える重要性も高まっており、こうした中で、生成AI技術の進化により、人物の姿かたちや声など“人らしさ”を備えたデジタル分身の再現が可能となり、継承やマーケティング課題の解決に向けた新たなコミュニケーション手段として期待されているという。

 しかし、特定の個人の知識・経験などの情報をデジタル分身に反映することは難しく、実現のためには、本人が有する膨大な知識・経験に関するデータを構造化し、AIに学習させる必要があり、生成AIに関する専門知識や高度な技術が求められると説明。そこで、TOPPANがこれまで培ってきた生成AI活用における知見と、デジタル空間上に人物の姿かたちを再現する技術・ノウハウを合わせることで、本人さながらの対話を実現した、リアルかつインタラクティブな分身を作成できるサービスとして、デジタル分身サービスを提供するとしている。

 デジタル分身サービスは、TOPPANがノウハウとして蓄積してきたさまざまな表現技術を活用し、対象者の顔をリアルに再現する。姿かたちだけでなく、人間らしい動きや表情も再現した、表現豊かなコミュニケーションを支援する。

 サービスでは、収録した音声サンプルを元に音声再現AIモデルを生成し、声色や声質をリアルに再現する。音声サンプルの収録はスタジオでの本格的な収録と併せて、スマホアプリによる簡易的な収録も可能。多言語対応エンジンの活用により、その人の声色や声質による多言語の発話も可能にし、世界中のユーザーとコミュニケーションを行えるようになる。

 本人に関するテキストや動画、画像など多様なデータを、TOPPANのデータ管理に関するノウハウを活用して構造化し、AIに参照させることで、本人の知識・ノウハウに基づく対話を実現する。さらに、本人の話し方や口癖など細部まで再現することで、親近感を持って対話を行うことを可能にする。

「デジタル分身サービス」のイメージ

 デジタル分身の活用シーンとしては、インタラクティブな会話により、単なる映像コンテンツや音声メディアの再現とは異なる、営業商談・顧客コンタクトや教育・文化の継承を実現し、企業の効果的なマーケティング・ブランディングを可能にするといった例を想定している。

 AIを活用した分身による同時コミュニケーションの例では、本人が不在時の対応や、本人だけでは対応しきれない多人数との同時対応、窓口接客業務など、業務効率化を支援する。

 会社理念の継承の他、トップセールスのノウハウを活用した営業商談・顧客コンタクトの例では、経営者や創始者の知識・思考を基に、企業の経営ビジョン・行動指針を体現したプレゼンテーション、相互コミュニケーションを実現。また、トップセールスのノウハウを反映することで、営業商談やコンタクト領域でより高い顧客満足度の追求を可能にする。

 多言語対応によるグローバルな情報発信の例では、本人の代わりに多言語でメッセージを発信し、グローバルにおける教育・文化の継承や企業のブランディングコンテンツ・研修動画など、本人が話せない言語でも情報発信を可能にする。

 対話体験の提供の例では、エンターテインメント分野におけるファンサービスなど、本人との対話に価値がある場面において、本人の代わりに対話体験を提供する。

 デジタル分身サービスの価格は、メッセージ型動画が1本150万から、対話型アバターシステムが1件500万から。

 TOPPANは、デジタル分身サービスにより、さまざまな人物をデジタル空間に再現し、世界中の人とのつながりや新しいコミュニケーションの可能性を追求するとともに、ノウハウの継承や人材不足の解消におけるコミュニケーションを支援するAIサービスの構築を行う。また、TOPPANデジタルが提供するアバターの真正性を証明する基盤「AVATECT」とも今後連携をすることで、サービスが安心して活用できる環境を整備していく。

 こうしたTOPPANグループが培ってきた技術・ノウハウと合わせて活用することにより、デジタル分身サービスとそれに関連したサービスの提供を推進し、2027年度末までに10億円規模の売り上げを目指すとしている。