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日立、2016年上期決算は増収増益、調整後営業利益は過去最高を更新

 株式会社日立製作所(以下、日立)は28日、2015年度上期(2015年4月~9月)の連結業績を発表した。

 売上収益は前年同期比5.6%増の4兆8068億円、税引前利益は同1.4%減の2546億円、当期純利益は同17.0%減の975億円となった。なお、同社では2015年度からIFRSを適用している。

 日立の中村豊明代表執行役副社長兼CFOは、「売上収益では、情報・通信システム、高機能材料、オートモーティブシステム、社会・産業インフラ部門など、全9部門のうち7部門で前年同期実績を上回った。また、調整後営業利益は102億円増の2740億円となり、過去最高を更新した。ここでも6部門が前年実績を上回っている。コア・フリー・キャッシュ・フローは888億円となり、これも過去最高になった」と総括した。

 上期のHitachi Smart Transformation Projectの効果は560億円に達しており、2015年度通期では1100億円の達成を目指すという。

四半期連結損益計算書
日立の中村豊明代表執行役副社長兼CFO

 国内売上収益は前年並みの2兆4161億円、海外売上収益は同12%増の2兆3906億円。海外売上比率は50%となった。第1四半期の52%に比べると海外比率が減少したが、上期としては前年同期の47%から3ポイント上昇。「上期としては過去最高の比率を更新した。2015 中期経営計画をスタートした2012年度には41%の海外売上比率だったものが、ここまで高まってきた。北米の売上構成比が13%、ASEAN/インドが12%、中国が11%とバランスよく事業を拡大している」という。

国内・海外売上収益

情報・通信システムは増収増益

 事業グループ別における情報・通信システムの売上収益は、前年同期比6%増の1兆3406億円、調整後営業利益は79億円増の629億円、EBITは同50億円増の585億円となった。
 事業部門別での情報・通信システム事業の売上収益は、前年同期比7%増の1兆1億円、調整後営業利益は前年同期から29億円増の499億円。そのうち、システムソリューションの売上収益は前年同期比8%増の6170億円、調整後営業利益は154億円増の370億円。プラットフォームの売上収益は同1%増の4884億円、調整後営業利益が133億円減の107億円となった。

 また、ストレージソリューション事業の売上収益は、前年同期比13%増の2460億円となった。

 売上収益は、金融システム部門を中心にシステムソリューション事業が好調に推移したことに加えて、ストレージソリューション事業が為替影響により増収となった。一方で、EBITは、プラットフォーム事業が通信ネットワーク分野における国内通信事業者の設備投資抑制の影響を受けたことや、構造改革費用を計上したことなどが減益要素となったものの、システムソリューション事業の好調により増益になった。

事業部門別の売上収益

 中村副社長は、「金融分野のほか、マイナンバー関連の商談が発生している公共部門が好調。国内のIT投資環境は、相当変わってきたという手応えがある。これまでは、事務の効率化などが中心だったが、戦略的にITを活用するといった例が増えており、人工知能やビッグデータが注目されている。日立としても、ここに力を入れている。これまでは店内のレイアウトなどは、人の勘でやっていたものを、人流解析を導入することで、どこに店員を配置すれば売り上げが高まるのか、あるいは来店客の満足度をあげられるかといった提案が進んでいる。だが、コンサルティングの人員が足りないという課題もある。こうした提案は、次期中期経営計画のなかで刈り取れると考えている」などとした。

 また、「社会イノベーション事業は、フロント強化による顧客との協創を推進。協創ビジネスの創出に向けては、30顧客へのアプローチを実施し、人工知能やPentahoの技術などを共通プラットフォームとして活用。エネルギーマネジメントや人流解析などのテーマで協業を推進している」としたほか、「2012年度には30%だったサービス事業の売上比率を、2015年度通期では、これを38%にまで拡大する見通しである。サービス事業の一例としては、人工知能技術であるHitachi AI Technologyを活用した業務改革サービスを、今年11月から販売を開始する予定であり、すでに、JALや三菱東京UFJ銀行での実証実験を開始している。業務データや人間行動データを分析することで、業務改善を支援できる」とした。

 さらに、Pentahoの技術を中核とした共通プラットフォームによる展開を強化する姿勢を示し、「世界180カ国、1500社以上の顧客基盤と、ビッグデータの迅速な統合、分析、可視化を実現する技術を中核にして、日立グループ全体で1000人規模の共通プラットフォームの構築、提供体制を整えた。10月からはPentahoソフトウェアを活用したビッグデータ利活用のための事前検証サービスの販売を開始。2015年末からは本格的なビッグデータ利活用システムを提供していくことになる」と述べた。

 一方、情報・通信システム事業グループ以外の事業グループ別業績は、電力・インフラシステムの売上収益は前年同期比2%増の1兆8928億円、調整後営業利益は76億円減の604億円。建設機械は売上収益が前年同期比6%減の3650億円、調整後営業利益は118億円減の159億円。高機能材料の売上収益は前年同期比14%増の8005億円、調整後営業利益は78億円増の606億円。オートモーティブシステムの売上収益は前年同期比10%増の4901億円、調整後営業利益は22億円増の271億円。金融サービスの売上収益は前年同期比4%増の1812億円、調整後営業利益は50億円増の235億円となった。

 また、部門別業績は、社会・産業システムの売上収益が前年同期比6%増の9500億円、調整後営業利益が同80億円減の167億円。電子装置・システムの売上高は同4%増の5494億円、調整後営業利益は同31億円増の316億円。

 建設機械の売上高は同6%減の3650億円、調整後営業利益は同118億円減の159億円。高機能材料は売上高が同14%増の8005億円、調整後営業利益は同78億円増の606億円。オートモーティブシステムの売上高は同10%増の4901億円、調整後営業利益は同22億円増の271億円。生活・エコシステムの売上高は同4%増の3932億円、調整後営業利益は同26億円減の119億円。

 その他サービス(物流・サービスなど)の売上高は前年並みの6230億円、調整後営業利益は同106億円増の271億円。金融サービスの売上高は同4%増の1812億円、調整後営業利益は同50億円増の235億円となった。

事業部門別の売上収益

通期見通しは変更せず

 2015年度通期業績見通しは、公表値を据え置き、売上収益が前年比1.8%増の9兆9500億円、税引前利益は同15.6%増の6000億円、当期純利益は同42.5%増の3100億円を見込んでいるが、非継続事業当期損失については、7月29日公表値の40億円の赤字から、140億円下方修正し、180億円の赤字とした。

 「米国では個人消費が継続して伸長し、欧州も緩やかな回復基調が持続しているものの、中国の投資、生産が低迷。東南アジアでも中国の経済成長鈍化の影響を受け、不透明な部分もある」と、見通しを据え置いた見通しを述べたほか、「中国の影響はあるが、リーマンショックの時のように受注がなくなるというわけではない。通期の海外売上比率50%は達成できると考えている」とした。

2016年3月期連結決算の見通し

大河原 克行