ニュース

東大発ベンチャーのIzumoBASE、秘密分散機能搭載のSDS製品「IzumoFS」を開発

高セキュリティのスケールアウトNASを容易に実現

IzumoBASE 代表取締役の荒川淳平氏

 IzumoBASE(イズモベース)株式会社は9月30日、世界初となる秘密分散機能を搭載したSoftware-Defined Storage(SDS)製品「IzumoFS」(イズモエフエス)を開発したと発表した。

 東大発のSDSスタートアップ企業として2012年に設立したIzumoBASEは、「ストレージを真のインフラにする」ことを目標に掲げ、次世代ストレージソフトウェアの開発に取り組んでいる。今回、IzumoBASE 代表取締役の荒川淳平氏が、東大大学院で「ストレージ仮想化および分散ストレージ」について研究を重ね、その成果を基に、秘密分散技術を搭載した世界初のSDS製品「IzumoFS」を開発したという。

 「IzumoFS」は、スケールアウトNASをソフトウェアで実現する次世代SDS製品。汎用Linuxサーバー上で動作するソフトウェアとして、複数サーバーを束ねたスケールアウトNASを容易に構築することができる。拠点をまたいだ広域クラスタリングをサポートしているため、3台からのスモールスタートで手軽にディザスタリカバリ(DR)対策を実現できるという。

 「従来までのストレージは、ベンダー独自のOS、チップ、筐体で構成される巨大で高価な専用装置が必要だった。そのため、筐体故障時の影響が甚大、容量増強にはサービス停止と買い換えが不可欠、専門知識をもった運用・管理者が必要などの問題を抱えていた」と、荒川氏は、従来型ストレージの問題点を指摘する。

 「これに対し、SDSは、安価な汎用サーバーとソフトウェアでストレージを構築する仕組みとなっているため、ベンダーに依存することなく、筐体故障の影響も受けることがない。また、サーバーを追加するだけで、容量と性能を無停止で増強でき、統合された仮想化ストレージとして容易に運用・管理することができる」と、SDSのメリットを訴えた。

「IzumoFS」の秘密分散技術

 今回開発した「IzumoFS」は、こうしたSDSのメリットに加えて、荒川氏の研究を基にしたさまざまな独自機能が搭載されているのが特徴だ。そして、その最大の特徴となるのが、世界初となる秘密分散技術の搭載だという。

 「秘密分散技術は、秘密にしたい情報を保護するためのセキュリティ技術のひとつ。『IzumoFS』では、秘密分散方式として、しきい値法を採用している。具体的には、リアルタイムにデータを一定のピースに分割し、各ノードに均等格納する。そして、分割したピースが一定数集まらなければ、データを復元できない状態にする。これにより、万が一、サーバーが盗難されても、格納データは部分的にも解読することが不可能となる。また、サーバーが故障した場合には、一定数のピースが集まれば、無停止でサービスを継続することができる」(荒川氏)と、秘密分散技術の仕組みについて説明した。

 また、「IzumoFS」の独自機能として、インライン重複排除機能を標準で提供。データの書き込み時に、リアルタイムにデータ中の重複しているブロックを削除する。荒川氏は、「これによって、サーバーに格納するデータ量を数分の1から数十分の1に削減することが可能となり、高い容量効率とキャッシュヒット率を実現することができる」としている。

 このほか、マルチプロトコルに対応し、各ノードがCIFS、NFS、iSCSIを直接扱うことができるため、特定のプロトコルに対応したゲートウェイは不要。純粋なP2Pアーキテクチャによって、単一障害点となるゲートウェイを完全に排除したシンプルな構成が可能となる。

 構築・運用面については、インストールと運用の簡素化を徹底的に追求。わずか2ステップ60秒で簡単にインストールできるとともに、管理GUIの刷新により運用の簡素化とコストの大幅削減を実現している。

マルチプロトコル対応
「IzumoFS」の管理画面
「IzumoFS」の適用分野

 「IzumoFS」の適用分野としては、「クラウド/VDI基盤」、「広域ファイル共有」、「ビッグストレージ」を挙げており、今後特に個人情報保護が重要視される医療・行政、およびデータ量が膨大化する映像業界に向けた拡販展開に注力していく考え。

 なお、現在パートナー企業として、クリエーションライン、ネットワークバリューコンポネンツ、ユニアデックスの3社と協業しており、これらのパートナー経由で販売を行う予定。保守サポートは、ユニアデックスとともに提供し、全国24時間365日の日本語サポート体制を整えている。

唐沢 正和