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「未来的ではなく、今日すぐに実現できる」――マイクロソフトが考えるIoTの姿

 「IoTについては、具体的に何をすればいいのか、どうすれば実現できるかといった質問を受けることが多いが、実は未来的なものではなく、今日すぐにできるものだ。ビジネスで使っている既存のインフラ、デバイスを使って、ビジネスインパクトへつなげていける」――。

 日本マイクロソフト株式会社は15日、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)に関する説明会を開催。その中で、米Microsoft コーポレートバイスプレジデント クラウド&エンタープライズ マーケティング担当の沼本健氏はこのように述べ、Microsoftでは“現実的なIoT”を提供できると主張した。

 IT業界でも明確な定義が定まっていないIoTだが、Microsoftでは「Internet of Your Things」、つまり企業の身近にあるものを使って実現できるものだと考えているという。沼本氏はこれを、「森羅万象ではなく、例えばリテールならPOS、医療機関では患者のモニター、製造業ではセンサーやマニファクチャリングオートメーション、といったように、既存のデバイス、基盤を有機的に活用していく」と説明する。

Microsoftでは、IoTをInternet of Your Thingsととらえているという
米Microsoft コーポレートバイスプレジデント クラウド&エンタープライズ マーケティング担当の沼本健氏

 その上で、Microsoftならではの強みとして、クラウド、ネットワークとゲートウェイ、多様なデバイスサポート、データ解析などを挙げるが、中でもやはりクラウドが一番の差別化要因になっている。それは、データを引き出す先がさまざまな場所にあるから。バラバラのデータから何かを導き出すためには、器としてのクラウドが非常に重要になる。

 しかもMicrosoft Azureでは、予測分析クラウドであるAzure Machine Learningで機械学習も提供されているなど、単なる器として以上の役割が果たせるという。ただし、そこで利用する知見については、Microsoftが1社だけでカバーできるものではないため、各業種・業態で実績のあるパートナーと、エコシステムを構築するとのこと。

 これを実現した1例が、竹中工務店と共同で進めている次世代建物管理システム。同社 情報エンジニアリング本部長の後神洋介氏は、「従来のBEMS(ビルエネルギー管理システム)は、多種多様なメーカーのシステムがあるため、一棟のビルで管理システムが完結していたが、クラウドにデータを吸い上げれば、そこで“翻訳”して管理制御ができる。そのための基盤として、Azureを使ったクラウド基盤『ren.Cloud』を整備した」と、これを説明した。

 また、FA制御機器のメーカーである三菱電機、オムロンとは製造業向けの予兆診断サービスで協業するほか、日立ハイテクとは、医療機器/産業機器向けの予兆診断サービスを提供するとのこと。日立ハイテクの新事業創生本部 コーポレートプロジェクトマネージャ兼IoT担当部長の田辺徹氏は、「クラウド環境の構築が容易であること、ツール群が提供されていること、スケーラブルに拡張できること、標準で地理的冗長性が担保されていること」の4つを、メーカー側から見たMicrosoft Azureの強みとして語った。

Microsoft Azureを利用し、ビル管理クラウドの基盤を構築するとのこと
医療機器の予兆診断サービスの概念図

 一方でIoT分野での課題としては、組み込みとITの双方に通じた技術者が少ないことが挙げられるとのこと。それを解消するために日本マイクロソフトでは、若松通商と共同で、組み込み/クラウド開発を同時に学習できるIoT Kitを11月から販売する予定。こうした施策を通じて、国内でのIoTエコシステムの拡充を図るとしている。

組み込みとクラウド開発を同時に学習できるIoT Kitを提供する予定だ

石井 一志