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理研、新スパコンを4月に稼動~ナノ物質の構造・機能の解明に

 富士通株式会社は26日、独立行政法人理化学研究所(以下、理研)放射光科学総合研究センター(以下、理研)の新スーパーコンピュータシステムが完成したと発表した。4月より稼動を開始する。

 新システムの中核には、富士通製スパコン「PRIMEHPC FX10」が採用され、4ラック、384ノード構成で、理論演算性能は90.8テラフロップスを実現する。このほか、HPCミドルウェアとして「Technical Computing Suite」、ログインノードとして「PRIMERGY RX300 S8」×11台、ストレージとして合計容量600TBの「ETERNUS DX80 S2」、高性能スケーラブルファイルシステムソフト「FEFS」も導入されている。

PRIMEHPC FX10

 理研は現在、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」から得られる膨大な実験データをスパコン「京」で解析することを計画し、ナノ物質の構造や機能の解明に取り組んでいる。SACLAでは、世界最短波長(0.6ナノメートル)かつ10フェムト秒(100兆分の1秒)という短パルスの強力なX線レーザー光を発振させられるため、原子や分子の瞬間的な動きを観察することが可能。これにより、原子・分子レベルでの物質の構造や性質を調べられるという。

 SACLAから得られる実験データは、1実験あたり最大100テラバイトに達する膨大なもので、詳細な解析には大規模な計算環境が必要なことから、「京」を利用することが計画されている。今回のPRIMEHPC FX10は、「京」による計算の前に行う解析システム向けに導入された。

 PRIMEHPC FX10は「京」で利用するアプリケーションと互換性があるため、実験データの特性に合わせた解析ソフトの開発や、「京」を利用した詳細解析にかけるターゲットの絞り込みが可能となる。例えば、SACLAで取得される100万枚にもおよぶ2次元パターンを分類する解析では、既設のスパコンでは2週間の解析時間がかかるところを「京」を利用することで、4時間にまで短縮できる見込みという。

川島 弘之