ニュース

日本IBM、エンタープライズ・クラウド戦略の“肝”を説明

SAP Business Suiteのマネージドサービスを提供へ

熊本義信氏

 日本IBMは24日、スマーター・クラウド事業戦略説明会を開催した。

 登壇した理事 スマーター・クラウド事業部長の熊本義信氏は、企業のクラウド戦略に影響を与える6つの重要な特性として「コストの柔軟性」「ビジネスの拡張性」「市場への適用性」「複雑な運用からの解放」「ユーザーの嗜好情報の蓄積」「エコシステムとの連続性」を挙げた上で、「既存のアプリをクラウドで稼働させる“Cloud Enabled”、クラウドの特性に対応したアプリを開発する“Cloud Centric”の2つのアプリ展開モデルを進める。それがIBMのエンタープライズ・クラウド戦略となる」と説明した。

 具体的なクラウド・サービス・モデルとしては、プライベートクラウドを構築するためのシステム製品「PureSystems」、IaaSサービス「SmarterCloud Enterpirse+(以下、SCE+)」、よりシェアード方式に近いIaaS「SmarterCloud Enterpirse(以下、SCE)」の3製品・サービスが軸となる。

 企業によってはIT資産のすべてをプライベートクラウドで運用したいところがあるかもしれない。逆にシェアードクラウドで運用したいところもあるだろう。しかし「ほとんどのお客さまは業務のサービスレベルや可用性に応じて、それらを使い分けるハイブリッドクラウドを望んでいる」と熊本氏。プライベートクラウドからシェアードクラウドまでカバーする3製品・サービスを取り揃えているのは、そうしたニーズに応えるためだ。

 さらに「例えば、最初はシェアードクラウドで始めて、事業の好調さなどに応じてプライベートクラウドに移行する、といった双方向の移行をシームレスに実現するような製品・サービスも今後リリースを予定している」とした。

2つのアプリ展開モデルを進める
クラウド・サービス・モデル

 これらを踏まえて2013年の重点領域をまとめると、製品レベルでは「企業の基幹業務での利用に適した水準のクラウドサービスを提供する。またパートナーとの協業によりポートフォリオを拡充し、業種別クラウドソリューションも展開する」と説明。

 運用レベルでは「業務改革計画からインフラ実装までの幅広いクラウド関連サービスを提供する。また、先ほど申し上げたクラウド間のシームレスな移行に対応する、新しいアプリの開発手法に対応した仕組みを構築していく」。

 それらを実現するため、組織レベルでは「最適な提案・導入・サポートを行う全社体制を敷く。また、専任の営業体制を強化する」とした。

 その一環として、説明会当日にSAPアプリケーションをPaaSとして提供する「IBM SmarterCloud for SAP Applications R1.1」を発表した。2月8日より提供する。

2013年の重点領域
SAPアプリケーションをPaaSとして提供

 これは「SAP Business Suite」を用いた業務システムを構築するための統合基盤を、構築支援や運用管理サービスとともに提供する企業向けのクラウドサービス。クラウド基盤とそのサービス管理やセキュリティ機能を提供するマネージド・クラウド・プラットフォーム「SCE+」を活用し、「SCE+」の特徴である仮想サーバー・OS・ミドルウェア・ストレージ・ネットワークなどインフラ層の運用・管理機能に加え、その上で稼働するシステムの運用やデータベースの管理などのサービスを統合することで、SAPアプリケーションの高い可用性と業務継続性を実現する。

 熊本氏は「IBM自身がグローバルで最大級のSAPユーザーであると当時に、テクノロジー・サービス・ホスティングなどSAPのさまざまな種類のCertified Partnerとして、多くの顧客に対するSAPアプリケーションシステムの構築・運用実績がある。また、IBMクラウドサービス上でSAPアプリケーションの提供や導入支援を行うスキルや能力について認定を受けている。新サービスで提供するのは、こうしたIBMの経験・知見を生かしたもの」と説明した。

 また、SCEおよびSCE+においても機能強化を発表。SCEは99.9%のSLAを提供するクラウドプラットフォームとして2011年より、SCE+は企業の業務システムに必要とされる運用・管理機能と仮想マシンレベルまでの信頼性を実現するマネージドクラウドサービスとして2012年より提供しているサービスだが、今回の新版では、それぞれの機能・メニュー・サポートを強化し、さらに幅広い業務に対応し、かつ安心して利用できるようにしたという。

 具体的にSCE R2.2では、Windows関連機能を強化。また、従来の2倍となる32GBメモリを搭載する新メニューを追加。SCE+ R1.1では、データベースのバックアップ管理における機能拡張を行うなど、ミドルウェアに対するマネージドサービスを強化し、企業のシステムに要求される信頼性の高い運用や、既存環境からの容易な移行を支援するとした。

(川島 弘之)