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IIJ、新コンセプト「DXP」で企業のマルチクラウド利用をサポート DXの実現を支援

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は16日、これまでの企業戦略「デジタルワークプレース(DWP)」を拡張したコンセプト「DXP(DX Platform)」を掲げ、それを具現化するサービスやソリューションを体系づけた「マルチクラウドMSP」を発表した。

 マルチクラウドMSPでは、顧客企業のマルチクラウド利用の計画立案から導入、運用までのライフサイクルにわたり、クラウド戦略を支援する。

 IIでは、クラウド導入・利用を成功させる要素である「ビジネス戦略・計画」「組織・人材」「導入(計画・構築・移行)」「環境」「オペレーション」「ガバナンス」「セキュリティ」の7つの要素を、「IIJ CAF(Cloud Adoption Framework)」としてモデル化。マルチクラウドMSPでは、この7つの各領域で、コンサルティングや、インテグレーション、サービスとソリューションを順次提供していく。

「デジタルワークプレース(DWP)」を拡張したコンセプト「DXP(DX Platform)」
マルチクラウドMSP
マルチクラウドMSPのサービスやソリューションを順次提供

 さらに、このマルチクラウドMSPに含まれる新サービスとして、同日、「IIJ統合運用管理サービス オブザーバビリティ」と、「IIJデータ可視化ソリューション with Splunk Cloud Platform」が提供開始された。

 「IIJ統合運用管理サービス オブザーバビリティ」は、マルチクラウドの統合運用サービス「IIJ統合運用管理サービス(UOM)」の中の、オブザーバリティ機能の新サービスだ。監視対象をIaaSだけでなくPaaSやアプリケーション領域に拡大するとともに、サービス状況を横断的に監視してユーザー視点で可視化できる。なお、Splunk社の「Splunk Observability Cloud」をエンジンとして採用している。

 サービスメニューと料金プランは、「ベーシック」(月額4500円~)、「スタンダード」(月額1万5000円~)、「プレミアム」(月額1万9500円~)、「ブラウザ外形テスト」(月額3500円~)の4プランに分かれる(月額費用は1契約あたりの税別額、初期費用は0円)。

 「ベーシック」はインフラ監視・外形監視とコンテナネットワーク監視に対応、「スタンダード」はそれに加えてアプリケーション監視に対応、「プレミアム」はさらにリアルユーザー監視とブラウザ外形テストに対応する。「ブラウザ外形テスト」プランはブラウザ外形テストのみに特化したプラン。

「IIJ統合運用管理サービス(UOM)」の新機能「オブザーバビリティ」
「UOM オブザーバビリティ」のサービスメニューと料金プラン

 一方の「IIJデータ可視化ソリューション with Splunk Cloud Platform」は、IIJサービスやマルチクラウドにわたるさまざまなログを可視化するサービスである。Splunk社の「Splunk Cloud Platform」をエンジンとしている。IIJのデジタルワークプレース(DWP)サービス群に含まれる各サービスのログや、顧客のオンプレミスシステムのログ、Splunk Cloud Platformが対応する各種クラウドサービスのログを取り込んで、一元的に可視化できる。価格は個別見積もり。

 なお、1月時点で対応するDWPサービスは、IIJマネージドファイアウォールサービス、IIJセキュア Web ゲートウェイサービス、IIJセキュアエンドポイントサービス、IIJ IDサービス、IIJディレクトリサービス for Microsoftの5つ。

「IIJデータ可視化ソリューション with Splunk Cloud Platform」

企業のDXに向けてDWPにマルチクラウドを加えて支援する「DXP」

 同日開催された記者説明会では、IIJ 取締役 専務執行役員 ビジネスユニット長の北村公一氏が、DXPとその背景について説明した。

 ITの爆発的な発展により、IIJの顧客企業において、オフィス機器のデジタル化(OA)だけでなく、ネットショッピングや銀行のダイレクトオンラインなどのように、ビジネスそのものにITが入ってきた。これがDXと呼ばれている。

 一方で、顧客企業はDXの推進に苦労しており、過半数はペーパーレスやRPA、レガシーシステム移行など、守りのDXにとどまっていると北村氏は言う。そしてその原因として、DXにはさまざまなクラウドサービスを目的に応じて組み合わせるマルチクラウドが欠かせないが、それが難しい点があると指摘する。

 そこで、IIJがこれまで提供してきたデジタルワークプレース(DWP)を拡張して、企業のDXを支援する「DXP」を、IIJの中期戦略の中核に据えて開始すると北村氏は語った。

IIJ 取締役 専務執行役員 ビジネスユニット長北村公一氏

 また、IIJ クラウド本部副本部長 兼 ネットワーク本部副本部長 兼 DXP戦略室長の吉川義弘氏は、企業のIT部門(情シス部門)の状況を中心に、DWPとマルチクラウドMSPについて説明した。

 吉川氏は、IT部門がいま求められていることは、事業部と共同してDXを推進する役割へと変化することだと主張した。

 IT部門の主な役割はOAの領域の仕事で、クラウドを活用したDXは事業部門主体で進むこと多い。それにより、セキュリティの設定や、IDの扱い、基幹システムとの連携などに課題が残り、さらには事業部門がビジネスや開発に集中できないことにもなると吉川氏は言う。

IT部門がいま求められている変化
IIJ クラウド本部副本部長 兼 ネットワーク本部副本部長 兼 DXP戦略室長 吉川義弘氏

 ただし、クラウド利用にIT部門が入ったときによく見られるパターンとして、ガイドラインを作ったり承認フローを設けたりして、事業部門から見るとボトルネックに感じることがあるという。

 そこで、ガイドラインの文書ではなく、それを機能として落とし込んだ運用基盤を提供することが必要とされていると吉川氏。これにより、事業部門は安心して利用でき、ビジネスや開発に専念できる。IIJではこの基盤を「ガードレール」と呼んでいるという。

 「DX Platform(DXP)」では、このDXを推進するためのプラットフォーム(ガードレール)をIIJがマネージドサービスとして提供する、と吉川氏は語った。

 IIJが提供しているデジタルワークプレース(DWP)では、すべての仕事をネットワークでセキュアかつ快適にできるように、IIJの技術により「エンドポイント」「ID」「ネットワーク」のサービスを提供してきた。これに「マルチクラウド」を加えたのが「DXP」だと吉川氏は説明した。

 さらに、複数のクラウドを使いこなすマルチクラウドでは、デプロイやセキュリティ、運用監視などで、難しさがある。そこで、IIJが持つパブリッククラウドを使った実績をもとにDWPとしてプラットフォームを提供することで、これらの問題を解決すると吉川氏は語った。

ガイドラインを作るだけでは不十分
ガイドラインをベースに実装した基盤(ガードレール)が必要
DXを推進するためのガードレールをマネージドサービスとして提供する「DX Platform(DXP)」
IIJのデジタルワークプレース(DWP)
DWPからDXPへ
マルチクラウドの難しさをガードレールプラットフォームで解決

プラットフォームからビジネスや組織の課題まで、コンサルティング、SI、サービスを提供する「マルチクラウドMSP」

 ただし、クラウドを推進する組織体制や、オンプレミスからのクラウド移行計画、セキュリティポリシーの作成など、プラットフォームの機能だけでは解決できない課題もある。

 そこでIIJでは、ガードレールで対応できる「環境」「オペレーション」「ガバナンス」「セキュリティ」の4つに、「ビジネス戦略・計画」「組織・人材」「導入(計画・構築・移行)」の3つを加えた7要素を「IIJ CAF(Cloud Adoption Framework)」としてモデル化した。

 この7つの各領域で、コンサルティングや、インテグレーション、サービスとソリューションを提供するのが、「マルチクラウドMSP」だ

プラットフォームだけでは解決できない課題
課題の7要素をモデル化した「IIJ CAF(Cloud Adoption Framework)」
7つの課題について、コンサルティングやSI、サービス、ソリューションを提供する「マルチクラウドMSP」

オブザーバビリティの2つの新サービスで、マルチクラウドの運用監視の課題を解決

 マルチクラウドMSPとして既存サービスや新サービスを体系化する中で、今回提供開始されたのが、「IIJ統合運用管理サービス オブザーバビリティ」と「IIJデータ可視化ソリューション with Splunk Cloud Platform」だ。これらについては、IIJ クラウド本部MSP推進部長の福原亮氏が、前述したように説明した。

IIJ統合運用管理サービス(UOM) オブザーバビリティ
IIJデータ可視化ソリューション with Splunk Cloud Platform

 福原氏は、マルチクラウドの運用監視が従来の運用監視と違う課題として、従来の監視では見えないデータがあるという「不足するデータ」と、サイロ化したシステムによる「複雑化する調査手法」の2つを挙げた。

 不足するデータとは、例えばショッピングサイトを例に考えると、ユーザー操作や、それによってアプリケーションがどう動いたかの振る舞い、そのときのPaaSやコンテナの状況についての記録がないことがある。これにより、問題やユーザーの不満があったときに状況を把握できないことになる。

 オブザーバビリティの機能を導入することで、こうしたログやメトリクスをきっちりと取得してデータを可視化し、状況を把握できるという。

 また、サイロ化したシステムとは、マルチアカウントによりシステム全体を見るのが難しいことや、調査データが複数の場所に分散することで障害調査に時間がかかかりこと、インフラとアプリの責任分界点があいまいになることがある。

 これもオブザーバビリティの機能でユーザー操作とトレースやログをひもづけたり、秒単位など短い間隔でログをとることができる。それにより、障害起きたときや、ユーザーの問い合わせがあったときに、ドリルダウンして分析できるという。

 今回2つのサービスが提供開始されたことにより、オブザーバビリティの導入から分析・活用までサポートすると福原氏は語った。

マルチクラウドの「不足するデータ」問題とオブザーバビリティ
マルチクラウドの「サイロ化したシステム」問題とオブザーバビリティ
オブザーバビリティの導入から分析・活用までサポート
IIJ クラウド本部MSP推進部長 福原亮氏