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日本NCRコマース、2024年度は“プラットフォーム”と“AI”にフォーカスした事業戦略を展開

 日本NCRコマース株式会社は5日、2024年度の事業戦略について説明した。

 日本NCRコマース 代表取締役社長の小原琢哉氏は、「2024年は、プラットフォームとAIに徹底的にフォーカスする。リテール、レストラン、デジタルバンキングの領域へプラットフォームとサービスを提供し、業種や業務にフォーカスしたエンドトゥエンドのサービスを通じて顧客体験の最適化を図る」との基本方針を示したほか、画像認識を活用した次世代セルフレジを新たなに展開していく考えを明らかにした。

 また、AIに関しては、画像認識AI、対話型AI、処方型AIを活用。「画像認識することでバーコードを読む必要がなくなったり、店舗の無人化をしたり、対話によって優秀なスタッフを抱えている状況を作り、課題に対する具体的なアクションや解決策を提示することを目指す。実証実験を通じて、日本における具体的なユースケースを確立していく」と語った。

日本NCRコマース 代表取締役社長の小原琢哉氏

 米NCRは2023年7月に企業を分割し、同年10月に、リテール、レストランおよびデジタルバンキングを主要業務とするNCR VOYIX(ヴォイクス)と、ATM事業を主要業務とするNCR ATLEOS(アトレオス)の2社を設立している。

 日本では2023年9月に、日本NCRコマースを新たにスタート。NCR VOYIXの事業領域を担うことになる。なお、NCR ATLEOSが担当するATM事業は、日本では1998年に日本ATM(現SocioFuture)として分社化しており、今回の米国本社の分割において、日本NCRコマースの体制に大きな変更はない。

 米国本社の新社名であるVOYIXは、「Voyage(航海)」と「X」を組み合わせた造語であり、顧客に寄り添って、航海に出ていくという意味と、エクスペリエンスを中心に事業展開すること、店舗によるフィジカルと、新たなデジタルを組み合わせて、新たな顧客体験を実現するという意味があるという。

新生NCR Voyixについて

 日本NCRコマースの小原社長は、分社化した背景として、「米国では140周年の歴史を持ち、日本では2月に104年を迎えた。そのNCRが昨年秋に大きな一歩を踏み出した」と前置きしながら、「NCRは、ATM事業では世界トップシェアを持つが、キャッシュレス化の流れにより、安定成長の市場である金融市場をしっかりとサポートすることが中心になる。それに対して、リテールやレストラン市場では、デジタル化にかじを切る動きが加速しており、顧客体験にも大きな変化がある。デジタル化に向けた投資やスピードも異なる。そこで分割し、別会社として事業を進めることになった。事業規模は半分ずつで分かれている」と説明した。

 NCR VOYIXは、POSソフトウェア、セルフレジ、デジタルバンキングで世界トップシェアを持っており、世界大手小売業の67%、大手外食産業の80%、トップ15銀行のうちの13銀行が採用。5万5000店以上が同社のプラットフォームを活用し、約30万店が利用。280万人以上がデジタルバンキングに登録しているという。

グローバルマーケットでの圧倒的なプレゼンスを日本での事業戦略へ最大限に活用

 ウォルマートでは、セルフレジを大量導入し、11万人の社員を付加価値が高い業務にシフトする店舗改革を推進。スターバックスでは、店舗のマネージドサービスを導入し、IoTとAIにより、機器の予兆保全などにも活用。継続的な店舗運営を実現しているという。

 「小売店舗では消費行動のすべてに対するカスタマジャーニーを提供している。日本の数年先を行く欧米の最先端企業で培った経験を日本の顧客に紹介し、ベストプラクティスを提供する。グローバルマーケットでの圧倒的なプレゼンスを、日本での事業戦略へ最大限に活用する。また、国内最大手小売業への導入、50銀行を超える実績など、日本における業界トップの顧客との信頼関係を生かしていく」と述べた。

日本NCRコマースの価値

 新体制のスタートにあわせて日本NCRコマースでは、新たなビジョンとして「私たちはビジネスの未来を創造します」、ミッションとして「私たちはexperienceを通じてお客様の価値を高めます」を掲げるほか、行動指針として「NCR Voyix、すなわち私たちは勝利することに専念します」を打ち出し、Customer First、Expertise、One Team 、Simplicity、Inventivenessに取り組むとのことで、「顧客接点を徹底的にクリエイションすることを中心に据えて事業を進める」と述べた。

 リテールおよびレストランでは、コスト削減を実現しながらデジタルとフィジカルの両面での新しい顧客体験を提案する「Best-in-Class POS Platform for Digital Commerce」、顧客が消費者にサービスを提供し続けることができる堅牢なシステムを通じて、利便性やエンパワーメントを追求し、顧客の成長を支援する「Cloud-based Run-the-Store Capabilities」を推進。デジタルバンキングでは、デジタルインタラクションを全営業店で実現させ、共通テクノロジーによるプラットフォーム上で顧客を支援する「Leading Digital-First Banking Solutions」に取り組むという。

 「これまでは、POSやセルフレジなど、新たなハードウェアを提供する企業というとらえ方をされていたが、それだけでなく、ハードウェアの前後を含めたカスタマジャーニー全体をプラットフォームとして提供し、顧客体験の強化、従業員体験の再構築を支援する」と述べたほか、「従来の日本NCRのビジネスモデルは、大手小売業を中心に展開。独自のシステムやサービス構築を求めるニーズに対して、直販で展開し、人を配置し、ひとつずつ作り上げてきた。だが、今後はプラットフォーム戦略やサブスクリプション提供などを通じた新たなビジネスモデルを展開することで、中堅規模へと徐々に対象を広げ、シェアを拡大していきたい」と述べた。

NCR Voyixの事業領域

 2024年の重点事業と位置づける「プラットフォーム」と「AI」について、時間を割いて説明した。

 プラットフォームでは、リテールおよびレストランを対象に、小売業向けの「Voyix Commerce Platform(VCP)」を日本で提供を開始する。

 店舗エッジとクラウド基盤との連携が可能にプラットフォームで、POSやセルフレジ、決済端末などのフロントエンド機器を接続し、NCR Edgeと呼ばれるサーバー上で仮想化。各種データを統合して管理するとともに、ブラウザアプリケーションと、個別化されたレガシーアプリケーションを統合し、コントロールすることができる。さらに、サードパーティーとの連携によるエコシステムを構築。現在17社のアプリケーションが活用できるほか、NCRマーケットプレイスとして、開発者向けサービスを提供。オープンAPIを活用したアプリケーション連携が可能になる。サブスクリプションによる提供を行う。

日本NCRコマースの事業戦略とフォーカス領域

 日本NCRコマース 執行役員 マーケティング本部長の間宮祥之氏は、「海外の小売業においては、古いテクノロジーの維持にIT関連予算の75%を投資しており、それが今後さらに拡大すると予測されている。店の運用を止めないために、レガシーシステムが捨てられず、結果として、イノベーションへの投資余力がなくなるという状況になる。これをレガシートラップと呼び、この状況を抜け出さないと革新の機会を逸することになる。日本の小売業も早晩同じような状況に陥る」と指摘。「データが細分化し、デジタルプロセスがソフトウェアの機能に制限されたレガシーオペレーティングモデルから、プラットフォームの上に、APIによる拡張性を持ち、マイクロサービスを提供するエクスペリエンスオペレーティングモデルに移行することで、レガシートラップから抜け出すことができる」と提言した。

日本NCRコマース 執行役員 マーケティング本部長の間宮祥之氏

 デジタルバンキング向けのプラットフォーム展開では、銀行向けの「Channel Service Platform」を提供する。

 日本NCRコマースの間宮氏は、「デジタルの加速化、店舗のトランスフォーメーションに加えて、顧客体験をつなぐことを提案していく。店舗での対面での接点、セルフサービスやモバイルでの非対面の接点に加えて、その間にリモートアシステドサービスがあり、3つの顧客接点で銀行を支援することになる」とする。

 Channel Service Platformは、新たな顧客接点をサポートするリモートアシステドサービス、AIを活用した次世代コンタクトセンターシステムに加えて、計画中のOmni Channel Sales Platformなどで構成。他社のシステムとも連携しながら、統合型CRMを介して、カスタマジャーニーをエンドトゥエンドでカバー。APIを通じて銀行のバックエンドシステムと連携することになるという。

 また、Channel Service Platformを活用するために金融機関向けアドバイザリーサービスを強化。次世代のチャネル構築とバックエンドの効率化を支援するという。AIを活用することで、米国を中心に100社以上の導入実績をもとにした店舗展開の知見も提供することで、国内金融機関のチャネル戦略の検討を支援。営業店改革ソリューションと市場分析を組み合わせた支店改革や、バックオフィス業務の効率化や最適化の提案も行う。

 ここでは、戦略を定義するとともに、ロードマップを明確化し、店舗の分類と順位付け、各店舗に必要な機能の定義、顧客体験の定義と店舗設計、準備と開始というステップを踏むことになるという。

 「顧客セグメントや業務、チャネルを整理し、戦略を考えている銀行は少ない。さらに、カスタマジャーニーという観点からも検討を加える必要があり、これにより顧客接点の最適化を目指し、店舗の改革を進めることができる」とした。

デジタル・バンキング向けのプラットフォーム事業

 さらに、AI-assisted Cloud Contact Centerに新機能を追加。的確で、迅速なレスポンスによる顧客体験の向上、オペレーターの負荷軽減による従業員満足度の改善、リモートアシステドサービスを活用した営業店改革の実現が可能になるとした。

 また、テレビ窓口ソリューションである「NCR Interactive Teller Essentials」の導入も推進する。カメラと各種デバイスにより、遠隔地の窓口業務担当者と顧客がリアルタイムに接続し、現金処理を伴わない、ほぼすべてのテラー取引や相談業務などを、営業店に人員を配置することなく可能にするものだ。「日本においても、この半年ほどで問い合わせが増えている」という。

 一方、AIでは、リテールおよびレストラン向けに、会話型AIおよび処方型AIを活用したNCR Analyticsを提供する。AI バーチャルエージェントであるNCR ai.s.a.pを通じて、自然言語でアプリと対話しながら、必要なインサイトをリアルタイムで取得。Excelなどのデータを見ることなく、対話を通じて、店舗の状況を把握したり、気づきを発見できたりするという。また、NCR Analytics SMARTにより、対話をしながら、店舗運営などに関するアドバイスを得ることができる。担当店舗の売り上げが低い原因を聞くと、全店舗のデータをもとに分析。店員を増加させるなど、具体的なアクションを提案するという。

 日本NCRコマースの間宮氏は、「生成AIがコモディティ化しているが、これを競争優位に生かすための検討が始まっている。AIを活用した業務の効率化や、従業員体験の向上を行った上で、顧客接点を強化し、他社が取得できない独自データを取得することで、AIの活用における差別化を実現できる。日本NCRコマースでは、業務の効率化の領域において貢献する考えであり、会話型AIおよびインサイトを提供する処方型AIにより、顧客満足度向上、売上向上などのアクションにつなげる提案を行う」という。

AIソリューション

 さらに、次世代セルフレジ「NCR Voyix Next Generation Self-Checkout Solution」を、今後、日本でも提供する。画像認識を活用した商品登録可能な最先端セルフチェックアウトソリューションであり、バーコードスキャンに不慣れな消費者がセルフレジを扱う際の商品登録を、画像認識によりスムーズに実現したり、野菜などバーコードがない商品の登録の精度を向上したりといったセルフレジ精算の迅速化のほか、商品画像登録の際に写真を事前登録することなく、バーコードスキャンオペレーションのなかで自動的に学習し、商品画像登録業務を大幅に削減することができる。また、AI画像を活用したセルフレジでの不正対策が大幅に強化できるという。レジ精算における不正防止ソリューションであるEvercheckの実証実験も開始するという。

次世代セルフレジ「NCR Voyix Next Generation Self-Checkout Solution」