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東芝デジタルソリューションズ、AIを用いた法令翻訳システムを法務省向けに提供開始

 東芝デジタルソリューションズ株式会社は1日、AI翻訳を活用した法令翻訳システムを、法務省向けに提供開始したと発表した。同システムは2023年4月からシステム開発を行ってきたもので、法務省での試行運用を4カ月間行った後、2024年4月から全省庁で運用開始する予定という。

 法務省では、日本法令の外国語訳推進のための基盤整備を進めており、現時点で900以上の法令の英訳が公開されているが、従来は、法令公布から最終版の英訳公開まで、平均で約2年半かかってしまっていたという。

 その最大の要因は英訳原案の作成作業。各府省庁には英訳専任担当がいないことが一般的であるため、法令の英語化に当たっては、法令所管府省庁の担当職員が通常業務と並行して、翻訳対象となる法令の英訳原案を作成しており、その作業に多大な時間を要しているほか、作成時の作業負担も課題となっていたとのこと。

 こうした背景から、英訳公開までの抜本的な期間短縮を図るため、法務省では2019年から英訳原案の作成作業にAI翻訳の導入を検討。翻訳精度の検証や調査研究事業を経て、2022年度のシステム調達の結果、東芝デジタルソリューションズが提案した法令翻訳システムが採用された。

 法令文は、括弧書きされた挿入文や、複雑な修飾関係が含まれ長文になっているケースがあったり、文章内で主語が省略されるケースが多かったりといった特徴から、AI翻訳には難易度が高い分野だが、この法令翻訳システムでは、同社が培ってきた自然言語処理技術に、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 先進的音声翻訳研究開発推進センターが開発した法令専用の最新ニューラル翻訳モデルを組み合わせ、さらに法令文固有の課題に合わせた追加学習などを行った。

 その結果、AI翻訳の翻訳品質を評価する指標の1つであるBLEUスコアにおいて、254.89をマークし、従来のAI翻訳では難しかった、法令英訳のルールにのっとった正確で自然なAI翻訳を実現したとのことだ。

 なお今回のシステムでは、完成した翻訳文を法務省やその他の所管府省庁が確認しやすいような編集機能も提供しており、法令翻訳業務全体の業務効率化を目指している。

AI翻訳導入後の業務フロー