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NTT、5G仮想化無線基地局の低消費電力化を実現する技術を開発

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は24日、同社が研究中の省電力イネーブラ(Power Saving Enabler)を活用することにより、実際の商用ネットワークに近い環境で、ソフトウェアにより構成された仮想化基地局の消費電力を最大46%削減できることを実証したと発表した。

 汎用サーバー上に無線基地局の機能をソフトウェアで構成する、仮想化基地局(vRAN)の実現に注目が集まる一方、仮想化基地局は無線基地局に最適化された専用ハードウェアと比べて、消費電力の観点で課題がある。また、一般的に性能向上と消費電力削減にはトレードオフの関係があり、マイクロ秒オーダーの遅延要件がある基地局では、特に両立が難しいと言われており、この解決が求められているという。

 NTTでは、仮想化基地局の消費電力削減課題に着目した省電力イネーブラの研究を立ち上げ、仮想化基地局の各ソフトウェア処理を消費電力観点で分析し、非効率な処理を改善するための複数の技術を考案、仮想化基地局を性能劣化なく省電力化できることを確認した。ソフトウェア技術である省電力イネーブラは、NTTがIOWN構想実現に向けて研究開発を進めている「光電融合技術」「オールフォトニクス・ネットワーク(APN: All Photonics Network)」「超強力・汎用WhiteBOX」と組み合わせることで、より大きな省電力効果が得られるとしている。

省電力化技術概要

 技術実証実験では、富士通株式会社が提供する仮想化基地局に、省電力イネーブラを適用し、実際の商用ネットワークに近い環境で有効性の評価を行った。今回の実験では第一弾として、省電力イネーブラの中から、1)厳しい遅延要件の範囲内でソフトウェア処理をsleepする制御技術、2)処理に必要なデバイスを制御する技術、3)デバイスが持っている省電力機能を最大化する制御技術――の有効性を確認した。

 仮想化基地局において主流な2種類のアーキテクチャ(look aside型、in line型)の製品にこれらの技術を適用し、現行の汎用サーバーを使用して評価を行ったところ、低トラフィックの条件下において、双方最大46%の消費電力削減効果が確認できたという。

 NTTでは、今回の実験により有効性を確認した省電力化技術について、活用を希望するベンダーへのライセンシングを予定していると説明。この省電力化技術をベンダーの仮想化基地局への搭載を通じてグローバルに展開することにより、5G/6Gネットワークなどの省電力化による通信事業者の脱炭素化を支援し、持続可能な社会の実現を目指すとしている。