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SAPジャパン、データ管理ポートフォリオの新製品「SAP Datasphere」を発表

ビジネス・データ・ファブリックの基盤構築を実現

 SAPジャパン株式会社は22日、データ環境全体でビジネスに必要なデータへの容易なアクセスを顧客に提供するデータ管理ポートフォリオの新製品「SAP Datasphere」を提供開始すると発表した。同日には、「SAP Datasphere」をリリースする狙いや製品概要について説明会が行われた。

 「SAP Datasphere」は、SAP Data Warehouse Cloudソリューションの次世代版となる製品。このソリューションにより、SAPアプリケーションとSAP S/4HANAを利用している企業において、ミッションクリティカルなビジネスデータへのスケーラブルなアクセスを可能とし、より迅速なインサイトとより良い業務上の意思決定を実現する重要なデータイノベーションを提供する。

「SAP Datasphere」の製品概要

 SAPジャパン ビジネス・テクノロジー・プラットフォーム事業部 事業部長の岩渕聖氏は、企業におけるデータ管理の現状について、「マルチクラウド時代では、オンプレミスのデータソースとクラウドデータが混在し、各種データへのアクセスや利用はさらに複雑さを増している。また、分散されたデータを一元管理する際には、特にメタデータからビジネスコンテキスト(背景、意味合い、経緯)が失われてしまうという問題がある。信頼できる意思決定のためには、データのビジネスコンテキストやロジックを保持することが必要不可欠であり、部門をまたいで整合性の取れた業務とデータモデルにあらためて注目が集まっている」と指摘する。

SAPジャパン ビジネス・テクノロジー・プラットフォーム事業部 事業部長の岩渕聖氏

 「今回リリースする『SAP Datasphere』では、データの持つビジネスコンテキストやロジックを損なうことなく、意味のあるデータを迅速に提供するビジネス・データ・ファブリックを構築することができる。これにより、データの物理的な配置場所を意識することなく、データにアクセスすることが可能となる。また、ビジネスユーザーは、基盤となるデータモデルを把握していなくても、ビジネス用語を使ってビジネスシナリオをモデリングできるようになり、戦略主導型モデリングとプロセスデータ主導型モデリングを紐づけたアプローチが可能になる」としている。

 具体的には、「SAP Datasphere」によるビジネス・データ・ファブリックアーキテクチャの基盤は、「セルフサービス型のデータアクセス」、「データディスカバリー」、「オーケストレーション」、「データ処理と永続化」、「データガバナンス」、「データ収集」の6つの層で構成される。そして、データ統合やデータカタログ、セマンティックモデリング、データウェアハウス、データフェデレーション、データ仮想化のための統一されたエクスペリエンスにより、ビジネスコンテキストとロジックを保持したまま、組織のデータ環境全体にミッションクリティカルなビジネスデータを展開することが可能となる。また、この基盤は、SAP Business Technology Platform(SAP BTP)上に構築されており、データベースセキュリティ、暗号化、アクセス制御などのエンタープライズセキュリティ機能も備えている。

「SAP Datasphere」によるビジネス・データ・ファブリックアーキテクチャの基盤

 従来のSAP Data Warehouse Cloudソリューションからの主な機能強化ポイントについて、SAPジャパン カスタマー・アドバイザリー統括本部 シニアディレクターの椛田后一氏は、「セマンティックモデリング:分析モデル」、「データカタログ」、「データ連携機能強化」の3つを挙げた。

SAPジャパン カスタマー・アドバイザリー統括本部 シニアディレクターの椛田后一氏

 「『セマンティックモデリング:分析モデル』は、データを可視化・分析することを目的としたテーブル、ビューを組み合わせた多次元モデルとなっている。事前定義されたメジャー、階層、フィルタ、パラメータ、およびアソシエーションを通じて、基礎となるデータを柔軟かつ簡単に確認することができる。また、データプレビュー機能により、業務ユーザー公開前にデータやモデル構造を確認し、分析要件の調整をスムーズにして、ITユーザーと業務ユーザーのコラボレーションをサポートする」という。

セマンティックモデリング:分析モデル

 「『データカタログ』では、分析モデルで整理されたセマンティック情報を一元管理することができる。このデータカタログで、ビジネス用語やKPIを定義し、システムのデータと紐づけることで、データガバナンスのためのデータコンプライアンスと信頼できるデータ品質を実現する。また、『データ連携機能強化』では、データエージェントをデータソース側にインストールすることなく、クラウド指向のデータ連携が可能となった。また、SAP Datasphereの仮想データアクセスとデータ複製機能を利用することでデータソースの統合、異種データとのリアルタイムデータ連携を実現する」と説明した。

データカタログによるデータガバナンスの実現

 なお、SAP Data Warehouse Cloudソリューションの既存ユーザーは、追加の手順や移行の必要なく、その製品環境内で「SAP Datasphere」の新機能を利用することができる。今後、SAPのクラウドソリューションから「SAP Datasphere」へのデータとメタデータの関連付けを行うアプリケーション統合機能も追加される予定。