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NTT Comとアクアフュージョン、超音波式水中可視化技術による養殖魚の個体数自動計測システムを開発

安高水産のマダイ養殖場に本格導入

 NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)と株式会社AquaFusion(以下、アクアフュージョン)は、超音波式水中可視化技術「FINE Technology」を用いて生け簀(いけす)の魚をカウントするシステム「MagicCounter」により、養殖マダイの個体数を自動計測する実証実験に成功したと発表した。両社では同システムを、安高水産有限会社のマダイ養殖場に、12月19日より本格導入する。

個体数計測イメージ(本システム画面イメージ)

 養殖漁業では、生け簀内の養殖魚を適切な密度に保つため、養殖魚が成長すると「分養」という作業を行うが、生け簀内の密度を生育に適した状態に保つためには、予定した個体数を確実に分養する必要があるという。しかし、移動する養殖魚の個体数を目視で把握することには限界があり、予定した個体数を正確に分養できず、作業のやり直しが発生することが大きな課題だったとのこと。

 こうした課題を解決するため、これまでも、水中カメラを利用した分養作業中のリアルタイムな個体数計測の実験が行われてきたが、魚の重なりや海中環境の影響により、正確な計測が困難だった。

 そこでNTT Comとアクアフュージョンは、2019年から、安高水産のマダイ養殖現場を実証フィールドとし、超音波による養殖魚の個体数自動計測に取り組んできた。また2021年3月には、超音波式水中可視化技術を活用した新たな養殖管理モデル確立のため、スマート水産業分野で業務提携を締結している。

 両社は、これまでの3年にわたる実証実験において、計測精度の向上、分養時の魚道(通過枠)の改良などに取り組んでおり、高い精度で個体数把握を行えることが確認できたため、今回、同システムを安高水産のマダイ養殖場に本格導入する。

分養作業のイメージ
実際の分養作業および実証風景

 このシステムでは、養殖魚の分養時に、生け簀と生け簀の網をつないでつくった魚道(通過枠)に超音波の送受波器を設置し、通過する魚の個体数を海中でカウントするとともに、それを洋上でリアルタイムに確認できるようにしている。

 従来、養殖魚の個体計測時に用いられてきた水中カメラでは、映像による個体計測を行っていたが、同システムでは、アクアフュージョンの特許取得技術であるFINE Technology(高頻度超音波送信センサーと魚体識別アルゴリズム)を応用することで、水質の影響を受けず、魚が密集した状態でも魚1匹1匹を個体識別し、個体数を正確にカウントできるとした。

 加えて、新たに特許出願中の技術により、未計測エリアを含め、全体の通過個体数を正確に推計可能になった。現時点の計測誤差は平均約10%以内で、分養を実施するうえで十分な精度を確保しているとのことだ。

本システムの仕組み