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NECソリューションイノベータ、量子コンピューターを用いた交通流解析の実証実験を川崎市で実施

 NECソリューションイノベータ株式会社は21日、川崎市が提供する道路インフラにおける実証フィールドを使用し、量子コンピューターを用いた交通流解析により、車両の動きをリアルタイムに把握するための実証実験を8月から実施すると発表した。

 NECソリューションイノベータでは、量子コンピューターを活用して、道路や交差点で移動する車両を撮影した画像からリアルタイムに車の流れを把握し、その状況に応じて信号の制御などで交通渋滞を解消する研究を行っている。

 近年、多数の物体の動きを把握する方法として、従来のコンピューターを用いた数理最適化の手法が用いられているが、交通量が増えると計算時間が増大するため、渋滞など交通量の多い環境で多数の車を検出して動きを捉え、リアルタイムに車の流れを把握することは困難だった。そこで、NECソリューションイノベータでは、量子コンピューターで数理最適化を実行することで、交通量の多い環境においても、短時間で交通流を把握する研究を進めてきた。

 川崎市では、交通渋滞や交通事故などの課題の解決に向けた取り組みを効率的、効果的に推進するため、ICTなどのデジタル技術を活用した新しい製品や技術開発の現場実証に必要となるフィールド(同市が管理する道路施設など)を、企業などに提供している。NECソリューションイノベータは、これまでの研究の効果を検証するため、川崎市が提供する実証フィールドの1つである鋼管通り交差点(川崎市川崎区)を使用し、交通流解析の実証実験を行う。実施期間は2021年8月10日から2022年3月31日まで。

 実証実験では、汎用的なカメラを交差点に設置し、1秒間に15~30コマ程度のシャッタースピードで車の流れを動画で撮影する。動画の各コマに写った車両が同一車両かを判別するために量子コンピューターを活用し、車両の位置や外観の情報をもとに、条件が最も近い車両をマッチングさせる数理最適化を実行する。これにより、リアルタイムに車両の動きを捉え、交通の流れを把握できるか検証する。

 当初は1台のカメラで実施し、検証確認後に、複数台のカメラで実施/検証を行う。撮影には、高額な高性能のカメラではなく汎用的なカメラを用いることで、将来的には交差点などに設置されているカメラなどの活用により低コスト化を実現し、より多くの地域での活用を目指す。

量子コンピューターで車両の動きを把握する際のイメージ

 使用する量子コンピューターはアニーリング型で、シミュレーテッドアニーリングマシンを含む、NECや他社製のコンピューターの機種から最適なものを選択する。

 今後、実証実験の結果から、季節や時間帯を踏まえた最適な交通流を把握し、将来的には信号の制御などで交通渋滞の解消を実現することを目指す。