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富士通研究所、人の集中度を定量的に推定可能な汎用AIモデルを開発

 株式会社富士通研究所は1日、人がさまざまなタスクを実行している時の集中度を、表情筋の動きの変化から、集中時/非集中時における顔面の状態の違いとして検出することで、高精度に捉えて定量化できる、集中度推定AIモデルを開発したと発表した。

 従来、AIを活用して集中度を定量化するモデルは、eラーニングなど特定のタスクを実行している人の表情や振る舞いを学習することにより作成していた。しかし、表情や振る舞いは、従事するタスクや人がそれぞれに育った文化的背景に依存して異なるため、作成したモデルは個別のモデルとならざるを得ず、さまざまな場面に応じて個別にAIモデルを開発しなければならないことが課題だったという。

 富士通研究所では、表情筋に対応した顔面の各部位の動作単位であるAction Unitを検出する独自の技術を活用して、口元に力が入るなど数秒程度の短期間の変化や、目を凝らして一心不乱に見つめているなど、数十秒にわたる長期間の変化をAction Unitごとに最適化された時間単位で捉えることで、集中/非集中状態の違いを、それぞれの文化的背景の影響を受けにくい共通の特徴として抽出することに成功した。

 さらに、タスク固有の振る舞いが生じないように設計された探索や記憶を行う課題を、日本に加え、多様な地域の人のデータ収集が可能な米国および中国の、のべ650人で実施し、機械学習用のデータセットとして構築することで、特定のタスクに依存しない、汎用的な集中度推定AIモデルを開発した。

 このAIモデルにより、eラーニングでの集中度や、デスクワークへの没入状態、工場の組み立て作業の集中度合いなど、さまざまなタスクにおける集中、非集中の状態を、0.0(非集中)~1.0(集中度最高)の数値で定量的に示すことができる。

集中状態に現れる人共通の特徴を抽出した集中度推定方式
集中度の推定結果の例

 この集中状態のデータセットを用いてモデルの有効性を検証したところ、85%を超える高い精度で集中度を定量的に推定できることが確認できたという。

 また、開発したAIモデルを、ドライブシミュレーターによる運転の様子を収録した、集中状態と眠気による非集中状態が混在するデータで推定したところ、NEDO眠気指標に基づいてラベル付けした正解データに対して高い相関を示し、眠気による集中度低下を推定できていることが確認できた。これにより、開発したAIモデルは、学習を行っていない異なるタスクにも適用可能なことが確認できたとしている。

 富士通研究所では、今回開発した技術により、利用が拡大するオンラインの授業や営業活動などの各種オンラインサービスにおいて、デジタル化された参加者の集中状態のデータを活用したAIの支援により、オンラインで取り組む人のタスクや業務の効率化、生産性の向上が可能になるとしている。