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Linuxディストリビューション「Ubuntu 20.04 LTS」リリース、2年ぶりの長期サポート版

Canonical Japanオンライン記者説明会レポート

 英Canonicalは4月23日(英国時間)、Linuxディストリビューション「Ubuntu」の最新版「Ubuntu 20.04 LTS」(開発コード名:Focal Fossa)をリリースした。デスクトップ版やサーバー版、各種フレーバー(公式派生版)、パブリッククラウドのイメージが公開されている。

 今回のUbuntu 20.04は、2019年10月にリリースされた19.10の次期バージョンであると同時に、2年前にリリースされた18.04の次期LTS(Long Term Support:長期サポート)版でもある。

 Ubuntuでは半年ごとに新バージョンがリリースされ、サポート期間はリリースから9カ月間に設定されているが、2年に一度、サポート期間が5年のLTS版がリリースされることになっている。

 このLTS版は主に実運用のサーバーや、UbuntuプリインストールPCなどで使われている。

Ubuntu 20.04のデスクトップ(ベータ版で撮影)

Ubuntu 20.04での変更点

 以下、リリースノートなどから特徴をいくつか挙げる。

 Ubuntu 20.04ではLinuxカーネルが5.4となった。カーネル5.4では、カーネルでexFATファイルシステムをサポートする。また、Ubuntu 20.04のカーネルでは、カーネル5.6から追加された新しいVPN方式「WireGuard」のサポートが追加されている。

 Ubuntu 20.04のデスクトップではGNOME 3.36を採用。中でも、HiDPIディスプレイにおいて、表示スケールを100%や200%だけでなくその中間の倍率に設定できる「任意倍率のスケーリング」が、設定ダイアログで指定できるようになった。そのほか、デスクトップテーマや壁紙がアップデートされている。

 Ubuntu 20.04 サーバー版の変更点としては、インストーラーでcloud-config形式の設定にもとづく自動インストール機能が追加された。

 前のLTSであるUbuntu 18.04と比べた場合は、さまざまなソフトウェアパッケージがアップデートされている。例えばPython言語処理系では、Python 3系がデフォルトになり、新規インストールではPython 2系がデフォルトではインストールされない。

Ubuntuのパートナーや顧客事例を紹介

 Ubuntu 20.04 LTSのリリースに合わせて、4月22日(日本時間)にCanonical Japanのオンライン記者説明会が開かれた。

 Canonicalの製品担当ディレクターのStephan Fabel氏は、多くの企業がUbuntuを利用し、クラウドやデータセンター、エッジ、組み込み機器の各分野でユニークな位置を築いていると説明。「これは、半導体やハードウェア、ソフトウェア、クラウドなどの強力なパートナーシップによるもの」と語った。

 さらに「われわれのルーツはデスクトップ」として、Ubuntuを搭載したワークステーションは需要が伸びていると説明した。

 ここでCanonical Japan株式会社のリージョナル セールス マネージャーの柴田憲吾氏が日本市場について紹介。「もともとUbuntuはサーバーやデータセンターで強かった。日本で特徴的なことは、エッジコンピューティングや組み込み機器でUbuntuを使うケースが増えている点だ」と語った。

 顧客としては、既存の顧客に加え、新たに金融やメディア、ゲーミング、通信業界が成長しているという。その例としてStephan氏は、5GモバイルネットワークのコアでUbuntuを採用したBT、ロックダウンの需要増のスケーリングにUbuntuで対応したRoblox、社内向けにベアメタサーバーのセルフサービスを構築してプロビジョン時間を短縮したT-Mobile、金融情報サービスのAcurisを紹介した。

 また日本の顧客として柴田氏は、UbuntuとCanonicalのOpenStackを採用したYahoo! JAPANや、Canonicalによるサポートつきで導入した金融のSBI BITSを紹介した。

Canonical 製品担当ディレクター Stephan Fabel氏
Canonical Japan株式会社 リージョナル セールス マネージャー 柴田憲吾氏
各分野への取り組みとパートナーシップ
Ubuntuの顧客事例

ESMやマネージドアプリなど上位レイヤーのセキュリティにも注力

 Stephan氏はUbuntuが最近特に意識しているテーマとして、セキュリティを挙げた。

 まず、従来はハードウェア&クラウド、カーネル、OSという比較的下の3レイヤでセキュリティに注力してきたと語った。最新動向としては、Ubuntu 20.04などの最新Linuxカーネルにおいて、前述のとおり新しいVPN技術のWireGurardがデフォルトで組み込まれる。

 そして最近では、これまでカバーできていなかったアプリケーションとオペレーションという両レイヤのセキュリティにも注力していると、Stephan氏は語った。

 アプリケーションのレイヤでは、エンタープライズ向けサポートのExtended Security Maintenance(ESM)プログラムを取り上げた。LTSリリースでも、セキュリティアップデートが無償で5年間受けられるソフトウェアパッケージは中核のものに限られる一方、ESMでは有償契約により、3万にもおよびソフトウェアパッケージを10年間サポートするという。

 「ESMは、次世代のワークロードに対応するエンタープライズの要望に応える」とStephan氏は語り、「エンタープライズLinuxのベンダーの中でも、これほど多くをカバーできているところはないだろう」とアピールした。

 同様のサポートプログラムには、2019年12月に発表されたUbuntu Proがある。これはパブリッククラウド上のUbuntuに対するもので、パブリッククラウドの利用料金に追加料金を払うことで、10年間のサポートが受けられる。初期費用は不要だ。

 オペレーションのレイヤでは、OSSのフルマネージドサービス「マネージドアプリ」を4月に発表した。現在、Apache KafkaやElasticsearch、Prometheus、Grafana、PostgreSQL、MySQLなど9つに対応しており、「拡張していきたい」とStephan氏は語った。

セキュリティにおいて従来は下の3レイヤーに注力していたが、最近は上の2レイヤーにも注力
エンタープライズ向けサポートのExtended Security Maintenance(ESM)
パブリッククラウド上のUbuntuの商用サポートUbuntu Pro
Canonicalのマネージドアプリ