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ジェンパクト、BPOとDXをセットにした提案を国内でも推進 3年後に5倍の売上目指す

 米Genpactの日本法人であるジェンパクト株式会社は12日、2018年10月に代表取締役社長に就任した田中淳一氏が、同社の新たな事業戦略を発表した。

 田中氏は、「日本ではBPOをビジネスとしてきたが、新たに人員を採用し、グローバルで進めているデジタルトランスフォーメーション(DX)事業を強化する。新たな人材は今年中に30人採用する計画で、3年でトータル200人規模まで拡大し、売り上げも5倍に拡大することを目指す」という新方針を掲げた。

 グローバルのGenpactは、オリジナルのDXプラットフォーム「Genpact Cora」を提供し、BPOとDXを同時に進め、コスト削減などで成果を上げているという。日本法人ではこれまで提供してきたIOオペレーション(BPO)に加え、戦略立案、トランスフォーメーション、IOデザインなどの事業を拡充していく。

ジェンパクト 代表取締役社長 グローバルシニアバイスプレジデントの田中淳一氏

BPOベンダーから日本企業のDXパートナーへ、イメージを変える

 社長に就任した田中氏は、ジェンパクト入社前はKPMGコンサルティングで執行役員・パートナーとしてRPA、AIなどを活用したデジタルトランスフォーメーションの推進などを行ってきた。

 田中氏はその経験から、「日本企業が抱える課題は現場主義だ。例えば、RPAについても現場主導で導入する点にある。現場主導となるため、一部分は効率化するものの、全体が効率化するような変化につながらない。PoC(概念実証)以降、先に進まなくなってしまう点にある」と指摘する。

生産性向上を目指すデジタル化対応における課題

 そこでジェンパクト日本法人としては、業務オペレーションで培った業務ノウハウと、海外で実践しているDXによる効率化・高付加価値化ノウハウを企業に提供。「BPOベンダーというイメージから、日本企業のトランスフォーメーションパートナーという位置づけとなることを目指す」(田中氏)方針だ。

 海外でのビジネスの現状については、米Genpactのチーフ・デジタル・オフィサーであるサンジェイ・スリバスタバ氏が、さまざまな企業のDXに取り組んだ経験を紹介した。

米Genpact チーフ・デジタル・オフィサーのサンジェイ・スリバスタバ氏

 「当社は、企業のビジネスプロセス管理を最適化するビジネスを20年展開し、現在はデジタル活用によるイノベーションの創出に取り組んでいる。その経験から、これまで取り組んできたビジネスプロセス管理とデジタルによるイノベーションが交わるところにこそ価値がある。具体的な例でいえば、今、全世界で取り組んでいるロボットによる自動化は大きな成果を上げることができず、大成功には至らなかった。現在取り組まれているのは、社内標準化を行った上でRPAを実施すること。これにより成果に大きな違いが出てくる」(スリバスタバ氏)。

 企業がデジタル変革に取り組む理由については、オペレーション最適化によるコスト削減、顧客体験の創造によるエンドツーエンドでの取り組み、新たなビジネスモデルによる価値提案の変革という3点を挙げる。

 さらに、デジタル化で実現する新しい可能性を、「デジタル化のメリットとは、目的地に着くことではない。旅路こそメリットだ。つまり、あるユーザーがRPAを導入すると以前は入手できなかったデータが集まるようになる。その結果、次の取り組みとして機械学習に取り組むようになる。そこで培ったインサイトをチャットボットに活かすことを検討し始める。RPAというひとつの取り組みをきっかけに、そこからつながりある次に発展していく、目的地に着くことではなく、次々に新しい取り組みに進む旅が実現する」と説明する。

 Genpactではこの旅を支援するためにプラットフォーム「Genpact Cora」を提供。ユーザーは1つのプラットフォームで、連携しながらビジネスを発展させていくことができることをメリットとして挙げている。

Genpact Cora

 また、業種業務ノウハウ、ユースケースに基づく専門的なソリューションとプロダクトを提供している。事例のひとつが、製薬会社の有事事象報告をAIによって収集しているケースだ。製薬会社は薬の副作用情報などの有害事象を、専門知識をもった担当者が収集してきた。収集対象はこれまでは医者のカルテだったが、AIを活用することで論文や最近ではFacebookやTwitterなどSNSなど様々なものを対象としているという。

 「当社にとって、数十億の収益を獲得するビジネスとなっている案件だが、それでも人間の手で作業していた時に比べて高い価値があると、製薬会社からは評価されている。日本でこのお話をすると、興味を持たれる製薬会社もある」(田中氏)。

 小売業での事例は、請求書と実際の入金を付き合わせて確認する突合処理に関するもの。当初はBPO案件として受託したものだったが、システム化できるのは80%で、突合不可でマニュアル処理しなければならないものが年600万件発生。そこでデジタルHubと共同で徹底的にIO化を行い、ルール・RPA化と、機械学習で処理の合理化を進めることに成功した。

 日本法人でも、こうしたBPOとデジタル化の両方を実現するビジネスを展開するために、人材・体制強化としてコンサルタントの採用強化、グローバル連携強化、従来スタッフのスキル転換などを進める。デジタル化を強化するために、完全に日本語化されていないGenpact Coraの日本向けカスタマイズ、開発・導入・運用力を強化し、協業するパートナーの拡大も行う。

 その結果として、ソリューションの拡大とBPOとDXをセットにした提案で、事業を3年で5倍まで拡大していくという。

ジェンパクトの提供するサービス
米GenpactのスリバスタバCDO(左)と、ジェンパクトの田中社長(右)