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NICTとNECネッツエスアイ、塩尻市など、ケーブルテレビ基盤高度化のためのネットワーク仮想化実証実験を開始

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)総合テストベッド研究開発推進センター、NECネッツエスアイ株式会社、株式会社テレビ松本ケーブルビジョン、塩尻市、NPO法人中央コリドー情報通信研究所は25日、ネットワークスライシング技術を用いたケーブルテレビ基盤の高度化のためのネットワーク仮想化実証実験を開始したと発表した。

 NICTが開発したSDN技術を応用したパケット中継装置を、実際のケーブルテレビ基盤も用いた技術実証環境に設置。サービスの見える化、ネットワーク品質制御、地域情報サービスの提供という3つの実験項目を定め、それぞれ仮想ネットワーク環境を構築し、統合的な制御により動作することを検証する。

 総務省がケーブルテレビの将来について取りまとめた「ケーブルビジョン2020+」では、ケーブルテレビにより、災害情報・地域情報を充実させアクセスを確保することや、放送サービスにおけるレコメンド機能の提供、さらには地域の社会的課題の解決や高効率社会の実現に資するスマートシティ事業への参入など、多様なサービスの実現が期待されている。

 一方で、国内ケーブルテレビの事業者数は各地域において比較的小規模な事業者により運営されていることが多く、そのために設備の大幅な増強や、サービス管理コストの上昇を抑えつつ、高度化を実現することが求められている。

 こうした課題に対しては、近年期待され、実際に導入が進みつつあるのがネットワーク仮想化技術だと説明。ネットワーク仮想化技術により、多様なサービスが個々に要求するリソースを、共通のネットワーク基盤内で確保しつつ、それぞれのサービスに対して仮想的に独立して提供することができ、基盤コストが軽減されるとともに、サービスの管理運用を統合でき、サービスの多様化に柔軟に対応できるとしている。

 NICTでは、ネットワーク仮想化技術の実用化に向け、テストベッドを構築するとともに、さまざまな実証を通じて検証を行っている。

 今回、ネットワーク仮想化技術の応用によるケーブルテレビ基盤の高度化を目指し、ネットワーク仮想化技術の中核技術の一つであるSDN技術を応用した、ネットワークスライシング基盤とエッジコンピューティング基盤を持つパケット中継装置を開発し、実際のケーブルテレビ基盤も用いる技術実証環境を塩尻市の協力を得て構築し、実証実験を開始した。

 通常のSDNでは、荷札に相当するコントロールプレーンのみで通信制御を行うが、実証実験のSDNは荷札に相当するコントロールプレーンと荷物に相当するデータープレーンの両方を用いて通信制御を行う。レイヤー2・レイヤー3のみならず、レイヤー7までの統合的な通信制御が可能となるため、ネットワークスライシング基盤はレイヤー2からレイヤー7までを一括して論理分割ができるようになる。

 実証実験では、ユーザーのサービス利用状況を把握し、より適切なコンテンツ提供、サービス品質管理を可能にする「サービスの見える化」、ネットワークスライシング基盤によりサービス内容や重要性を考慮したリアルタイムな通信量の制御を行い、サービス品質の確保、向上を可能にする「ネットワーク品質制御」、ケーブルテレビ基盤を用いた自治体や地域住民によるコンテンツの提供、配信を行う「地域情報サービスの提供」の3つの実験項目を定め、それぞれ仮想ネットワーク環境を構築し、統合的な制御により動作することを検証する。

 実証実験は5月まで実施し、データの収集、解析を行う。また、地域情報サービス創出に向けた発展的な取り組みとして、テレビ松本ケーブルビジョンおよび地域の企業や市民などが参加するアイデアソンの開催を検討する。NECネッツエスアイでは、取り組みで得られた成果と課題を元に、サービスの見える化、サービスごとのネットワーク品質制御を可能とするネットワーク基盤の製品化に向けた検討と開発を進めていく予定としている。

実証実験の概要図