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富士通研究所、手のひら静脈認証と顔認証を組み合わせた生体認証融合技術を開発

100万人規模のIDレス決済に対応

 株式会社富士通研究所は4日、中国の富士通研究開発中心有限公司と共同で、キャッシュレス社会の実現に向け、手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定し、非接触で認証できる生体認証融合技術を開発したと発表した。

 富士通研究所では、手のひら静脈認証は銀行ATMや入退室管理、PCなどの個人利用端末へのアクセス管理などで主に活用されており、銀行ATMなど数万人規模の利用者の手のひら静脈が登録されている場合には、比較照合を効率的に行うために、カードなど他の情報を入力することでデータの絞り込みを行ってきたと説明。

 一方、今後、100万人規模の利用が想定される実店舗での決済へと利用範囲を拡大するには、非接触によるクリーンな環境で、かつ利用の負担を感じさせないより簡便な環境での認証が求められるとして、一般的なカメラで取得できる顔情報を活用して、利便性の高い手ぶらでの認証を実現したとしている。

 富士通研究所では、高速に演算できる顔特徴抽出技術を開発。画像から精緻に本人を特定するためには、顔の向きや表情の変化などにも対応する高精度な特徴抽出を実現するための複雑な仕組みを構築する必要があり、処理時間が増大するという課題があるが、精度を落とさずに複雑な仕組みを簡易的に模擬するアルゴリズムを開発することで、処理サイズを約10分の1へ軽量化し、高度な顔認証を瞬時に処理することを可能にした。

 また、手のひら静脈と顔情報を融合した生体認証融合技術も開発。決済端末利用中の自然な動作の中で、カメラから取得できる顔情報を利用して、登録されている100万人規模のデータベースの中から類似するグループに絞り込みを行い、決済時など実際に認証が必要な時に、利用者が手のひらをかざすことで、絞り込んだグループから1人を迅速に特定する。

顔情報で照合対象者を選別して手のひら静脈で本人特定する流れ

 手のひらをかざす操作で静脈のデータが一部取得できなかった場合でも、顔情報で認証に必要な情報が補てんできるため、2つの生体情報を利用することによる認証の安定性を向上でき、手のひら静脈と顔情報の処理を分離することで認証サーバーへの負荷を軽減でき、顔情報の比較演算の高速性と相まって、計算リソースの増大を抑制できるとしている。

 富士通研究所では、今回開発した技術を用いることで、利用者にカードなどの他の情報の入力を意識させることなく、認証サーバーの計算リソースの増大を抑制しながら、100万人規模の手ぶらでの認証をリアルタイムに実現すると説明。今後、技術の2020年度中の実用化を目指すとしている。