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コンカー、「Concur Locate 日本版」で出張者のリスク管理を支援
2018年9月11日 06:00
株式会社コンカーは10日、出張者のリスク管理を支援する新サービス「Concur Locate 日本版」の提供を開始すると発表した。
各国のリスク情報をタイムリーに把握し、出張予定のある従業員や出張情報を共有。出張・経費管理クラウド「SAP Concur」上にある出張申請や旅程情報、現地での出張者のチェックイン情報など、さまざまな情報を集約して、従業員の所在を特定し、SMSやメールなどを活用して、従業員の安否を確認および支援できる。
これまで、全世界で75万件のユーザーが利用しているという。日本では、2022年までに248社への導入を計画している。
さらに同社では、旅程管理サービスの「TripIt Pro」を2019年上期から出荷を開始する予定であり、2022年まで232社への導入を図るという。
すべての出張先に何らかのレベルのトラブルがある前提で考えた方がいい
SAP Concurのマイケル・エバハート プレジデントは、出張者のリスク管理について、「私自身、海外出張が多く、2011年3月11日の東日本大震災の数日前には日本にいた。また、その後に出向いたバンコクでは暴動があり、手助けが必要である環境に陥ったことを何度も体験している。こうしたときに活用できる技術やサービスを活用して、自分の会社が自分をケアしてくれることは大切であり、従業員の安心にもつながる。SAP Concurには7700人以上の従業員がいるが、世界でなにかトラブルや事件が起こった際には、従業員はどうかということをいつも考える」と前置き。
「調査によると、3分の1の企業が、トラブルが発生したときに、社員の安否を確認するために、どれぐらいの時間がかかるのかわからないと回答している。ビジネスリーダーは、企業規模にかかわらず、出張している従業員をケアできる仕組みを用意する必要がある。2018年だけで、1週間平均12件のレベル4以上のトラブルが発生している。すべての出張先に、何らかのレベルのトラブルがあるという前提で考えた方がいい」と提言した。
また、コンカーの三村真宗社長は、「現在、Duty of Care(従業員に対する企業の安全配慮義務)が重視される一方、勤務環境の変化、政治リスクの増加などあり、自然災害やテロ、感染症リスク、地域紛争などへの対応が重視されている。日本でも今年に入ってから、西日本豪雨や北海道地震などのリスクが発生しているが、日本企業は出張中の危機管理が遅れているのが実情であり、ビジネストラベルマネジメントは欧米の企業に比べて20年遅れている。Concur Locateによってこれを解決したい」と述べた。
同社が実施した「出張者のリスク管理に関する日本企業の意識・実態調査」によると、73%の企業で海外出張者に何らかのトラブルが発生したと回答。78%の危機管理担当者が海外出張者が何らかのトラブルに巻き込まれる可能性が高まっていると感じているとした。
また92%の企業で、「海外出張者の危機管理プロセスに課題を感じている」とし、64%の企業において、危機管理の強化に向けて「システム導入が必要である」と回答していていることがわかった。
しかし、危機検知とリスト作成が自動化されていないため、1時間以内にリストを作成できる企業は22%にとどまっている現状も浮き彫りになった。
三村社長は、「旅行会社に丸投げしたり、社員による勝手予約が横行したりしているため、社員がどこにいるのかわからないといった課題がある。また危険情報に関しても、大きなものはニュースになるが、小さな事件などはニュースにならないため、危険情報をタイムリーに把握できないという課題がある。このほか、経営層の意識の欠如の課題や、対応するための仕組みおよびシステムの欠如がある。Concurで予約をしてもらえば、Concur Locateによる旅程情報と危機情報を活用し、出張者が危機に直面している可能性を自動検知し、即座にリストを自動作成。数クリックで安否情報を確認でき、救助などのアクションにつなげられ、解決することができる」とする。
2017年10月1日に発生した米国ラスベガスの銃乱射事件では、22時08分に、ホテルの窓から音楽祭の観客に向けて銃乱射するという事件が発生。22時25分には警察が警告を発信しているが、Concur Locateでは22時59分に、レベル4のリスク情報として近くにいる従業員を自動的に抽出し、SNSなどにより安否を確認。23時18分には一部の従業員が支援を要求したため、23時23分に安全な場所に誘導したという。
「自動検知から20分以内に支援が必要な従業員を特定することができた。2017年6月3日の英国ロンドン橋テロ事件でも、自動検知から20分以内に従業員の安否確認が完了した」という。
2020年に2017年比で12倍の規模を目指す
なおコンカーは2017年に、Concur Travelの日本国内への投入により、出張管理事業に参入している。三村社長は、「2020年には、2017年比で12倍の規模にまで拡大したい。また(出張管理事業の)事業構成比を、現在の25%から40%にまで高める。これにより、遅れている日本の企業のビジネストラベルマネジメントの課題を解決したい」とする。
同社では、出張の事前申請ではConcur Request、海外出張予約ではConcur Travel、出張後の経費精算にはConcur Expense、分析にはBusiness Intelligenceを提供してきた。
今回、危機管理のConcur Locateと旅程管理のTripIt Proを加えるほか、2019年9月に出荷予定のTripLinkにより、国内出張に関して外部サイトと連携。海外主張および国内出張の機能を大幅に拡充することになる。
「国内出張も、外部サイトで予約しても、Concurで管理ができるようになる。旅程管理や危機管理を含めて、出張にすべてにかかわる作業をConcurで管理できるようになる」とした。
また、SAP Concurのエバハート プレジデントは、「日本は非常に重要な市場であり、米国以外では最大の市場。日本の顧客の成長を支援していきたい。2012年に最初のユーザーが導入して以来、年間96%の成長率をあげており、2018年も前年比74%の成長を遂げている。日本タクシーやJR東日本との連動、中小企業への本格的な導入も開始している。現在、20のアプリケーションパートナーを通じて、日本のための機能を搭載し、日本のためのソリューションを提供する環境が整っている」とした。
会見には、Concur Locateを先行導入している企業も参加した。
NECマネジメントパートナー 人事サービス事業部 事業部長代理の洲之内隆典氏は、「2017年末に、NECグループの出張管理システムの見直しにあわせて、経費精算の効率化、海外旅程情報の一元管理、旅費そのものの効率化を目的に、Concurを導入した。NECグループでは、月間約1000件の海外出張が発生している。北京の米国大使館爆破事件の際は、従来であれば誰が出張しているのかを確認するだけで1日かかるような状況であったが、半日以内で安否確認まで完了した」という。
また、アビームコンサルティング 執行役員 プリンシパル 情報システムグループ長の高橋誠司氏は、「当社には約5000人の社員がいるが、そのうち年間で約800人、延べ3000件の出張がある。安全配慮義務を怠ったために、有事の際に対応によっては従業員の家族から訴訟を起こされるリスクもある。また、従業員の離職につながることもある。従来は安否確認までで数時間、海外出張者の場合には1日かかっていたが、数分から数十分で安否確認までできるようになった。われわれの顧客も海外でのビジネスの比重を増やことが想定され、それに伴い、われわれの海外出張も増加する。安全配慮義務への取り組みを強化していく必要がある」と述べた。
一方、Concurのビジネスパートナーの1社であるJTBビジネストラベルソリューションズの中村一郎取締役 営業本部長氏は、「Concur Locateは、これまでのConcurの仕組みに、簡単にアドオンするだけで、有事のときに、管理者が出張者の安否確認することが可能になるサービス。Concurのビジネスパートナーとして、Concur Locateの広がりに力を注ぎたい」と述べた。