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レノボ、日本市場でのAIプラットフォーム事業戦略を発表
ストレージからソフトウェア、サーバーまでAI向けポートフォリオを大幅拡充
2018年3月7日 06:00
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ株式会社(以下、レノボ)は6日、AI/HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けソリューションに関する記者説明会を開催。
Lenovo AIプラットフォーム事業の事業戦略について説明するとともに、同日発表されたHPC/AI向けスケーラブルストレージ「IBM Spectrum Scale向け Lenovo 分散型ストレージ・ソリューション2.0」と、複雑なHPC/AI運用を簡素化するソフトウェア「Lenovo Intelligent Computing Orchestration(LiCO)」、および高密度水冷サーバー「Lenovo ThinkSystem SD650」の製品概要について紹介した。
レノボでは現在、ワールドワイドでAIの活用領域拡大に向けた投資を積極的に進めており、AIの研究開発分野、エンタープライズAIソリューション、AI活用の分野において1.2ビリオンドルの大規模投資を行うことを表明している。
この動きを踏まえて、レノボ 執行役員 パートナービジネス管掌 製品・パートナー営業統括本部長の橘一徳氏は、日本市場でのAIビジネスのビジョンについて、「日本では、人口減少にともなう労働力不足の補完や、雇用者報酬の上昇に向けた労働の付加価値化が課題となっている。こうした市場背景の中で、当社では“AUGMENTED INTELLIGENCE”をビジョンに掲げ、AI技術を使って人間の知能・知性を拡張し、労働力不足の解消や労働の付加価値化を支援していく」との方針を示した。
Lenovo AIプラットフォーム事業のビジネス戦略としては、「AIの活用領域を探す『Discover』、AI活用のシステムを開発する『Develop』、開発したAIシステムを展開・運用する『Deploy』の“3つのD”に向けて、それぞれアプローチを行っていく」(橘氏)という。
具体的には、「Discover」では、Lenovo AIイノベーションセンターを世界3都市に開設し、AI専門家とパートナーの連携によるエコシステムを展開する。「Develop」では、OSフレームワークとGPUコンピューティングを含めたAI向けソリューションスタックを提案する。そして「Deploy」では、新製品のHPC/AI向けソフトウェア「LiCO」を活用し、Webポータルやジョブスケジューリング、モニタリングなどのサービスを提供していくとしている。
さらに、これらのAIビジネス戦略を日本で展開するにあたって、GDEPソリューションズ株式会社および株式会社構造計画研究所と協業することも発表。「この協業では、Lenovo AIスタックと『LiCO』を活用したコンサルティングサービスやシステム構築サービス、テクニカルサービスを提供することに加え、共同マーケティングの展開や、営業活動での連携も行い、包括的にAIビジネスを推進していく」(橘氏)と説明した。
そして今回、AIビジネス戦略の本格展開に向けて、AI/HPC向けプラットフォームを大幅に拡充。HPC/AI向けのサーバーとディスクを組み合わせたスケーラブルストレージ「IBM Spectrum Scale向け Lenovo 分散型ストレージ・ソリューション2.0」と複雑なHPC/AI運用を簡素化するオーケストレーションソフトウェア「LiCO」、高密度水冷サーバー「Lenovo ThinkSystem SD650」を新たに発表した。
新たなスケーラブルストレージ
「IBM Spectrum Scale向け Lenovo 分散型ストレージ・ソリューション2.0」は、ハードウェアとソフトウェアをラックに組み込み、ケーブリングされた状態で提供され、すぐに使用することができるという。ストレージコントローラには、優れた性能と実績を持つIBM Spectrum Scaleソフトウェアを採用し、Lenovo ThinkSystem SR650上で動作する。OSにはRed Hat Enterprise Linuxを導入している。
ストレージエンクロージャには、SASで接続されるJBODを使用し、2.5型のエンクロージャや3.5型のエンクロージャを選択することが可能。拡張性に優れており、最大で1構成当たり504台のハードディスクを収納可能で、最大約5PBの大容量ストレージを提供できる。
ネットワークは、HPC/AIの顧客要件にあわせ、10/25/100Gigabit Ethernet、FDR/EDR InfiniBand、Intel Omni-Pathを選択でき、高速な性能要求にも対応することができる。同製品の正式発表は3月中を予定している。
HPC/AI向けのオーケストレーションソフト「LiCO」
「LiCO」は、ITエンジニアとAIエンジニアのスキルのすきまをつなぐHPC/AI向けのオーケストレーションソフトウェア。
レノボ ソリューション営業本部 サーバーエバンジェリストの早川哲郎氏は、「現在、多くの企業では、AI活用に向けて、データサイエンティストとIT技術者によるスキルエリアの断絶が起こっていると考えている。IT技術者はハードウェアやビッグデータのスキルがある一方で、データサイエンティストはアルゴリズムやソフトウェアのスキルを持っている。AIシステムを運用するためには、双方のスキルを融合させる必要がある」と、企業が抱えるAIシステム運用の課題を指摘する。
「この課題を解決するために開発したのが『LiCO』となる。同製品は、ジョブスケジューラや課金、クラスター管理、リソース監視・モニター・通知、ライブラリのソフトウェア配布などのオーケストレーション機能を搭載。また、わかりやすいインターフェイスのWebポータルを提供する。これにより、データサイエンティストでも簡単にAIシステムの運用を行うことができ、IT技術者もAIの学習実行を簡単に行えるようになる」と、早川氏は、「LiCO」の製品概要について説明した。
なお「LiCO」は現在開発中で、「今年4月をめどにリリースする予定」(早川氏)としている。
冷却効率に優れた高密度の常温水冷サーバー「ThinkSystem SD650」
「Lenovo ThinkSystem SD650」は、冷却効率に優れた高密度の常温水冷サーバー。レノボ 製品部 部長の金地秀夫氏は、「この製品は、直冷方式の『Direct Water Coolingテクノロジー』を採用し、最大50℃までの温水冷却、最大90%の熱除去効率を実現しているのが大きな特徴だ。これにより、前世代までの製品と比較して、過去最高の冷却効率を提供する。また、製品の導入に必要となる、CDU(Coolant Distribution Unit)などの冷却設備に関しては、国内市場では東亜電気工業との協業によって提供する」と、独自の水冷システムにより、最大90%の冷却効率を実現したと訴えた。
性能面については、インテルXeonスケーラブル・ファミリー・プロセッサを搭載し、水冷による高い冷却効率により、多くの場合でターボモードで動作することが可能。これにより空冷のサーバーと比べ、最大10%のパフォーマンスアップを実現した。また、NeXtScale n1200エンクロージャには6Uサイズに、最大12台のコンピュートノードを収容することができる。
コスト面では、優れた冷却性能を提供できることで、データセンター全体の冷却にかかわるエネルギーコストを最大40%削減することができるという。「当社の試算では、サーバー290台運用時の電気代を、空冷サーバーと水冷サーバー『Lenovo ThinkSystem SD650』で比較すると、水冷サーバーは年間で1550万円削減、5年運用時には7750万円も電気代を削減できることがわかった」(金地氏)と、コスト削減効果にも貢献できると強調していた。
高密度GPUサーバーでNVIDIA Tesla V100のサポートを開始
さらに今回、同社では、AI/HPC向けポートフォリオ拡充の一環として、高密度GPUサーバー「Lenovo ThinkSystem SD530」と「Lenovo ThinkSystem SR650」において、AIに最適なNVIDIA Tesla V100のサポートを開始したことを発表。これにあわせて、AI/HPCをすぐにスタートできる「AI/HPCかんたん導入パック ThinkSystem SR650 GPU Readyモデル」も用意するという。
記者説明会の最後には、AIビジネス戦略の展開でレノボと協業するGDEPソリューションズ 代表取締役の長崎敦司氏が登壇し、「当社は、NVIDIA社のパートナー制度の最上位であるElite Solution Provider認定を受け、GPUコンピューティングの導入、コンサルティングとともに、総合的なGPUソリューションを提供している。今回の協業にあたって、レノボの高密度GPUサーバーでNVIDIA Tesla V100がサポートされたことをうれしく思う。また、Lenovo AIスタックと『LiCO』を活用することで、短期間でAIシステムを運用開始できるようになると期待している。さらに、当社では、出資元でもありパートナー企業でもある構造計画研究所とコラボして、機械学習コンサルタントのサービスにも取り組んでいく」と、協業に向けて意欲を語った。