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IDC Japan、国内働き方改革ICT市場は2021年に2兆6622億円規模と予測

ITサービス/ビジネスサービスとソフトウェアが市場成長をけん引

 IDC Japan株式会社は1月17日、日本国内の働き方改革ICT市場を調査し、2016年の市場規模(支出額ベース)の分析と2017年から2021年の分野別市場予測を発表した。同日に行われた記者発表会では、ICTを活用した働き方改革ICT市場の最新状況と見通しについて、調査結果を交えながらIDC Japanのアナリストが説明した。

国内働き方改革ICT市場予測

 IDC Japanでは、ICT市場をハードウェア、ソフトウェア、ITサービス/ビジネスサービス、通信サービスに分類し市場規模を予測している。今回、これら4分野の中から、働き方改革の主目的である労働時間の短縮、労働生産性の向上、柔軟な働き方といった取り組みをサポートするICT市場の規模を積み上げ、働き方改革ICT市場として算出した。この結果、同市場は2016年から2021年の年間市場成長率(CAGR)が7.9%と高成長が見込まれ、2021年には2兆6622億円の規模に達すると予測した。

 IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏は、「働き方改革ICT市場の分野別の構成比率は、ハードウェアが最も多く2016年で50%弱を占めているが、成長率は低く、2021年には40%を切ると見ている。一方で、高い成長率が期待されるのが、ITサービス/ビジネスサービスとソフトウェアだ。ITサービス/ビジネスサービスは、2016年から2021年のCAGRが19.8%で、構成比率は2016年の約19%から2021年には25%弱まで拡大。ソフトウェアは、同CAGRが11.9%で、構成比率は2016年の22%から2021年には約25%に拡大すると予測している」と、働き方改革ICT市場全体の見通しを述べた。

IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏

 分野別の市場予測では、ハードウェア市場は、2021年に1兆358億円になると予測する。ハードウェア市場の内訳は、「ITインフラストラクチャ」、「スマートフォン」、「ノートブックPC、タブレット、モバイルシンクライアント端末」、「その他のハードウェア」となる。市川氏は、「2018年に市場規模1兆円を超えるものの、ノートブックPC、タブレット、スマートフォンの成長鈍化がハードウェア市場全体の成長を抑制し、2020年以降、市場は縮小傾向に転じる」としている。

国内働き方改革ハードウェア市場予測

 ソフトウェア市場は、2018年に5000億円を突破し、2021年には7030億円に達すると予測する。ソフトウェア市場の内訳は、「プロダクティビティ-Web会議/プレゼンス/IM」、「同-eメール/スケジュール」、「同-その他」、「CRMアプリケーション」、「ERMアプリケーション」、「SCMアプリケーション」、「セキュリティソフトウェア」、「エンタープライズモビリティ管理」、「RPA」、「クライアント仮想化ソリューション」、「その他」に細分化され、各分野で高成長が見込まれている。なお、「RPA」と「クライアント仮想化ソリューション」以外の分野については、すべてクラウド製品のみを対象としている。

国内働き方改革ソフトウェア市場予測

 ITサービス/ビジネスサービス市場は、2021年に5331億円に達し、4分野の中で最も高い成長率で市場が拡大すると見ている。また、通信サービス市場は、ほぼ横ばいで推移し、2021年の市場規模は3900億円と予測する。通信サービスの対象は、モバイル通信サービスの法人向けデータのみとなる。

国内働き方改革ITサービス/ビジネスサービス、通信サービス市場予測

 働き方改革ICT市場と一般的なICT市場の成長率の比較では、働き方改革ICT市場の伸びが顕著で、2016年から2021年のCAGRは、働き方改革ICT市場が7.9%であるのに対し、一般的なICT市場は2.1%にとどまるとの見通しを示した。

 次に、市川氏は、同社が実施した働き方改革に関するユーザー調査の結果について紹介。「働き方改革の実施目的は、『労働生産性の向上』と『残業時間の短縮』の2つが上位を占めた。しかし、実際に行っている働き方改革については、『残業時間の短縮』が圧倒的で、ICTを利用した抜本的な生産性向上や柔軟な働き方の実現への道のりは遠いのが実情である」と指摘する。

働き方改革の実施内容

 「その背景として、労働生産性向上に必須となる汎用業務ソフトの社外利用がほとんどできていない現実がある。また、ノートPCについても、大企業の約8割、中堅中小企業の約5割が社外への持ち出しを制限している。そして、月に数回以上、仕事を自宅に持ち帰る人のうち4割以上が、会社がPCの持ち出しを禁止しているため自分のPCを使用して仕事をしていると回答していた」と、働き方改革のためのIT活用が十分ではない企業が多いことが明らかになったという。

会社貸与のPCを使わない理由について

 こうした働き方改革ICT市場の現状を踏まえたうえで、市川氏は、「今後、ICTベンダーは、ICTの活用による働き方改革のユースケースを継続して発表するとともに、成果を数値で提示することによって、ユーザー企業のICT導入のきっかけを提供していく必要がある」と提言。「さらに、働き方改革を成功させ、その成果を持続させるためには、ICTの導入や活用にとどまらない視点での改革も重要だ。例えば、企業文化や人材、評価制度、勤務形態など広範囲な領域を含む改革を視野に入れて取り組んでいくことも必要になる」との考えを述べた。