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「働き方改革」には80%以上の企業が取り組むも、労働時間削減施策が中心で、生産性向上やデジタル活用には課題~日本オラクル

 日本オラクル株式会社は1日、企業の管理職を対象にした働き方改革とデジタル活用に関する調査結果を発表した。働き方改革に取り組んでいる企業が80%以上を占める一方、取り組みとしては残業時間の削減や有給休暇取得促進など労働時間削減施策が多く、ビジネス成長を意識した生産性向上への取り組みや、デジタル活用については課題があることが明らかになったとしている。

 調査は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科岩本研究室の協力により、従業員100人以上の国内企業で働く部長職以上の管理職412人を対象として、2017年10月に実施したもの。企業経営者、管理職による働き方改革の現状認識を明らかにし、働き方改革による生産性向上を実現するための課題を特定することを調査の目的としており、さらに、生産性向上のためのデジタル活用度合い、具体的な活用領域や今後期待する領域なども調査した。

 働き方改革の目的については、「生産性向上」(48.7%)、「ワークライフバランスの実現」(44.9%)、「コンプライアンス遵守」(41.3%)の3項目が上位となった。働き方改革本来の目的が「生産性向上」であるという認識は十分にされている一方で、それ以外に高い回答率を得たのは、働き方改革関連法案への対応、社員の働く環境改善、健康増進や満足度向上などで、自社の持続的成長や競争力強化など「生産性向上」によるビジネス成長を直接的に示唆する回答は少ない。

 働き方改革の効果については、効果が出ているという回答は45%で、効果が出ていないという回答は46%となった。働き方改革の主目的は「生産性向上」と認識しているにも関わらず、「生産性を測定する仕組みの有効度合い」については77%が「十分ではない」と回答、生産性と人事評価の連動度合いについては80%が「十分ではない」と回答しており、生産性向上を目指す一方で、実際に働く従業員の評価とは連動していないとしている。

 働き方改革の具体的な取り組みでうまくいっているものとしては、「残業時間の削減」(57.8%)、「有給休暇の消化促進」(38.7%)、「女性活躍の支援」(30.2%)の3項目が上位で、その後には「オフィス環境の整備」などが続き、労働環境の改善が取り組みの中心となっている。

 働き方改革としてうまくいっていない取り組みとその要因としては、「人事評価指標・方法の変更」(22.5%)、「柔軟な勤務制度の導入」(22.9%)、「残業時間の削減」 (19.9%)が上位に挙がった。労働時間の削減をはじめ、労働環境改善については積極的に取り組んでいる一方で、うまくいっていないという回答の上位にも挙がっている。この点については、実際の業務量を減らすための取り組みを行っていないにもかかわらず、労働時間だけを削減するのは、結果的に無理が生じていると感じている人が多いと考えられるとしている。

 デジタル活用の現状としては、「積極的に活用している」という回答は7%にとどまっており、51%が「活用していない」もしくは「あまり活用していない」と回答している。また、「活用している」と回答した中での具体的なデジタルツールとしては、「経理・財務システム」「グループウェア」「ビデオ会議システム」が上位に挙げられている。働き方改革以前からのデジタル活用と大きな変化は見られず、「生産性向上」のためにデジタルを積極的に活用しようという動きはまだ鈍いと考えられるとしている。

 一方で、今後デジタルが企業の将来的な成長に貢献すると思うという回答は74%を占めており、中期的にIoT、ビッグデータ、ロボット/RPA、AIなどの最新テクノロジーによって生産性を向上したい分野としては、販売・営業業務と製造・生産業務が上位を占めた。

 調査について、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授は、「日本企業は労働時間で勝負するフェーズから生産性で勝負するフェーズに移行する必要性に迫られていると言えます。そのためにまず、生産性をどのように測るのか、測った上で生産性をどのように向上させるのかを考えなければいけません。生産性を測るには、現在分散して管理されている、人材に関するデータ、従業員の行動に関するデータ、企業の業績に関するデータなどを連携させて統合的にデータマネジメントが必要になります。それに連動し、人事評価制度も時間に代わる評価指標を作ることが必須です。さらに、デジタルへの取り組みとしては、テクノロジーを活用することが目的ではなく、従業員一人一人が、わくわく、活き活きと仕事をすることをサポートするものでなければなりません。最先端のテクノロジーを活用することで、従業員を単純労働から解放し、付加価値の高い仕事に集中できる環境を構築することが必要不可欠です」と述べている。

 日本オラクルでは、SaaS群「Oracle Cloud Applications」を強化し、デジタル活用による業務効率化とイノベーションによる成長促進の両面で企業の働き方改革を支援すると説明。また、AIの仕組みである「Oracle Adaptive Intelligence」や「Oracle Intelligent Bots」、「Oracle IoT Apps」といった最新テクノロジーと、社内外の膨大なデータ、企業に必要な業務を網羅的かつ統合的に提供するオラクルのSaaSを組み合わせることが可能になり、より高度で革新的な業務の実現に貢献するとしている。