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KDDIとシスコ、クラウド型のコミュニケーションサービス「Cisco Spark」提供で協業

固定電話番号による音声通話サービスも7月より提供

 KDDI株式会社とシスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は13日、ビデオ会議などビジネスコミュニケーションを統合したクラウドサービス「Cisco Spark」の提供で協業することを発表した。この協業により、KDDIは2017年7月より「Cisco Spark」および、オールインワンの電子会議製品「Cisco Spark Board」の提供を開始する。

 また、KDDIはクラウドPBX機能を利用した新しい音声通信サービス「Cisco Spark」コーリングを7月より開始することも明らかにした。

新しい会議のあり方を提案する「Cisco Spark」

 シスコ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏は、「日本政府は一億総活躍社会の実現に向け、さまざまな施策を行っている。その中でも最大のチャレンジは"働き方改革"であり、その支援はシスコの重点戦略のひとつ。Cisco Sparkは新しい会議のあり方を提案し、会議改革から企業の働き方改革を支援する仕組み」と述べた。

 さらに鈴木氏はKDDIとの協業について「この最先端の会議システムの恩恵を最も享受できるのは中堅中小企業」と述べた上で、「KDDIは音声通信のマーケットリーダーであり、中堅中小企業に確固たる販売基盤を持っている」と説明した。

シスコ 代表執行役員社長の鈴木みゆき氏

 KDDI 取締役 執行役員常務 ソリューション事業本部長の東海林崇氏は、「電子会議システム製品やソリューションは数多くあるが、その多くは個別ソリューションで、構築には作り込みが必要になるものがほとんど。しかし、Cisco Sparkは、デバイスとインターネットの接続さえあれば、誰でも簡単に始めることができる。今のところ、これほど簡単に導入可能な電子会議の仕組みは、Cisco Spark以外にはない」と高い評価を示した。

KDDI 取締役 執行役員常務 ソリューション事業本部長の東海林崇氏

オールインワンで電子会議を実現する「Cisco Spark Board」

 2017年1月に発表され、国内では4月よりで順次提供が開始されるCisco Spark Boardは、ワイヤレス プレゼンテーション、デジタル ホワイトボード、ビデオカンファレンスなど電子会議に必要な機能をオールインワンで実現する製品だ。

 Cisco Sparkアプリが導入されたPCやスマートフォンなどを持ってCisco Spark Boardに近づくだけで、自動的にペアリングが実行され、すぐにCisco Sparkによる電子会議を始めることができる。ペアリングには超音波無線が利用されており、BluetoothやWi-Fi接続などの設定は必要ない。

 Cisco Sparkはクラウドを利用した電子会議システムなので、リモートからはCisco SparkアプリやCisco WebEXを利用して参加する。ホワイトボードをはじめとする会議内容はクラウド上で共有・保存されるため、休憩を挟んでも前回終了時の内容を何度でも呼び出すことができる。

 個々の操作を含めてあらゆる作業内容は暗号化されている。ホワイトボードの一筆ごとに別の暗号を使用するなど、シスコは電子会議の安全性に非常にこだわっており、一つの通信内容が漏洩したとしても全体を把握することは非常に難しい仕組みになっている。また、ペアリングした端末が一定距離以上離れると、Cisco Spark Boardは自動的に会議画面をクローズするため、実際の会議室でおこりがちな「ホワイトボードの消し忘れによる情報漏えい」の心配もない。

 Cisco Spark Boardの55インチ バージョンの国内提供は4月から順次開始され、大型の70インチ バージョンも、本年度中に発売される予定となっている。価格は55インチバージョンの市場想定価格が50万円台からとなっており、別途サブスクリプション料金と、参加者のCisco Sparkアプリの料金が必要。ただし、Cisco Sparkアプリは無償版も用意されており、自分から会議を開催できないなどの機能制限はあるものの、会議に参加するだけであれば無償版だけでも問題ない。

デジタルホワイトボードを含む電子会議システムのオールインワン製品「Cisco Spark Board」(55インチ バージョン)

 さらにシスコは、高性能マイクとスピーカー、5Kセンサーを搭載したカメラをビルトインしたビデオ会議システム「Cisco Spark Kit」および「Cisco Spark Kit Plus」についても、5月を目処に提供を開始するという。ユーザーが用意したモニターとCisco Spark Kitを接続するだけで、簡単に5Kの鮮明な映像を使用したビデオ会議を始めることができる。

 Cisco Spark Kitは、顔認識技術によって参加者を自動で認識し、自動で拡大する機能を搭載しているため、すでに開始している会議に新たな参加者が加わると、自動でズームアウトして参加者をカメラ内に映るように調整し、逆に途中退出によって人数が減った場合には最少人数だけが映るよう自動でズームインすることができる。

マイク、スピーカー、カメラをビルトインした「Cisco Spark Kit」および「Cisco Spark Kit Plus」

 Cisco Spark Boardおよび、Cisco Spark Kitについて、シスコ コラボレーションアーキテクチャ事業担当 執行役員のアーウィン・マッティ氏は、「13年ほどコラボレーション事業を展開してきたが、ようやく私たちの製品ポートフォリオが働き方改革に貢献できるようになった」と述べ、長年の実績に裏付けられた製品への自信を滲ませた。

シスコ コラボレーションアーキテクチャ事業担当 執行役員のアーウィン・マッティ氏

長年の経験に裏付けられた会議音質の高さ

 また、KDDIが表明した「Cisco Spark」コーリングは、Cisco Spark CloudとKDDI音声基盤を連携することで、固定電話番号による音声通話サービスだ。クラウド上にあるPBX機能を利用し、オフィス内に固定電話回線やPBXの設備を設置することなく音声通話環境を実現するという。

 Cisco Spark Cloudを利用する理由について東海林氏は、「コミュニケーションにおいて、まだまだ音声通信は重要な役割を担っている。長年の経験に培われたシスコの音声通信は、とにかく質が高い」と説明した。

7月より提供開始予定の「Cisco Spark」コーリング。固定電話回線やPBXを設置することなく、東京03や大阪06など固定電話の番号を利用できる。

 Cisco Spark コーリングの提供時期について東海林氏は、「7月以降でなるべく早くと思っているが、まだはっきりとした時期は明言できない」としている。