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NTT、病態悪化につながる患者の「受診中断」をAIで予測するモデルを開発

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は3日、NTTグループのAI技術「corevo」の1つとして、東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野、東京大学医学部附属病院企画情報運営部大江和彦教授らの研究グループと共同で、約900人の糖尿病患者の電子カルテデータを利用して、糖尿病患者の症状が悪化する原因の1つである患者行動「受診中断」を機械学習技術により予測するモデルを構築したと発表した。

 糖尿病患者には治療の継続が求められるが、糖尿病外来患者の約1割が受診を中断し、合併症の発症後、病態が悪化してから受診を再開するというケースが多いことが問題となっている。

 従来研究では受診中断の因子を明らかにするため、属性や検査値から受診中断者の特徴に関する調査が行われているが、受診中断にはさまざまな要因が考えられるため、医師が積極的に支援すべき患者を個人にまで絞り込み、支援することができずにいた。

予測モデル概要図

 そこでNTTと東大では、個人の電子カルテデータをもとに、受診中断を予測するAIの構築に着手。予測精度を高めるため、東大の医療データ分析や臨床での患者への指導に関する知見を参考にして生成した特徴量と、NTTがこれまで培ってきたAI技術「corevo」における機械学習に関する知見をもとにモデルを構築した。

 モデルは、電子カルテデータやそこから生成された特徴量を入力して、予約不履行(受診が途絶えるきっかけとなり得る予約外来の不受診)と、受診中断リスク順位(将来の受診中断日までの日数の長さによる患者の順位付け)の2つを予測する。

入力データの例

 このモデルを、2011年から2014年にかけて東京大学医学部附属病院に糖尿病の治療で通院している患者約900人の電子カルテデータを用いて評価したところ、優れた予測性能を確認した。精度としては、不受診となった予約のうちの7割を予測できており、また、新たに予約登録日や予約日の曜日、予約登録日と予約日の間隔など、これまで医師が気付かなかった患者の予約行動に関わる項目が、予測に影響を与えていることも分かったという。

 予測結果をもとに、受診中断を避けるために積極的に支援すべき患者の絞り込みや、支援を開始すべき時期の見極め、支援の度合いの調整が可能となることから、医師の診療支援、ひいては患者の病態の維持・改善につながることが期待できるとしている。