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Microsoft Azureの課題は機能ではなくマインドシェア? マイクロソフト平野拓也社長
2017年度下半期の方針説明会を開催、AIへの注力もアピール
2017年1月18日 15:13
日本マイクロソフト株式会社は18日、同社2017年度(2017年6月期)の上半期が終了したことを受け、その半年を総括するとともに、下半期に向けた方針を説明する記者会見を開催した。
その中で平野拓也社長は、2017年度がスタートする際に重要なテーマとして取り上げた「お客さまのデジタルトランスフォーメーションを支援すること」にあらためて言及。「(この半年で)変革のスピードはいっそう速くなり、お客さまも大きな関心を持って進めている。これを推進するにあたっては、クラウド、AIのインテリジェンスをどう高めていくかが重要だ。2017年は、AIにドライブをかけるという意味で大切な年になる」と述べた。
ここで触れられたAIは、いま一番注目が高まっている分野でもあり、Microsoft本社でも、2016年9月、5000人以上のコンピュータサイエンティストとエンジニアを結集した研究組織「Microsoft AI and Research Group」を設立し、研究開発に力を注いでいる。
平野社長はこのAIについて、「当社にとって新しいものではなく、25年前から継続してかかわってきた分野だ。1100件のAI関連の特許を持っているが、これは2位のGoogleの倍という客観的なデータもある(編集注:韓国・情報通信技術振興センターの調査データ)。蓄積されたデータや経験などもあり、AIに関する人材を5000人束ねてフォーカスする形で編成したので、それによるアウトプットも期待できる」と述べ、この分野でさらに他社をリードできているとアピールする。
実際に、資生堂との協力のもと、首都圏のドラッグストアでの実証実験を2016年10月より開始するなど、さまざまな取り組みが開始されており、今後も実ビジネスへの適用を目指して研究開発が進んでいきそうだ。
ただし平野社長によると、「さまざまなお客さまと話すと、AIはお金を持っていないとできないんじゃないか、うちみたいな企業はまだまだだろう」と言われることも多いという。しかし、「当社のコンセプトはWindowsを見てもらえばわかるはず。誰もが使えるモノにしていくために、販売推進、マーケティングをしっかりやっていきたい」と話し、“みんなのAI”を目指す考えを示した。
一方で、「軽い用途ばかりで、エンタープライズには耐えられないのではないか、という声もあるが、金融機関で使われたり、大学でもガンの研究に使っていただいている」とし、適用の幅が広い点もアピールしていた。
また、日本マイクロソフトが継続して注力してきた“働き方改革”でも、AIによる成果があったという。「これまではテレワークやコミュニケーション、コラボレーションといった面に焦点をあてた働き方改革だったが、ここにもAIを活用できる。例えば、個々の働き方、あるいはチームの働き方をテクノロジーを通して理解し、洞察し、こういうふうに働いたらインパクトがあるのではないか、ということをAIから提案する」とのことで、2月にも詳細を発表するとのこと。
平野社長は、「気付きを従業員に提供することにより、長時間労働の課題も解決できるかもしれないし、ワークライフバランスの向上も期待できるのではないか」と、その価値を説明した。
AI以外のテクノロジーでは、MR(Mixed Reality)デバイス「HoloLens」を取り上げた。我々が普段見ている世界にVR(仮想現実)を融合したMRによって、これまでとまったく異なるアプリケーションの誕生が期待されている分野。日本企業では、日本航空(JAL)がパイロットやエンジニアのトレーニングに利用している事例が公開されており、いよいよ、1月18日から一般向けの出荷が開始される。
国内でも、すでに相当の関心を集めているそうで、初動オーダーの実績は、日本1カ国で、米国を除くほかの6カ国を合わせた数の3倍になっているとのこと。特に、開発者向けが圧倒的に他国よりも多いという。
これについて平野社長は、「さまざまなビジネスモデルで使いたいという関心の高さを感じる。オリンピックを控えているので建設業からの需要が高いし、日本の強みである製造業、またヘルスケアの研究、医療現場、教育などで注目されている。デジタルトランスフォーメーションの推進の中でのキーテクノロジーとして重要になってくるだろう」という考えを示した。
なお、2017年度の方針として、2016年度第4四半期で32%だった売上高におけるクラウドの構成比率を50%に引き上げることが注目を集めている。これについては、「50%という数字が重要なのではなく、そのくらいになれば社内のメインストリーム化され、より注力ができる。また、クラウドは(売って終わりではなく)お客さまに使っていただかないと売上にならないので、対話を行いやすいということもある。AIなどのホワイトスペースはまだまだあるので、あと半年弱で何とか50%へ持って行きたい」とした。
すでに、Microsoft Azureの機能については相当の自信を持っているそうで、「Azureの機能、あるいはできることは充実しており、当社ができなくてこの会社ならできる、という会話は聞かなくなっている。価格も競合できるものだし、(日本マイクロソフト自身も)信頼される会社としてライバルの先に立っていると思う。問題は(Azureと競合との)マインドシェア。きちんと商談に上がった時には、自信を持てるデータが実績として上がっているので、今後はマインドシェアをしっかり取っていくことになる」と述べ、企業に対して、しっかりとしたブランディング活動をしていくとした。