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AWSジャパン、L7対応アプリケーションロードバランサーなどのアップデートを発表
2016年9月13日 11:36
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(以下、AWSジャパン)は14日、報道関係者向けブリーフィングを開催し、8月に米ニューヨークで行われた「AWS Summit New York」でのアップデート内容の説明を行った。
説明を行ったのは、AWSジャパン 技術本部 エンタープライズソリューション部 部長/シニアソリューションアーキテクトの瀧澤与一氏。
最新の導入事例を紹介
ニューヨークでの発表のアップデートの前に、瀧澤氏は国内顧客の直近事例をいくつか紹介している。AWSジャパンはこの2カ月ほどで10以上の顧客事例を発表しており、ジャパンネット銀行や岡三オンライン証券、ウェルスナビといった金融/FinTech業界から、ミクシィ、レコチョクといったエンターテインメント業界まで、その分野は多岐にわたる。
単に既存環境をAWSクラウドに移行したというだけでなく、クラウドならではのIT活用を進める"クラウドジャーニー"を実感させる事例が多いのも特徴的だ。
ジャパンネット銀行
全行員が利用するActive Directory、Exchange、ファイルサーバーなどを含むすべてのOAサーバーをAWS上に移行。オンプレミスと比較して5年で20%のコスト削減を実現した。従来のセキュリティポリシーを踏襲したシステムを構築し、金融機関に求められるセキュリティ基準もクリア。
ウェルスナビ
昨年の今ごろはまだ金融庁からの認可も下りていなかったFinTechのスタートアップ。AWSクラウドの幅広いサービスとプロフェッショナルサービスを駆使し、FISCガイドラインに沿ったシステム構築をスピーディに実現し、すでに一般向けにサービスを提供開始。
ミクシィ
100種類以上/2000サーバーをAWS上に移行、AWS Direct ConnectとAmazon VPCを組み合わせてプライベートクラウドと同じ環境を実現。ソーシャルネットワークからコンテンツビジネスへとビジネスモデルの転換を図る中にあって、画像データの増加に悩まされていたが、AWSに移行したことでストレージサーバの増設が不要になり、従来の約30%にラック数を縮小。
岡三オンライン証券
サーバーレスアーキテクチャのLambdaを採用したことにより、わずか1カ月で計画/開発/リリースまで完了。運用コストも1/7まで削減。「金融機関でのサーバーレスアーキテクチャ採用というきわめてレアなケース」(瀧澤氏)。
Application Load Balancerなどの最新サービスを紹介
AWSは10年前のサービスローンチ以来、つねにイノベーションの手を止めることなく、そのスピードを加速させてきた。この10年での新機能追加/アップデートの数は2420にも上り、2016年は「8月1日時点で524もの新しい機能とサービスを発表済み」(瀧澤氏)という。2015年の年間アップデート数が722だったことを考えると、年内にその数を上回ることは間違いない。
8月に行われた「AWS Summit New York」でも、そのイノベーションのスピードが止まらないことを示す、多くのサービスが発表された。その中でももっとも注目度が高かったのは、クラウドロードバランサー「Amazon Elastic Load Balancer(ELB)」の一メニューとして提供される「Application Load Balancer(ALB)」だろう。
名前の通り、アプリケーションロードバランサーとして機能する負荷分散サービスで、「コンテンツの中味(URL)までをチェックして負荷を振り分け、優先順位も設定可能」(瀧澤氏)なレイヤ7対応のルーティングを提供する。コンテナベースのアプリケーションサポートのほか、プロトコルとしてWebSocketとHTTP/2をサポート、さらに複数のアベイラビリティゾーンにまたがって、高レベルの耐障害性を実現している。従来のELB同様、キャパシティの増減も自動で行われる。
ALBの提供開始にともない、これまでAmazon ELBとして提供されていたレイヤ4対応のロードバランサーは「Classic Load Balancer(CLB)」に名称が変更され、ALBと併存するかたちで引き続きサービスが提供される。
もうひとつ、ニューヨークでの発表で大きく注目されたサービスが「Amazon Kinesis Analytics」のローンチだ。AWSはセンサーデータなどのストリーミングデータを扱うマネージドサービスとして「Amazon Kinesis Streams」「Amazon Kinesis Firehose」をすでに提供してきており、国内事例としてはあきんどスシローのケースなどがよく知られているが、今回新たに、収集したストリーミングデータを標準的なSQLで分析するアナリティクスサービスがKinesisファミリに加わったことになる。秒以下のレイテンシでストリーミングデータを連続的に「標準的なSQLでもって処理したいという顧客からの強いニーズ」を反映したサービスで、IoTやゲーム、広告/マーケティングといった分野での利用が期待されている。
その他のアップデート
このほか、瀧澤氏はニューヨークでのサミットにおけるいくつかの主要アップデートを追加で紹介している。
AWS Import/Export Snowball
「AWS re:Invent 2015」で発表された、大量データをAWSクラウドに持ち込み/持ち出しするためのアプライアンス。今回、新機能として「Snowballジョブ管理API」と「Snoball S3アダプタ(アプライアンスをS3エンドポイントとして扱うアダプタ)」が追加。「日本の顧客からの要望も大きいので、年内には東京リージョンでも提供できるようにしたいと思っている」(瀧澤氏)。
Amazon API Gateway
APIの作成/配布/保守/監視/保護を行うサービス。スロットリングやクォータなどのAPIアクセスをコントロールすることで、使用量にもとづいて課金することが可能に。
Amazon Elastic Block Storage
1GBあたりの最大IOPSが30IOPSから50IOPSにまで指定可能に。たとえば2万IOPSを指定するならこれまでの最低667GBから400GBまで削減。また全リージョンにわたってスナップショットストレージの費用が47%値下げに。
Amazon S3
IPv6を新たにサポート(新デュアルスタックエンドポイントに切り替えが必要)
Amazon Key Management Service
ユーザーが自前の暗号鍵を持ち込むことができる「Bring Your Own Keys」機能を追加。鍵の保管場所としてAWSを選びながらも、鍵に対するローカルコントロールを維持したいというニーズに応えたもの。「コンテンツプロバイダや金融機関など、重要なコンテンツなどをより安全に格納したいという暗号鍵に対するニーズが非常に高まっている」(瀧澤氏)。
Transit VPC
2つ以上のリージョンをまたいだプライベートネットワークを構築。
Amazon Workspaces
既存のモード(AlwaysON)の月額払いのほかに、時間単位の課金モード(AutoStop)が選択可能に。さらにルートボリューム(Cドライブ)が60GBから80GBに拡大したほか、Windows 10のライセンス持ち込み(Bring Your Own License)が可能になった。
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このように、数多くのアップデートが発表されたニューヨークでのサミットだが、11月28日~12月2日には、AWS最大の年次カンファレンスである「AWS re:Invent 2016」が例年通り米国ラスベガスで開催される。
会場を新たに追加するなど過去最大の規模となる今回のre:Inventでは、ニューヨークでの発表を超える大きな新サービスやアップデートの発表が期待されている。