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ラリー・エリソンCTOが語る、Oracle Cloudの6つの設計目標

Oracle OpenWorld 2015基調講演レポート

 米Oracle Corporationは米国サンフランシスコで10月25~29日(米国時間)の5日間にわたり、「Oracle OpenWorld(OOW) 2015」を開催中だ。事前登録に基づく来場者数は141カ国から6万人と発表されている。

 日曜日である25日の夕方には、実質的な開幕宣言と位置づけられる基調講演が行われた。全体は2部構成に分けられ、前半はIntelのCEO、Brian Krzanich(ブライアン・クルザニッチ)氏の講演、後半はOracleの創業者で、現在は経営執行役会長兼CTOのLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏の講演が行われた。

Exadataの価値をアピール

 IntelのBrian Krzanich氏は同社のSVP and GM, Software and Services GroupのDoug Fisher氏と共に、Oracleと共同で取り組んでいる新プロジェクト、“Project Apollo”について紹介した。このプロジェクトでは、Oracle Cloudの最適化にOracleと共同で取り組むことで大幅なパフォーマンス向上を果たしており、クラウドへの移行を検討しているエンタープライズユーザー向けに、最高の価値のクラウド環境を提供することを意図しているという。なお、Project Apolloの詳細説明は@@link|http://blogs.intel.com/evangelists/2015/10/25/project-apollo-optimizing-cloud-performance/
|Intelのエバンジェリストのブログ@@でも同日付で記事が公開されている。

 この発表を受けて登壇したOracleのCEO、Mark Hurd(マーク・ハード)氏は、「従来のデータセンターはIBM流の巨大で高価なものだった」と位置づけた上で、IntelとOracleの協業による成果であるExadataに移行することで、よりハイパフォーマンスでコストも大幅に削減できる新たなデータセンター環境を利用可能になるとした。

基調講演を行ったIntelのCEO、Brian Krzanich氏
Intelの基調講演前に簡単なあいさつを行ったOracleのCEO、Mark Hurd氏
Project Apolloについての説明を行うIntelのBrian Krzanich氏(左)と同じくIntelのSVP and GM, Software and Services GroupのDoug Fisher氏(右)
Project Apolloによるパフォーマンス向上の実績。最大で10倍といった大きな数字が挙げられている
IBMが作り上げてきたこれまでのデータセンター像からの脱却について語るOracleのCEO、Mark Hurd氏

それぞれの領域での競合関係が変化している

 後半のLarry Ellison氏の講演では、クラウドへのシフトを果たしたOracleが現在どのような考え方に基づいてクラウドに取り組んでいるのかが丁寧に語られた。

 同氏はまず、クラウド事業を「アプリケーション、プラットフォーム、インフラストラクチャの3領域にまたがる新時代のユーティリティ・コンピューティング」(The Cloud: A New Era of Utility Computing, Applications, Platform, Infrastructure)と説明した上で、それぞれの領域での競合関係が以前とは変化したことを明確にした。

 アプリケーションの分野での競合はSalesforceやWorkDayであり、SAPではなくなった。プラットフォームでの競合はMicrosoftであり、IBMではなくなった。インフラストラクチャの競合はAmazonであり、IBM/EMCではなくなった。結果として、Oracleが20年来競合と位置づけてきたIBMとSAPは競合とは見なされなくなったという。分かりやすく言い換えるなら、「もうIBMやSAPは相手にしない」という宣言だと受け止めて良さそうだ。

 同氏は、Oracle Cloudの6つの“設計目標(Design Goals)”として、“コスト(Cost)”“信頼性(Reliability)”“性能(Performance)”“標準準拠(Standards)”“互換性(Compatibility)”“セキュリティ(Security)”の6分野について目指すところを明らかにした。コストでは、導入価格/TCOの両方で最低価格、信頼性はフォールトトレラントを実現し、単一障害点(Single Point of Failure)を排除する、性能では、データベース、ミドルウェア、データ分析で最高速を実現、標準はSQL、Hadoop、NoSQL、Java、Ruby、Node.js、Linux、Dockerといった業界標準をサポートしていく、互換性ではオンプレミスとクラウドとの間でワークロードを簡単に移動できるようにする、そしてセキュリティではサイバー攻撃からの防御を常に提供し続ける、といった内容となっている。

 続いて同氏は、今回のOOWの期間中に発表されるさまざまな新製品や新機能などについてプレビュー的に紹介していった。あまりに数が膨大で、予定された1時間の講演時間を30分近く超過するほどだったが、ここですべては紹介しきれないため詳細は省略する。

 今回特に注目度が高いと思われる発表としては、「Oracle SCM Cloudの提供」「Oracle Application Builder Cloud Serviceの発表」「Oracle Multitenant Database Cloud」などが挙げられると思われるが、これらについてはより詳細に説明されるであろう後日の分野別の基調講演の際にあらためて触れることとしたい。

後半の基調講演に登壇したOracleの経営執行役会長兼CTOのLarry Ellison氏。来場者からの人気は相変わらずで、開場前には長蛇の列ができていた
Ellison氏が挙げたOracle Cloudの6つの設計目標(Six Design Goals)

渡邉 利和