ラリー・エリソンCEO、IaaSやOracle Database 12cを発表~Oracle Open World 2012が開幕

富士通が次世代SPARC64プロセッサ「Athena」に言及


 米国時間の9月30日、Oracle Open World San Francisco 2012が、米カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニ・コンベンションセンターで開幕した。

 全世界117カ国から約5万人が事前に登録。期間中には、オンラインを通じて100万人を超える参加が見込まれているという。

 また、期間中には、2100以上のセッション、400の製品デモのほか、展示会場には450社のパートナー企業が出展。アプリケーション、ミドルウェア、データベース、サーバー、ストレージシステムなど、同社の多岐にわたる製品およびソリューションが展示され、18回目となる今回も、「過去最大規模」を更新するものとなった。

 初日となる30日午後5時(米国時間)から行われた基調講演では、米Oracleのラリー・エリソンCEOが登壇。「今日は4つの新たな製品を発表する」として、Oracle CloudにおけるIaaSの提供、2013年に出荷予定のOracle Database 12cなど、新たな製品を次々の紹介していった。


米サンフランシスコで開催されているOracle Open World San Francisco 2012

 

新たにIaaS型サービスに進出

米Oracleのラリー・エリソンCEO

 Oracle Cloudでは、SaaS、PaaSに加えて、新たにIaaSを追加。「Oracleが提供するのはコモディティ化したインフラではなく、OS、仮想化環境、コンピュータサービス、ストレージサービスを、Exadata、Exalogic、SuperClusterなどによって構成するEngineered Systemにより、最もセキュリティの高い環境で提供する点が特徴となる。これは、Oracleにとって、ハードウェアおよびソフトウェアのサプライヤーとしての強みを活用するだけでなく、新たなビジネスを追加していくものになる」などとした。

 また、具体的なサービスとして、Oracle Private Cloudを発表。ここでは、CRMやHCM、ERPといったFusion SaaSアプリケーションだけにとどまらず、e-Business Suite、Peoplesoft、Siebelなとのアプリケーション、あるいは顧客が開発したカスタムアプリケーションも動作できるという。「すべてが業界のスタンダードによって構成されているサービスであり、柔軟性、セキュリティの高さが特徴。新たなアプリケーションをOracle Private Cloud上で開発してもらうことができるほか、Oracle Cloudで開発したものをOracle Private Cloudに移行できる。Oracle Private Cloudでは、多くのサービス、オプションを用意している」と語った。


新たにIaaSがラインアップされるOracle Private Cloudを発表

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Oracle Database 12cは2013年に登場

 また、Oracle Databaseの新たな製品として、「Oracle Database 12c」を発表した。「c」はクラウドの頭文字だという。

 「Oracleは2004年にクラウドに移行すると宣言しており、新たな基盤が必要となっていた。Oracle Database 12cは、4年以上をかけて開発してきたクラウド時代に向けたマルチテナント型のデータベース。ここではコンテナデータベースという概念を提案しており、コンテナが個別にプラガブル(Pluggable)データベースを収納し、ひとつのデータベースでありながらも、複数の利用者が活用できるようになる。アプリケーションレベルのマルチテナントではなく、データベースそのものがマルチテナント型となり、セキュアな状態を作りだすことができ、運用の効率性もあがる。2013年にも、Oracle Database 12cを出荷する予定である」とした。


Oracle Database 12cを発表

 さらに、Exadataの新たな製品として、Exadata X3を発表した。

 1ラックのなかに、4TBのDRAMと、22TBのフラッシュメモリをあわせ、26TBのメモリを搭載。10倍の圧縮技術により、220TBのデータベースをメモリ上に格納できる。

 「Exadata X2のときには、これ以上、速さは必要ないといわれたが、Exadata X3ではさらに速さを追求した。これは、Oracle CloudやOracle Private Cloudのインフラにもなる製品。従来のX2に比べて、フラッシュメモリは4倍となり、書き込み性能は20倍に上昇するが、価格は同じで、電力消費は下がる。マルチテナントとマナーという2つのMが特徴になる」などアピール。

 他社製品に比べて3倍の速さを特徴とし、先ごろ発表されたEMCのVMAX 40Kに比べてもExadata X3の方がさらに高速であること、IBMのP780など同等の性能を持ったサーバーと比べても、約8分の1の価格で収まることなどを示し、「当社の営業と交渉すれば、たくさん売りたいはずなので、もっと安くしてくれるだろう」などと語り、会場の笑いを誘った。

Oracle ExadataもX3にリフレッシュされるMAX 40Kに比べてもさらに高速という同性能のIBM製品と比べても1/8の低価格を実現

 

富士通の豊木常務が登壇、次世代SPARC64プロセッサの「Athena」を発表

富士通 システムプロダクトビジネスグループの豊木則行執行役員常務

 一方、エリソンCEOの基調講演に先立ち、富士通 システムプロダクトビジネスグループの豊木則行執行役員常務が登壇し、「富士通のビジョン」をテーマに講演。「まったく新しい、ユニークな次世代のサーバーテクノロジーを紹介する」として、次世代SPARC64プロセッサの「Athena(アテナ)」を発表した。

 「これまでは、処理能力を向上させるには、CPUの性能を高めること、サーバーの数を増やすことが必要だった。だが、それとはまったく異なるアプローチになる。タイムリーな分析ができ、真のビジネスバリューを提供できるようになる」とした。

 日本オラクルの仮想化技術を埋め込み、フレキシビリティを確保できる点も特徴だという。

 豊木執行役員常務は、Athenaの特徴として、スーパーコンピュータである「京」で活用したSIMD(Single Instruction Stream Multiple Stream)技術を採用。CPUあたり2TBのメモリを最大16個まで拡張でき、これにより、最大32TBまでのメモリを活用できる。「シングルシステムにおいて、32TBまでの拡張が可能となり、ビッグデータの解析や、データマイニングなどで威力を発揮する」という。

 さらに、同様に「京」で採用されているLLC(Liquid Loop Cooling)技術により、水による効率的な冷却を実現。また、ソフトウェア・オン・チップにより、データベースのプロセスをチップ上で処理し、速く動作させることが可能になる。

 米Oracleのアンディ・メンデルソン シニアバイスプレジデントは、「データベースの活用には、ますますパフォーマンスが重視されている。ソフトウェア・オン・チップによって、I/O性能のボトルネックを解決でき、パフォーマンスを向上できるようになる。今回の成果は、今後、両社の協業をさらに大きなものへと発展させることになるだろう」などとした。

 またエリソンCEOは、「Athenaは、多くのソフトウェア機能をシリコン上に搭載することで、いまのプロセッサの性能を大きく上回る環境を実現する。来年の今ごろまでには、Oracle Databaseを走らせることを約束する」などと語った。

 富士通の豊木常務執行役員は、「これにより、富士通は、ITのポテンシャルを再定義できる。将来とビジネスに貢献できる」などとした。


米Oracleのアンディ・メンデルソン シニアバイスプレジデントステージに立つ豊木執行役員常務とメンデルソン シニアバイスプレジデントAthenaは高い性能を発揮することが実験からもあきらかに

 また、富士通のクラウドへの取り組みとして、農業分野や医療分野におけるクラウド活用事例を紹介。「農業分野においてはセンサー情報などを収集し、これをもとに効率的な農業を実現し、生産者の収益性を高めることができる。また、医療分野ではこれまで蓄積された数多くのデータを分析しながら、糖尿病が発症する確率を事前に予測することができる」などとした。

 講演の後半には、富士通の山本正已社長がビデオメッセージで登場。「富士通はグローバルで展開するIT企業であり、多くの実績からも信頼できる企業であることを理解してもらえるだろう。Oracleとのコラボレーションによって、ITシステムを進化させ、SPARCとSolarisとともに前進していきたい」と抱負を語っていた。


富士通の山本正已社長がビデオメッセージで登場
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