米Salesforce.com、ソーシャル革命訴える「Dreamforce 2012」開幕


マーク・ベニオフ氏

 米国時間9月18日、米セールスフォース・ドットコムは、プライベートショー「Dreamforce 2012」を開幕した。

 今回で10周年を迎えるDreamforceは会長兼CEOであるマーク・ベニオフ氏による基調講演をはじめ、ヴァージングループ創業者リチャード・ブランソン氏とベニオフCEOとの対談、元米国国務長官のコリン・パウエル氏とベニオフ氏との対談などバラエティに富んだ内容で、事前登録者の数も9万人を突破している。

 ベニオフCEOはオープニングキーノートの冒頭、同社の2013年度(2012年2月~2013年1月)の業績が30億ドルを超す見通しであることから、「エンタープライズクラウド業界として初めて売上が30億ドルを突破する企業となる」と業績から見ても好調であることを強調した。

 「Salesforce.comのコアのミッションはお客様を支援するということ。さらに、お客様が自身のお客様と新しいつながりを取れるようにすること。今、劇的なことが起きている。お客様一人、一人とどうつながっていくか。ビジネスのやり方自体を大きく変える。社員とのやりとり、パートナーとのつながり、お客様とのつながり、根本的に色々なものが変わって行くソーシャル革命が今、起こっている」(ベニオフ氏)。

講演開始前の会場をDreamforceではお馴染みのキャラクターが踊って盛り上げる

毎回、エンターテイメント性の強いオープニングだが今回はMCハマーが登場し、ハマーダンスを披露

 そして同社製品を導入したことでビジネスを大きく変えたユーザーの事例を紹介しながら、新製品や機能向上ポイントについて言及した。

 最初に紹介されたGEエレクトリックは昨年のDreamforce終了後、「GEがどう将来変わって行くのか、あなたのビジョンを聞きたい」とGEエレクトリックの会長兼CEOであるジェフ・イメルト氏から、ベニオフ氏に連絡があったのだという。これにはベニオフ氏も驚いたそうだ。

 熟考したベニオフ氏は、GEが開発した様々な機械と人間とがどのようにコラボレーションをとっていくのかが重要な課題となり、将来に繋がっていくことが重要となるという内容のプレゼンテーションを行った。当初は20分の予定だったこのプレゼンテーションはGEエレクトリック幹部から歓迎され、2時間に延長となったそうだ。

 機械とのコミュニケーションというと奇異な印象もあるが、昨年Salesforce.comとトヨタ自動車が発表した「トヨタフレンド」は人と車と販売店をソーシャルネットワークで結ぶもの。自動車のオーナーは自分に必要な情報をあらゆるデバイスからアクセスし、自動車の状態を把握することができるようになり、サービスやビジネスを大きく変革するものだとSalesforceはアピールしている。

 GEエレクトリックの場合は、開発している航空機エンジンの情報を、例えば航空機を運航する日本航空と共有することで、有効に活用していくといった方向が考えられるという。

 「GEエレクトリックは(Salesforce.com側が)Dreamforceの参加者に感じて欲しいことを示す最適な例だといえる。企業、顧客、パートナーなど全てがソーシャルネットワークで繋がっていくことで、全く新しい方向に進んでいく可能性が生まれる。ソーシャルネットワークでのコラボレートによって、販売方法がどう変わり、お客様向けマーケティング戦略がどう変わって行ったのかを確認してもらいたい」(ベニオフ氏)。

 この後、6つのカテゴリーの製品とそれを先行利用している企業の例が紹介された。今回の基調講演は、テスト導入のユーザーも多いものの、実際にどういった狙いで利用されているのか、効果はどう出ているのかといった点をアピールすることに力が注がれた。さらにSalesforceのカバー領域が大きく拡大していることを感じさせる内容となった。

 スキー用品で有名なロシニョールは、「消費者の声を取り込んだ製品開発が必要」との観点から、Chatterを導入した。ソーシャルネットワーク上に公開されているスキーヤーのプロフィールを取り込み、より適した製品開発をすることが目的としていた。その際、「様々なデバイスで、色々な場所からChatterにアクセスしたい」という声が高まった。

 その声を受けてSalesforceが用意したのが、セールスフォース・ドットコムのネイティブモバイル戦略を広げ、プラットフォームに関係なくあらゆるモバイルデバイスにSalesforceを提供し、いつでもどこでも営業担当者がコラボレーティブに商談を進められる環境を実現する「Salesforce Touch」、企業と代理店、リセラー、サプライヤを含む取引先をつなぎ、商談データのシームレスな登録、実証済みの様々なツールへのアクセス、適切なエキスパートとのコラボレーションを通じて、売上を促進を実現する「Chatter Communities for Partners」、企業がソーシャルネットワークからの最良のコンテキストと従来の企業データを組み合わせることで、これまで以上に強い顧客関係を築き、より多くの商談をより短時間で契約に結び付けることが可能となる「Salesforce Data.com Social Key」の三つのソリューションである。

 導入後、ロシニョールの担当者がどんなデバイスを持っていても、Salesforce Touchがあれば、どんなデバイスからでもソーシャルネットワークの情報を見ることができる。Twitterで顧客がどんな文句を書き込んでいるのかを確認し、ロシニョール必要な情報を提供して解決することもできるようになった。ロシニョール側ではChatterをパートナー企業に提供することによって新しいビジネススタイルが構築できるのではないかと期待している。

 ゲーム会社のActivisionは、顧客から上がってくる質問を顧客同士で応答するといったやり取りに「Chatter Communities for Service」を利用している。Chatter Communities for Service は、プライベート・ソーシャルコミュニティを構築し、他のユーザーや企業内エキスパートと直接コミュニケーションを図れる場を提供できるソリューション。このソリューションの活用は、ゲーマーの世界がソーシャル化していることに着目したことから誕生し、Service Cloudとの統合によって実現したものだ。

 Activisionではこの機能をさらに発展させて、販売店が顧客はどんな点に悩んでいるのかを理解し、Activision側に問い合わせをしなければならない場合は問い合わせを行うといった販売店での活用、ソーシャル型の問い合わせ専用のホームページを開設して運用するといった使い方に発展させていくことを計画。ソーシャル化によってユーザーとの関係を作り替えようとしている。

Activisionのソーシャル型のユーザーサポート

 オーストラリアの大手銀行Commonwealth Bankではソーシャルを活用したマーケティング強化のために「Salesforce Marketing Cloud」を導入した。

 このソリューションは、「調査会社によると、今後はCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)よりもCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の方が長時間テクノロジーに触れるようになるという結果が出ている。社内で利用するテクノロジーの予算もCMOの方が大きくなると見られている。我々もこのマーケットに向けた製品を用意した。Buddy MediaとRadian6を結合したMarketing Cloudは初めてのマーケティングのためのスウィート製品。これまで変化がなかったマーケティング業界を変化させるパワーを持っている」(ベニオフ氏)という。

 Commonwealth Bankは顧客サービスのためにモバイル端末からのローン相談、コンテンツのTwitterへの掲載など他の金融機関が実施していないサービスをいち早く提供している。その結果、Facebookで他の金融機関に比べても大幅に顧客を獲得するといった実績をあげている。

 ヴァージン・グループの航空会社Virgin Americaは、Salesforceをベースに、あらゆるデバイス間でシンプルかつセキュアなファイル共有を実現する「Salesforce Chatterbox」を導入した。Virgin Americaではコラボレーションバリアを取り除くために、Chatterを活用しており、航空機の客席のインターネットサービスからChatterを利用することもできる。

Virgin Americaの航空機内でのインターネットサービス経由でのChatterの利用例

 Salesforce側ではセキュアなファイル共有を実現するために、利用者のフィードバックを積み重ねて機能強化を実施。2013年にパイロット版を提供するために開発作業を進めている。

 Facebookは人事管理のための「Salesforce Work.com」を導入した。企業がソーシャル上で設定した目標に基づいて従業員の意識の統一を図り、日々の働きをリアルタイムに認知し報奨を与えることでモチベーションを高め、継続的なフィードバックと的確な評価によってパフォーマンスの向上を促進するソーシャル型の人事管理ツールだ。

 これまでの人事評価はパフォーマンス中心に行われてきた。Work.comはこれまでは評価されていなかった社内の人をいかに助ける存在であるかといった点も反映できる。ソーシャルな世界を推進してきたFacebookに相応しい人事管理サービスとして評価されているという。

Facebookに導入されているソーシャル型人事サービス

 コカコーラはエンタープライズ・クラウドプラットフォーム「Salesforce Platform」の新バージョンを導入した。Salesforce Platformには、Facebook式のIDを提供する「Salesforce Identity」、「Salesforce Touch Platform」が新しく加わった。その結果、SAPなど9つのエンタープライズ・クラウドプラットフォーム・サービスに対応となり、Salesforceの中でSAPのアプリケーションが動くようになる。

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