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オープンソースビジネスの3つの「P」のフェーズとは? LinuxCon Japan 2016初日基調講演レポート

ブロックチェーンプロジェクト「Hyperledger」の解説も

社会インフラ、OSS社内ガバナンス、10年の成果

 基調講演ではそのほか、「Embedded Linux in Industry and Civil Infrastructure Systems」と題して、日立、東芝、シーメンスが、社会インフラとしての組込みLinuxを語った。

 Linuxはいまや、医療機器やNC、自動改札、発電所など、社会インフラとなるさまざまな領域で使われている。Linuxがそうした産業グレードに耐えるよう、信頼性やセキュリティ、リアルタイム機能、長期サポートなどの活動をしてきたことが報告された。そして、これから社会要件が変わっていく中で、まだたくさんのことが必要になると語られた。

左から、Jan Kiszka氏(Siemens)、Yoshitake Kobayashi氏(東芝)、Hiroshi Mine氏(Hitachi)
Linuxが産業グレードに耐えるよう強化してきたこと

 基調講演の中の「The Rise of the Open Source Program Office」では、YahooのGil Yehuda氏が、Yahooにおけるオープンソースのプログラムオフィスの活動を紹介した。企業活動でOSSに関わるにあたり、戦略やガバナンス、運用において、法や投資判断、人材などを管理する必要がある。たとえば、外部のライブラリの利用や、社内開発のOSS公開などにおいて、考えなくてはならないことがある。こうしたことのために、きちんとしたオープンソースのプログラムオフィスが必要になるという。

YahooのGil Yehuda氏
戦略面
ガバナンス面
運用面

 初日の基調講演の最後では、富士通のKenji Kaneshige氏が、同社のLinuxとOSSへのこれまで10年間の取り組みを総括した。富士通ではLinuxカーネルへのコードのコミットをはじめに、仮想化やコンテナーなど領域を広げている。Kaneshige氏は富士通がOSSに参加する理由として、「“楽しいから”というのは魅力的ではあるが、好きだけでは成功しない」「“品質を向上させるため”には社内で変更するだけでもできる」「“開発コストを下げる”のは会社としては参加の答にはならない」といくつかの要素を考察。そして、ソフトウェアからハードウェア、サービスにわたるオープンソースのエコシステムを、富士通も顧客も活用できることが最大の意義だと語った。そして、その成果をふり返って「10年前の判断は正しかった」とKaneshige氏は総括した。

富士通のKenji Kaneshige氏
富士通がLinuxカーネル開発に参加した10年の成果