大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

デルのパートナービジネスは今度こそ本気なのか? 8月に就任した松本光吉副社長インタビュー

即納体制の確立に新たに取り組む

 松本副社長は、「鶏が先か、卵が先か」とつぶやく。

 パートナービジネスを重視していることを訴求し、直販のイメージから脱却することを優先するのか、それとも、パートナーに対する手厚いサポート体制を構築し、支援策やそれを実行する仕組みなどに先行して投資すべきか。パートナービジネス拡大に向けて、どちらから手を打つべきか。それが鶏と卵というわけだ。

 だが、松本副社長は、全国を網羅できる体制を確立した現在、パートナーを振り向かせ、デルを扱って本格的に扱ってもらうための施策が重要だとの認識が強い。

 「デルのハードウェア製品そのものに対する信頼性は高い。他社と比べて遜色(そんしょく)がないものを提供している。また、ソリューションについては、他社にはない幅広いラインアップを整えている。製品が整い、販売体制が整っている。あとは、本気になってもらうことが大切。施策を実行に移すことが大切」と語る。

 では、本気になってもらうための実行策とはなにか。

 そのひとつが即納体制の確立だ。

 これまでのデルの体制は、日本で注文を受けたあとに、中国・廈門(アモイ)でPCやサーバーを生産。これを日本に輸入して、ディストリビュータを通じて販売するという仕組みとなっていた。そのために国内に生産拠点を持つ国内ベンダーや、東京・昭島にカスタマイズが可能な生産拠点を持つ日本HPに比べて、即納体制で後れをとっていた反省がある。レノボ・ジャパンも、傘下にあるNECパーソナルコンピュータが持つ山形県米沢市の米沢事業場で、ThinkPadの生産や、IBMから買収したサーバー製品の生産を開始。これによって納期の短縮化を図っている。

 こうしてみると、大手ベンダーのなかで、デルだけが自前での生産、カスタマイズ体制を国内に持っていないといっていい。

 これに対応するために、デルでは、ダイワボウ情報システムやソフトバンク コマース&サービスと提携して、両社の拠点を活用。そこでカスタマイズを行える体制を確立する予定だ。

 だが、これによって一定の成果をあげるためには、デルと2社が、単に製品を流通するという、ベンダーとディストリビュータの提携関係にとどまらず、高いレベルで手を組む必要がある。また、過去にも何度か投入しているパートナー向け製品の品ぞろえの強化や、即納に対応するために在庫モデルの展開。そして、パートナービジネスを実行するためのサプライチェーンの見直しなども必要だろう。

 デルは、ディストリビュータとのさらなる連携強化を通じて、パートナービジネスの強化を図っていくことが、即納体制の実現につながり、2次店が本気になって、デルを扱う環境づくりにつながる第1歩といえるだろう。

 短納期化については、期末となる2016年1月までに、「レディ・トゥ・ゴーの状態にしたい」(松本副社長)としている。どれぐらいの期間まで短縮化できるのかが注目される。

 また、デルでは、2次店などが、デル製品の提案、販売を行いやすいように見積書のテンプレートや、アプリのインストール方法や、製品の発注方法などをワンパック化した支援ツールを提供する考えも示した。

(大河原 克行)