大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

デルのパートナービジネスは今度こそ本気なのか? 8月に就任した松本光吉副社長インタビュー

ディストリビュータルートの強化に注力

 松本副社長は、SIerやVARなどをパートナー戦略強化の重要な柱に位置づける一方で、もうひとつのパートナー戦略の柱として、ディストリビューションルートの強化に力を注ぐ。

 SIerおよびVARのルートを「バリュー」とすれば、両輪を担うもうひとつのディストリビュータルートは「ボリューム」の領域ということになる。

 これまでデルは、ディストリビュータ最大手のダイワボウ情報システムと契約。同社を通じて全国の2次店へと販売網を拡大する体制を整えていたが、さらにソフトバンク コマース&サービスとも契約を締結。この両社を通じて販売網拡大に取り組む体制を整えた。

 「国内市場を俯瞰(ふかん)すると、ディストリビュータルートは全体の約6割。そのうちダイワボウ情報システムとソフトバンク コマース&サービスで、大半を占める。すでに、数万件にのぼる全国の販売店と取引が行える体制が整っている」と、松本副社長は語る。

 だが、その一方で、「体制はできても、デルにとって、その体制が本格的に機能しているのかというと改善の余地が大きい。HOWの観点から強化する必要がある」とも語る。

「直販のデル」のイメージが与える影響

 ディストリビュータルート開拓において、デルにとって大きな課題がある。それは、ディストリビュータやその先の2次店において、いまだに「直販のデル」というイメージが払拭されていない点だ。

 先にも触れたように、直販比率は徐々に減少傾向にあり、米国では直販比率が半分以下にまで減少している。日本でも直販比率は7割にまで減少してきた。

 だが、創業以来、成長エンジンとして位置づけられ、それによって成功を収めてきた直販ビジネスによる「デルモデル」が業界に与えたインパクトは大きく、「直販のデル」という印象は、いまだに抜けきらない。

 これは、販売店にとって、デルを本気になって扱いきれない理由のひとつになっている。

 デルがパートナービジネスを片手間にやっている、あるいはデルの直販と競合するのではないかという危機感が販売店にはつきまとうからだ。

 「ディストリビュータを通じてさまざまな情報が、2次店に伝えられている。だが、ここで提供されているデルの情報については、2次店が本気になって得ようとしてくれない。結果として、情報が伝わらず、デルの扱い量が増えないという状況が起こっている」

 直販モデルは、長年にわたり、デルの代名詞であった。それが、パートナービジネスの推進においては、「逆風」になっている。

(大河原 克行)