大河原克行のキーマンウォッチ

「New BlueとMore Blueの獲得でさらなる成長を」~日本IBMマーティン・イェッター社長 (手つかずだった領域にもアプローチする)

手つかずだった領域にもアプローチする

――新たな顧客にアプローチするためのイベントも積極化しているように感じます。

 ここにきて、CAMSが大きな潮流となりはじめたことを感じます。そうした大きな流れに対して、日本IBMとしてなにができるのかといったことを、直接市場に語りかけることが必要です。今年5月には、「IBM Software XCITE」と呼ぶソフトウェアに関する大規模なイベントを開催し、約4000人が出席。さらに、ライブストリームを通じて約4000人が参加しました。

 また、支社を軸とした形で、各地域向けに密着したイベントを開催しています。企業や団体、自治体の代表者および役員に参加者を限定した「IBM Leaders Forum」は、すでに全国で4回目ずつ開催していますし、今回は、IBM Leaders Forumの開催日と同じ日に、開発者やエンジニアを対象にした「IBM Cloud Exchange」、ITを活用した戦略立案を担うマネージャーや意思決定者を対象にした「IBM Innovation Forum」も開催しました。これまでに、IBMのテクノロジーになじみがない人たちに対しても、今どんなことが起こっているのか、それを経営にどう生かすことができるのか、あるいは現場をどう変えることができるのかといったことを提案しています。

 ゲーム業界や医療分野など、日本IBMがほとんど手つかずだった領域、あるいは情報システム部門に加えて、現場部門の担当者など、そして、トップエグゼクティブにも直接訴求する場を用意しています。ブレイクアウトセッションやパネルディスカション、また、SoftLayerやPower 8、Watsonといった最新技術も展示し、IBMを知っていただくための接点を重視しているわけです。

――4つの支社の成果は、なにによって推し量っているのですか。

 それは非常にシンプルです。成長性、予算達成、シェア拡大、見込み客、そして顧客満足度です。4つの支社は、2012年後半に設置し、まずは基盤づくりに取り組んできました。もともと東京を中心とした市場に力を入れてきた経緯もあり、それぞれの地域におけるIBMのプレゼンスが低いという課題があった。そこで、各地域において、日本IBMを知ってもらう活動から開始し、それにあわせてリソースを追加するというように、ステップ・バイ・ステップで体制を強化してきました。

 例えば関西支社では、関西の大きな製造業での成功事例が出始めています。シャープ、パナソニック、住友電工、いずみや、京セラ、積水ハウスといった企業では、各社の革新的プロジェクトの推進において、日本IBMがお手伝いをさせていただいています。

――しかし、4つの支社の展開においては、基本的には、中堅・中小企業がメインターゲットとなりますね。そのなかで、IBMはx86サーバーの売却を決定しました。これは、中堅・中小企業攻略においてマイナスにはなりませんか。

 IBMは、x86サーバーをLenovoに売却することを公表していますが、現時点では、当局の承認待ちということになります。しかし、これによって、Lenovoとの戦略的提携がさらに加速することになるのは明らかです。中堅・中小企業の市場の多くは、クラウド環境へ移行しようとしています。それが、パブリッククラウドであれ、ハイブリッドクラウドであれ、プライベートクラウドであれ、日本IBMとしては非常にユニークな立場にあり、顧客の要求に応えられる状況にあります。

 つまり、日本IBMは、クラウドプロバイダーとして顧客から選ばれる立場にある。クラウドで提供するスケーラビリティを追求することで、これまで手を広げられなかったところにまで、顧客へのアクセスを広げることができる。その点でも、現在持っているポートフォリオは心強いものがあります。

 また、Power8(プロセッサ)とストレージを活用することで、スケールアウトによってパフォーマンスを求める顧客に対しても、魅力的な価格帯で対応することができます。つまり、選択の自由を提供できているのが日本IBMの現在の姿です。4つの支社が、中堅・中小企業に訴求する上でも心強い状況にあると考えています。

(大河原 克行)